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わたしの夢のはなし  作者: 松中 ゆかり
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1. 佐藤が亡くなった

 わたしが毎日夢を見ると話すと、よく行く整骨院の先生が、

「夢は何かしらの意味を持つものもあるから、記録してみてはどうですか?」

とアドバイスをくれた。

 実際記録するようになると本当にいろいろな夢があるんだなあと思う。

 

 現実には起こりえない。

 だって夢だから。

2021年12月22日の夢



 ある男が車椅子に乗って病院にいる。彼はもうすぐ死んでしまう人だけど、顔は見えない。

 名前は仮に、「佐藤」としよう。

 佐藤には娘がいた。名前は「ゆうき」ちゃん。年の頃はおそらく2〜3歳といったところだろうか。笑顔あふれる、かわいらしい女の子だ。

 わたしは従姉妹たちと一緒に、佐藤の奥さんやゆうきちゃんと一緒に遊んでいた。おそらく病院の庭だったように思う。広い病院なんだろうか。庭がとても広かった。背の高い木がたくさんあり、芝生がフサフサしていて、さわやかな風が吹いていた。

 佐藤はじっとわたしたちを見ていたけど、体の痛みがひどくなって倒れてしまう。いよいよ別れの時が近づいているようだった。

 医師の指示で移動することになり、わたしたちも同行した。


 佐藤が寝かされた部屋は「最後の部屋」と呼ばれているようだった。医師が看護士にそう言っていたから。

 最後の部屋は真っ白い部屋だった。カーテンも壁紙もシーツも白に統一されていて、置いてあるのは白いベッドと白い小さな机、そしてわたしたち用に準備された白い丸椅子だけだった。佐藤はパソコンで奥さんと娘の写真をみながら、夫婦のなれそめを思い出していた。



         ※         ※ ※



 佐藤が奥さんと出会ったのは、東南アジアの国だった。

 その頃佐藤は写真家のようで、首から一眼レフカメラを提げている。

 佐藤が道を歩いていると、何かの事件に巻き込まれたのか少年が道端で血を流して死んでいる。十歳に満たないだろうと思われる小さな体は、やせ細っていてひどく頼りなかった。生きていれば生命力に満ちあふれたその体も、命が失われてぐったりと地面に横たわっていた。

 平和な国で育った佐藤は少年の死と、周囲の無関心さにショックを受けたが、少年の横に座り、そっとその手を胸にそろえてやる。できれば家族の元に運んでやりたいが、少年の服などから最近増えているストリートチルドレンなのだろうと予測し、待っている家族はいないのだろうと思った。周囲を見渡して少年の遺体の上にかけてやるカバーをみつけ、そっとその小さな体に被せた。これでとりあえず警察を呼ぶまで砂埃や死体を食べる鳥などから守ることができるだろう。

 佐藤は少年の遺体を前にしてそっと手を合わせた。願わくば少年が次の世で幸せになれるように。


 少年の遺体から離れ、警察に知らせるべく歩いていると、前方で何やら騒動が起こっているようだ。そこから日本語が聞こえた気がして、佐藤は騒動の起こった方へ歩いていく。

 そこには男女数人が車椅子を前にして座っている女性を前に何やら揉めている。

 咄嗟に日本語を話す人物を探すと、見覚えのある女性2人を見つけた。

 その女性2人は少し前に街中の喫茶店でお茶している時に、近くの席に座った客だった。年配の女性は地元民のような顔だが、連れの若い女性は日本人っぽかった。2人は日本語を話していて、聞こえてくる会話から親子のようだった。仲の良さそうな雰囲気で、母親の里帰りに娘が同行したのだろう、っと思って微笑ましかった。

 先ほどの騒動の人間たちの会話を聞く限りでは、ある家族が具合を悪くした女性(おそらく母親)を車椅子に乗せようとしたが、車椅子を使い慣れないために上手くいかなかった。そこを偶然通りかかった親子が手伝おうと申し出たのだが、家族は不審に思って突っぱねていたようだ。

 助けに入ったとしても女性では難しいだろうと判断し、佐藤も群衆の中から名乗りを挙げた。家族の男性(おそらく父親)と一緒に体を両脇から抱えて車椅子に座らせる。

 その後医者が来て、家族は診察を受けて帰っていった。

 診察を終えた医者が佐藤に、

「自分だったらあの場面で手を差し伸べることはできなかった。さすがだ」

と褒められた。

 ちなみに、そこで出会った親子の娘の方が、後の奥さんなのだとか。



          ※ ※ ※



 男性は奥さんと楽しそうに話していた。佐藤が昔撮った写真を見て、思い出話に花が咲く。でも次第に息も絶え絶えになっていく。

 わたしたちは部屋から出され、少ししてから奥さんとゆうきちゃんが呼ばれて入って行った。そのすぐ後に奥さんの泣き叫ぶ声がした。

 佐藤は亡くなったのだろう。


 その時わたしは、自分の父が亡くなった時を思い出した。

 顔色がどんどん変わっていく父の顔を見て、

「いやだ!いかないでよ!」

と何度も叫んだけど、今まで体がつらい中頑張って生きたのだから、最後くらい、

「頑張ったね。だからもう頑張らなくていいよ。大丈夫」

と言ってあげればよかったなと、そんなことを考えた。


 そうすると目が覚めた。


 これらの話はあくまでわたしの「夢」です。

 なんの含みもない、ただ見たままを書いているだけなので、誰かを不快にしようと思っているものではありません。

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