表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/271

第69話 炎の悪魔アレルと決戦、ドラスレたちの連携

 アレルとよばれた悪魔が、魔法をはなつように火炎をとばしてくる。


「うわっちぃ!」


 火炎が地面に落ちて、ぼっと空たかく燃え上がる。


 燃えていない家屋が近くにあれば、炎は一瞬でのみ込んでしまう。


 あの炎にふれたら、俺の身体は一瞬で炭と化してしまうだろう。


「なんなんだよ、あの化け物! ただの炎じゃねぇのか?」

「まるで、自分の意思があるみたい、だけど……」


 アレルが首と思わしき部分をうごかして、俺たちを捕捉する。


 巨人のような赤い腕がふりはらわれるたびに、街が炎にのまれてしまうっ。


「これ以上街を燃やさせるか!」

「グラート!」


 ヴァールアクスを引っさげて、突撃する。


 柱のような足をヴァールアクスで斬りおとすが――。


「すり抜けた!?」


 炎を斧で斬ったのと、まったくおなじだ。


「グラート、にげてっ」


 顔をあげると、アレルが両手を頭上でかさね合わせていた。


 灼熱の剛腕が、俺の眼前までせまる――。


「くっ!」


 間一髪で、全身を焼かれるところだった。


 後ろにとんだ俺の目の前に、アレルの両手がふりおろされる。


 直撃をさけることはできたが、飛び散った大量の火の粉が俺の顔と胸を焼いた。


「グラート、だいじょうぶ?」


 アダルジーザが駆けつけて、回復魔法をかけてくれる。


 顔と胸の火傷はすぐに引いたが、


「ありがとう、アダル。だが、戦局はかなりまずい」

「そうだねぇ。あんな魔物、どうやって倒せば……」


 アレルの身体は、刃物を突き抜けるか。


「やつの身体は炎そのものだ。だから、形のあるものでは通用しないのかもしれない」

「うん。それならぁ、魔法じゃないと、だめってことぉ?」

「そうだな。ジルダがつかう氷の魔法が有効か」


 ジルダは氷の魔法でアレルに応戦している。


「このっ、この!」


 ジルダは両手から冷気を放出して、アレルの炎を消そうとしている。


 強力な冷気がアレルの大きい右足を消した!


「おしっ。やったぜ!」


 足をうしなったアレルが、地面に倒れる。


 だがアレルの右足はすぐに再生されて、もとの二本足で立つ姿にもどってしまった。


「マ、マジかよ……」

「ジルダ、逃げろ!」


 アレルの首がのびて、蛇のようにジルダをのみ込もうとする。


「うわっち!」


 ジルダはためらわずにこちらへ逃げてきた。


「なんなんだよあれ。不死身じゃねぇか!」

「手足を消火しても、すぐに再生できてしまうのか。あいつの魔力は、底なしかっ」


 アレルは、預言石という魔法の石から魔力を抽出しているのか?


 いや、近くの炎をとり込んでいるな。


 家を燃やしていた炎がアレルにとり込まれて、家は炭だけになった。


「アレルは近くの炎をとり込んでいる。炎が近くにあるかぎり、再生を続けるだろう」

「そ、そうなんだっ」

「じゃあ、どうすんだよっ。街じゅうの火を先に消さないといけねぇのか!?」


 アレルが遠くから炎をとばしてくる。


 炎は壁のようにひろがって、道のむこうにいる俺たちへとせまってくる。


「やべっ」


 あの広い範囲は、よけられない!


「クリスタルウォール!」


 アダルジーザが俺たちの前に立って、黄金の杖をむけた。


 ぶあつい氷の障壁が発生して、アレルのはなった炎の壁を遮断してくれる。


「すげぇ!」


 アダルジーザ、さすがだ。


 クリスタルウォールはその名の通り、蒼い結晶の壁だ。


 極寒の地でつくられたような氷の壁は、ドラゴンの炎でも軽々と遮断する。


「みんな、だいじょうぶ!?」

「おう!」

「アダル、いつもたすかる!」


 アレルがはなった炎は、勢いがおさまったな。


 クリスタルウォールから飛び出して、俺たちの反撃だ!


「グラート、何をするのっ」

「こうするのだ!」


 ヴァールアクスを思い切り地面にたたきつける。


 かたい地面をわる衝撃で、強烈な真空波が発生する。


 真空波は突風のようにアレルへ襲いかかり、アレルの胴体を吹き飛ばした。


「やった!」

「いや、まだだ」


 アレルは胴体をうしなっても、すぐに再生する。


 紫色のあやしい光が、地面から浮かび上がった。


 アレルの残滓ざんしとなった四肢を吸収し、巨大な火の玉へと変貌する。


「今度は火の玉かよ……」

「ぼやいているヒマはない!」


 ヴァールアクスを地面にたたきつけて、真空波をいくつも発生する。


 真空波はアレルを吹き飛ばすが、アレルはすぐに近くの炎をとり込んでしまう。


「ジルダも続け!」

「わかってらい!」


 ジルダが魔法をとなえると、夜空に浮くアレルの頭上に氷の塊が出現した。


「お前なんか、つぶれちまえっ」


 氷の塊がアレルの中心部を押しつぶす。


 炎が消えて、預言石は岩石のような氷につぶされたはずだが……。


 アレルの残滓がそれぞれ別々にうごいて、ニワトリのようなかたちになった?


「これでも、やられねぇのかよっ」


 炎の鳥が二枚のつばさをひろげて、俺たちにとびかかってきた!


「くっ」

「きゃあ!」


 個々の身体はちいさいが、かすっただけで高温のエネルギーが俺の肩やわき腹をもやす。


「うわぁ!」

「ひ、ひるむなっ」


 後ろで待つ兵たちにも、無数のアレルはかまわずに突撃してくる。


 アレルの残滓にまきつかれ、全身をもやされてしまう者もいた。


「グラート!」

「ど、どうしよぅ……」


 このまま手をこまねいていたら、全滅だ。


「皆、下がれ! アダルは、クリスタルウォールを」

「は!」

「わかったっ」


 アレルの残滓は、クリスタルウォールを突きやぶることができない。


 しかし、やつの高温をまとった突撃を受け続ければ、クリスタルウォールはいずれ突きやぶられてしまう。


「グラートっ、わたしの魔法は、そんなにもたないから」

「わかっている。態勢を立てなおして、すぐ反撃に出る」

「反撃に出るっつったって、どうするんだよ」


 いつも強気なジルダも、弱気になってしまうか。


「アレルの弱点は預言石だ。やつは預言石を核にして、活動しているのだ」

「そうかっ。金を見つけたときと、おんなじってわけか!」

「そうだ。預言石を破壊すれば、アレルを止めることができるはずだ」

「でもよ、預言石なら、ぼくがさっきつぶしたはずだぜ。それなのに、なんでうごけるんだ?」


 ピシッ、とガラスにひびが入るような音がした。


「グラート!」

「アダル、すまないっ」


 クリスタルウォールの外へとびだした。


「ようするに、預言石はまだつぶされていないということだ!」


 無数の火の塊となったアレルが、俺にまっすぐとびかかってくる!


「こんなもの、よけるまでもない!」


 ヴァールアクスで衝撃波を発生させる。


 火の塊の数は多いが、ひとつひとつは小さな火だ。ヴァールアクスのひとふりで簡単に消せるっ。


 氷の塊があった場所から、紫色の光がまた浮かび上がる。


 預言石は無数の火をあつめて、また巨人の姿にもどった。


 預言石は巨人の心臓部にある。二階建ての宿屋の屋上くらいの高さか。


 あの位置では、ヴァールアクスの真空波はとどかない。ジルダの魔法でも、預言石は破壊できない。


「ジルダっ、全力で冷気をはなってくれ!」

「はぁ? 全力ぅ?」

「古代樹にはなった大がかりな魔法があっただろう。冷気系の魔法で、あのような大がかりなものはないのかっ」

「言ってる意味が、よくわかんねぇけど……」


 アレルがまた剛腕をふりおろしてくる。


 大量の炎が、クリスタルウォールの中心部を破壊した。


「もう、もたない……」

「アダル、逃げろ!」


 持久戦にもち込まれたら、俺たちに勝ち目はないっ。


「とりあえず、全力でやりゃいいんだろ!」


 ジルダがとびだして、アレルの左側にまわり込んだ。


「グラート、あいつを仕止めてくれよ!」


 ジルダが全身の力をあつめて、魔法をとなえた。


「ダイヤモンドダスト!」


 ジルダが両手を夜空にむける。


 大きなクリスタルが夜空からふりそそぎ、アレルの巨体を押しつぶしていく。


 アレルの全身をまとっていた炎が消えて、氷の山が街のまんなかにつみ上がっていった。


 預言石は、この中にある!


 ヴァールアクスをかかげて、氷の山に打ちつける。つみ上がっていた氷が四方にはじけ飛ぶ。


 氷の山の底にあるであろう預言石が見つかるまで、ヴァールアクスを何度も打ちつける。


 この動作を五回ほどくりかえしただろうか。はじけ飛ぶ氷の中に、紫色の破片が見つかった。


 預言石を破壊したか。


 椅子とおなじくらいの大きさの氷の下に、まっぷたつに割れた預言石が転がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] すっごい今更なんですけど。 アダルとジルダってすごいですよね。 あのグラートにくらいついて戦ってるんですものね。 なんだ、このかっこいい女子たち。 それがすごく痛感させられた、魔法回だった…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ