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爬鎧類戦争(ハガイルイセンソウ)  作者: ヒレカツ寺本
第一章
6/16

第六話  戦闘準備

ごゆっくり読んでいってください。



          午前八時過ぎ、杉並駐屯地にある食堂。



 眠そうな顔で隊員たちが朝食をとっている。外では残り少ない生涯を謳歌するべくセミたちが一斉に叫んでいる。ステンレスのスプーンと食器がカチャカチャ当たる音。

 アキラ、コータの先輩コンビとリク、セナ達が、同じテーブルで食べている。セナの横に座っているコータが真剣な顔つきで呟く。


「これが最後の食事になるかもしれない」


「やめてくださいよコータさん!」


 セナが嫌な顔をして言う。この二人、すっかり先輩後輩の壁を越えたらしく、仲がいい。


「いや、本当に! だってお前宇宙人と戦って勝てるか?」


「何も起きないですって。僕ら行くの都庁前ですよ! 宇宙人だとしても都庁来ます?」


「わかんねーだろ。なんかビルがいっぱいあるから行ってみよーかってなるかもしれないし」


 セナが周りを見渡してコータの耳元へ顔を近づけ


「大丈夫ですコータさん。実は都庁って敵が来たらロボットに変形するらしいですから」


 小声でささやく。


「嘘やん」


 そう言うとコータが驚いた顔をして震えだした。


「もういいわ!」


 向かいに座っているアキラがつっこむ。コータとセナがアキラを見る。


「なんの話だよ!」


 アキラが言うと


「ははは」


 コータとセナが顔を見合わせ笑う。

 地獄の訓練で血まみれになっていたダイキが、すっかり傷が治ったデカい体で不安そうに尋ねた。


「勝てますかね?」


「お前そんな図体してるんだからさあ、もっと自信持っていけよ!」


 アキラが励ます。そしてコータが、


「宇宙人でも地底人でも俺がボコボコにしてやるよ!」


 と言いながら自分の胸を叩いた。

 すると、食堂に入ってきた上官の館林が全体に告げる。


「よしお前ら! 準備して今日はいつも以上に気合い入れて、装備整えて正面玄関に九時集合! まだ時間があるからそのまま食事するなり、彼女に電話するなり、それまでは自由。以上!」


「はい」


 みんな席を立ち始める。先輩方も早々と完食し、席を立つ。


「遅れんなよ!」


 アキラが言いながら出て行く。


「了解です」


 と言い、残りのご飯をゆっくり食べるリク。その横を、食器を片付けてそそくさと通り過ぎるセナ。


「あれっ。セナ先輩お急ぎで、彼女に電話ですか?」


 からかい気味にセナに迫るリク。


「うるせー」


 照れながら足早に食堂を後にするセナ。腕時計を見て残りのご飯を流し込みリクも食堂を出る。



 ――午前九時、正面玄関。

 次々に隊員たちが自分の部隊のトラックに乗り込んで行く。リクも第二中隊のトラックに乗り込んだ。セナ、コータ、アキラも揃い踏みだ。ほどなくしてズラリと並んだトラックたちはメインゲートを抜けて右へ左へ目的地に向け出発して行った。

 トラックの荷台はけっこう揺れている。そして蒸し風呂のような熱気。


「暑いな」


 アキラが愚痴る。

 セナがシャツの胸元を摘んでパタパタしながら向かいに座っているコータに話しかける。


「コータさんすいません! エアコンつけてくれますか!」


 あるはずがない。


「おー。はいはい」


 コータが言うと、思い切り息を肺にため込み、フーーーっと皆に息を吹き始めた。一同嫌な顔で我慢している。


「臭っ!」


 とセナが鼻を塞ぐ。


「いやいや! 歯磨いたばっかりだっつーの」


「このエアコン毒ガス出てるぞ!」


 鼻をつまみながらセナが吐き捨てる。


「いやセナ! 先輩! 俺先輩!」


 と言いながらセナにヘッドロックのお仕置き。


「あっはっは」


 二人のやりとりに一同が笑う。



 平和な空気を乗せてトラックは青梅街道を新宿へ向かって走って行く。



 二〇四五年 八月十五日

 奇しくもこの日は太平洋戦争終結百周年の終戦記念日である。


ありがとうございました

次回もよろしくお願い申し上げます。

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