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爬鎧類戦争(ハガイルイセンソウ)  作者: ヒレカツ寺本
第一章
5/16

第五話  怪しい雲行き

ようこそ!

ゆっくりしていってください。



          正午すぎの渋谷駅前。



 モニターで、総理大臣のテレビ演説が始まる。いつもの雑踏の中、人々が立ち止まったり、座り込んでモニターを観ている。


『日本国民のみなさんこんにちは、内閣総理大臣の桐谷です。本日はみなさんにお話があり、テレビ演説をすることにいたしました。ご存じだと思いますが、森本防衛大臣が何者かに殺害されました。あの衝撃、悲しみ、怒り、忘れる事はないでしょう。あの日から四週間が経過しましたが、それ以来、毎日防衛省関係者が多数殺害されてしまいました。また、世界中の軍関係者も同じような事件の被害者になっています。この由々しき事態に国を挙げて立ち向かわなければならないと思い、国民のみなさんにお話する事にした次第であります。この事は、全ての日本国民に聞いていただきたいと思います。まず一連の事件についてですが、犯行声明が有ったかにつきましては……有りました』


 駅前がざわつく。


『何者かにつきましては未だ分かっていませんが、防衛省にメッセージが届き、森本大臣の殺害もその後の関係者の事件も全てこのグループの犯行だと主張しています。四週間前から現在も犯行を繰り返しています。おそらく世界中の政府にもメッセージが届いていると思われます。そして本日また声明が届きました。そのメッセージは、明日の正午、無差別総攻撃を開始するというものでした。』


 駅前が一瞬静まり、またすぐざわつく。


『これはテログループからの宣戦布告と受け取りました。犯行グループは日本をはじめ、世界を奪おうとしています。このクーデターを止め、国民の生活を守るのが私の責務だと思っております。何が起きるか、何も起きないのか、今は分かりません。そこで、全国に緊急事態宣言を発出し、厳戒態勢で迎え撃つ事とします。自国防衛隊、警察、消防、救急隊。全てフル稼働いたします。明日は全国民外出を控え、有事に備えてください。国民は必ず全力でお守りします』


 嘘みたいな演説であった。誰がどこで何をするかもわからないのに緊急事態宣言?

 駅前に集まった人々は、モニターから目をそらし、各々動きだす。


「大変な事が起こるのかなー?」


「マジか! やべーな、急すぎるし!」


「本当に宇宙人くる?」


「それはないだろ」


「犯人の目的とか全然言わないし、全く意味わかんねーよ!」


 それぞれの意見を交わしながら、大学生と思われる男子グループが駅に消えていく。


「えっ? 明日何が起きるの? テロ?」


 女子高生が不思議そうに友達に聞いている。


「わかんないけどとりあえず明日はロックダウンって事だね」


 友達が答えながら二人はセンター街の方へ向かって行った。


「えーっ明日ライブ中止って事? 最悪」


「ははは。そんな事より、食べ物買いだめしなきゃな」


 貴重な夏休みの予定が狂った若者たちは文句を言いつつ去っていく。やはり、ほとんどの若者がまだ他人事のように思っているようだ。しかし何か様子がおかしいのは分かるようで、外出禁止に備えるのであった。

 スクランブル交差点は今日もたくさんの人で溢れかえっていた。

 


 高円寺の内田家。

 リビングで家族のグループメールを打つ母。


 母〔リクは明日どこかに警備に着くの? あー心配〕


 送信してすぐ、ピロン! という音。すぐに誰かから返信があった。

 

 友美〔今テレビ見た? 明日部活休みになったよ〕

 

 娘からだった。その後すぐにピロン!


 父〔俺も会社休みになりそう!〕


 母〔えっ!〕


 友美〔スーパーめちゃ混み! ヤバいかも! 何か買う?〕


 母〔えーっ急に言われても〕


 友美〔全部無くなる勢い! 何でもいいから買っとく〕


 母〔よろしく〕


 父〔俺も帰り買えたら何か買う〕


 リク〔明日は新宿に配置されるっぽい〕


 母〔リク何が起きるの? 何も分からないから心配なんだけど〕


 リク〔俺も何も聞かされてないんだよマジで! この後招集されて何かわかるかもしれないからその時言う!〕


 父〔日本の為に頑張れ〕


 母〔とにかく自分の安全だけ考えて〕


 友美〔自分の安全だけって、それじゃ防衛隊の意味ないじゃん。でもマジ気をつけて!〕


 平和だった日本の雲行きが怪しくなってきた。


読んでいただき

ありがとうございます。

次回もよろしくお願い申し上げます。

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