『君は今日から』
私には色々と目的というか訳があって
ここで働くことがあるのですが
今回も急遽お願いされたお店の手伝いです。
別に私は珈琲を淹れることもありませんし
軽食の調理をすることもありませんので
基本、オーダーや注文をテーブルへ運んだり
会計のレジとかホールスタッフと言ったところです。
ただし・・・
このお店は、メイド喫茶の猫カフェ
みたいなお店です。
と言うか! お店には猫が居ないから
店員がメイドさんベースで猫の格好をしている
色々とカオスなお店なのですっ!!(泣)
「だから、平日はあまりお客さん来ないですけどね~」
週末や祝日は、それなりに席は埋まりますが
平日は、それ程ではありません。
なので! 私でも対応できるのですけども。
「外を見ても人通りが少ないかも~」
外を疎らに行き交う人の姿をレジカウンターから何となく
眺めて居ると、視界に小さな動く姿が入り込んできました。
「あれ? あんな小さい子・・・」
お店の外に見えたのは小さな子の姿。
見たところ、ココから見える視界には
親の姿がなかったので、このままでは危険だと思い
私はお店の外へ行き、一応子供の安全の確保だけする事に。
「ねぇ? 危ないよ? お母さんは?」
「・・・・・・」
「もしかして、迷子になったの? かにゃん?」
「・・・・・・」
私の方を見ては居るのですが
目を合わせようとはせず
顔を見れば不安そうな表情しかみえません。
決して! 私の語尾に「にゃん」が付いたからでは
御座いませんっ!!
「お母さんが来るまで遊んでいようかにゃん?」
「・・・・・・」
流石に、お店の中に入れてしまうと
外に居るであろう母親から完全に見えなくなってしまうので
入り口付近の危なくない所で、その子と遊ぶことに。
「あわわっ! 私の尻尾は本物じゃないよ?(汗)」
「???」
私の制服に付いている猫尻尾が気になるのか
気に入ったのか?
「楽しいかにゃん?(笑)」
「♪」
とりあえず、私が何かをしてあげなくても
ふにふにと勝手に尻尾で遊んでいてくれるので
助かります♪
「うん? あれは母親かな?」
子供が勝手に尻尾で遊んでいる間、私は周囲を注意して
見ていたのですが、少し離れた所に子供の母親と思われる
姿を発見です!
「お母さんが迎えに来たよ? き、来たにゃん?」
「♪♪♪」
べ、別にっ!
子供に合わせて語尾を「にゃん」としている訳じゃ!?
うん???
あっ! 子供に合わせて「にゃん」としているだけで!!
普段は、「にゃん」なんて言いませんからねっ!(///)
「じゃぁ、またにゃん♪」
「♪」
私は速やかに店内へ戻り、ガラス越しに様子を眺めて居ると
母親と再会できた子供が何やら話をして居るようですが
どんな会話をしているのかは全く分かりませんけどねっ!
「さぁ、帰りましょう」
「ぼく、もっとおねーちゃんと一緒に居たいっ!」
とか言っているのでしょうか?(笑)
結構、私の尻尾を気に入ってくれたようだし♪
「もしかして、君が私を飼ってくれるのかにゃん?」
あまりにも、私の尻尾が気に入ってしまい
帰りたくないと駄々をこねているのでしょうか???
「大人になったら、おねーちゃんと結婚するっ!」
とかとか言ってくれていたりして!?(///)
って! それじゃ、尻尾が私本体って事になるっ!?
私の価値、尻尾が99%の割合って事!?(泣)
「でも、その頃おねーちゃんはおばちゃんだにゃ(汗)」
なんて、その時は勝手な脳内妄想をしていたりでしたが
それから数ヶ月ほどが過ぎた頃。
久しぶりに、またお手伝いをお願いされてお店に伺うと。
「あれ? 君は?」
いつもの様に、レジ前からお店の外を眺めて居ると
ガラス越しには見覚えのある姿が。
「もしかして!?」
オーナー達に聞いてみると、最近毎日お店に来るそうで
まるで私がお店に来るのを待っているようだと。
「あわわ~ そうなの?(汗)」
私的には、何年も先の事だと想っていたのですが
まさかこんなに早かったとは・・・
「もうぉ~ しょうがないにゃぁ~(///)」
お店のドアを開けて外へ行くと
その子は足元へ近付き、私の顔を見上げてきました。
「もう、親離れしたんだね?」
「にゃ~ん」
仔猫は、生まれて数ヶ月頃から生きていく為の
ルールや技術を親猫から沢山教わり
6ヶ月を過ぎる頃には完全に親離れして
独り立ちするらしいのです。
「まだ私は、おねーちゃんのままかにゃ?(汗)」
「にゃん♪」
「でも、君が飼ってくれるんじゃなかったんだね?(笑)」
「にゃぁ~?」
足元に擦り寄る猫を抱き上げると、最初に逢った時の
不安でしかたなかった表情は消えていて
今は、ちゃんと私の事を真っ直ぐに見ております。
「なんか、急に家族が増えちゃったにゃん♪」
「にゃん♪」
人間と猫では成長の早さも時間の速さも違うけれど
本当に急ですが、今日から私は元仔猫と一緒に
暮らす事を決めました♪
「あっ! 猫耳と尻尾がなくても幻滅しないでよ?」
「にゃぁ?」
「あと、語尾に「にゃん」が付くのは仕事中だけだよ?」
「にゃぁ?」
「それと、君の名前はKokoだよ♪」
「にゃ♪」
「君は今日から素敵な猫くんだよ♪」
「にゃん♪」
君と始めて出逢ったのがココだったから
名前を「Koko」と決めました。
あと、何となく私の名前とも発音が
似ている感じだったのもありますけどね♪
「ところで? Kokoにゃん?」
「にゃぁ?」
「この、首元に付いている『猫語・日本語』の」
「ぴくっ!!」
「小さな切替スイッチは一体何かにゃん?」
「にゃ、にゃぁぁぁぁ・・・(汗)」
普通の人なら気付かないような位置に
スイッチがひとつ。
「ねぇ? これ、切り替えても良いかにゃん?」
「だ、ダメです・・・」
「えっ?」
「あっ!」
なんか、猫が喋りましたけど・・・?
もしかして私は、猫じゃないネコを拾ってしまったの!?
「今、喋ったよね?」
「・・・・・・(汗)」
「もしかして、私が人間じゃない事ってバレてたりする?」
「は、はい・・・」
「ふ~ん♪ じゃぁ、Kokoも猫じゃないって事だね?」
「はい・・・」
「それじゃ、私の計画の事は知ってる?」
「いいえ、それは知らないです」
実は私、人間じゃありません。
そして、どちらかと言えば人類から見たら
敵になる側の存在でしょうか?
「じゃぁ~ 私の計画を教えてあげるね」
「えっ?(驚)」
私が易々と計画を話そうとすることに
Kokoはとても驚いているようですけど
それは、私の邪魔をすると言うなら直ぐにでも
Kokoの存在を場合によっては消す事もある
と言うことです。
「私の計画はね、猫アレルギーを消す事だよ」
「は、はい?」
この計画の結果が出るのは早くても75年後くらいですが
着々と私が人間達の遺伝子を数行だけ書き換えることで
3世代か4世代後には人間の体質が大きく変化します。
「猫嫌いの人間は居なくなるんだよ♪」
「そうなんですか?」
アレルギーなど悪い要素が無くなれば
人間が猫を嫌う必要も無くなります。
むしろ・・・
「人間は猫なしでは生きていけなくなるけどね♪」
「えっ?」
具体的な事を言えば、最終的に全ての人間から
猫アレルギーというものが無くなります。
その代わり、人間は猫の居ない生活が約1週間以上続いた頃から
体の免疫機能が低下し始め、それに加えて情緒も不安定となり
その後も猫と関わらずに過ごしていくと
半年から数年後には衰弱していきます。
「人間が猫に依存する世界だね」
「どうしてそんな世界を?」
この世界では、人間にとって猫の存在というものが
本当に当たり前すぎて、血統とは別の希少な種が
全く保護されないのです。
この国にも「日本猫」が居たのですが、その種は絶滅したとも
言われていたりするくらいです。
「猫の絶滅種を今より増やさない為にだよ」
「そう言う事ですか、理解しました」
野生生物で絶滅危惧種のリストに載っていない種は
いくら数が少なくても絶滅危惧はされないのです。
「だから、人間を依存させる事で猫を守るの」
「同感です」
と、私の目的について説明した所でKokoは
それを理解してくれたようなので少し安心しました。
あとは、Kokoの正体と目的ですが
それはまた、お家に帰ってからです。
『とりあえず、今日からよろしくね♪』
最後までお読み頂きありがとうございました。
猫が絶滅? って感じですが
「日本猫」は、もう居ない(確認されていない)らしいです。
そう考えると、身近な所にも保護しなくてはならない種が
沢山居るのですね。
動物に限らず、植物だったり、昆虫だったり、微生物とか
一体、年間どれだけの種が消えて、その代わり新たな種が
発生しているのか、本当のところは誰にも分からないのでしょうね?
にゃんてっ!
人生初くらいの真面目な後書きを書いてみたりです♪
にゃはは~♪