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第230話 青い光の前に立ちはだかる、巨大な雪の守護者

 洞窟の中を不自然に舞う吹雪が急速に動き出す。


 右と左からぶつかるように吹雪が動き、禍々しい力が広いフロアの中央に集まっている。


「おいおいっ。これから、何をおっぱじめようっつうんだよ」


 ルーベンもただならない気配を察知したか。


「この吹雪の向こうにひかってるのが、俺たちが探し求めていたものなんだよな。グラート」


 ウバルドも長剣を抜き放った。


「そうだ。あの青い光こそ、俺たちが探していた青の結晶だっ」


 ヴァールを倒すために、ヴァレダ・アレシアを守るために、あの青い力をかならず持ち帰る!


 吹雪が中央の一点に集約するっ。


「くるぞ!」


 見上げた先に出現したのは、白くて太い腕。


 オーガやフォルクルたちと同様……いや、彼らの腕を軽々と凌駕する剛腕だっ。


「グラート!」


 白い剛腕が襲いかかってくる!


 左に跳び、迫り来る剛腕をかわした。


 塔のような腕が氷の地面に落下し、かたい氷を粉々にくだいた。


「なななな、なんだぁ!?」


 雪のかたまりのような巨体がゆっくりと形成されていく。


 不自然に吹く雪の正体は、巨大な雪の守護者ガーディアンだったのかっ。


「雪の巨人だぁ!」


 雪の巨人が剛腕をふりまわす。


 雪とは思えない強靭さが、洞窟の青い壁を粉砕していく。


「ゴール目前でっ、こんな野郎が守ってるのかよぉ!」

「泣き言を言ってないで反撃しろっ、ルーベン!」


 ウバルドが炎の魔法をとなえる。


 火の玉が雪の巨人の頭を燃やすが……。


「くそっ、こんな炎じゃ燃えねぇかっ」


 雪の巨人の頭が、わずかに溶解しただけであった。


 雪の巨人の剛腕がウバルドに落下するっ。


「よけろ!」


 ウバルドは危険を察知し、剛腕を寸でのところでよけた。


 だが、雪の巨人の腕が地面をくだいた衝撃によって吹き飛ばされてしまった。


「ウバルド!」


 とてつもない強敵だっ。


 寒さと、戦いの連続で酷使された身体で太刀打ちするのは、きわめて困難だ。


 だがっ、


「俺たちは負けん!」


 ポールアクスを引っさげて雪の巨人に突撃する。


 右肩を引いて、ポールアクスを全力で斬り払った。


「おおっ!」


 雪の巨人の左の腹がえぐれる。


 強靭な肉体であるが、俺の力はこの敵に通用するぞ!


 左の前方から巨大な殺気が発せられているっ。


「グラート!」


 雪の巨人の反撃だ。


 彼の巨木のような腕が高速で迫り、俺の全身をとらえた。


「くっ」


 巨体なのに、なんという速さだっ。


 ポールアクスをかまえて防御するが、馬の突進にも勝る衝撃をおさえることなどできない。


 左から容赦なく吹き飛ばされて、背後の壁に右肩と背中を強打した。


 強い……!


 プルチアのガレオスや岩の巨人を彷彿とさせる強敵だ。


 外敵を一撃で吹き飛ばす攻撃力と、多少の攻撃では怯まない強靭さを兼ね備えている。


「てめぇ、いい加減にしやがれ!」


 ルーベンがまっすぐに突撃し、鋼鉄の槍を突き刺す。


 強固な力でくり出された一撃は雪の巨人の胴をえぐるが、致命傷にはならないか。


 雪の巨人が右腕を大きくふり上げる。


「ぐおっ!」


 高い天井のそばからふり下ろされた腕をルーベンはかわしたが、地面をくだいた衝撃によって吹き飛ばされてしまった。


「やばいぞ、グラート。とんでもない敵だぞ」


 ウバルドは俺の後ろで立ち上がっていた。


「そうだな。青の結晶をやすやすとくれてやるつもりはないようだ」

「のんきに言ってる場合か! このままだと俺たちはここで全滅だぞっ」


 雪の巨人は強い。


 あらゆる強靭さを兼ね備えた者を、どのように攻略すればよいのか。


「ウバルドは炎の魔法で攻撃するのだっ」


 ウバルドの援護射撃で牽制しつつ、俺とルーベンの攻撃であの敵を倒す!


「うおぉぉぉ!」


 左足をふみ込み、ポールアクスを斬り払う。


 雪の巨人の右足を、この一撃で斬り落とす!


「お前に私怨はないが、お前を俺たちは倒すぞっ」


 ポールアクスが轟音を発して空を斬る。


 逆袈裟ぎゃくけさに斬り上げられた刃は雪の太い足に斬り込み、勢いを殺さずに右上にまで斬り上げられた。


 分厚い刃が敵の足をすり抜け、足はももから横に一直線に分断された。


「おおっ、すげぇ!」

「さすがっ」


 雪の巨人が足の支えをうしなう。


 その場にくずれ、地響きのような音が洞窟の奥まで発せられた。


「ぃよぉし! これであいつの動きを止めることができたぜっ」


 ルーベンが続けて攻撃をしかける。


「てやっ!」


 槍を果敢に突き刺して、雪の巨人の左腕を斬り落とした。


「いっきに畳みかけろ!」


 ウバルドがみっつの火の玉を放つ。


 火の玉は不規則な軌道を描いて飛翔し、雪の巨人の頭部を溶かした。


「こんだけ攻撃すれば、こいつも直にくたばるだろう」


 雪の巨人は重たい身体が支えられなくなったのか、フロアの中央でうずくまってしまった。


「動かなくなったな。ルーベンが言う通り、本当にくたばったのか?」


 ウバルドが長剣を鞘に収める。


 ルーベンが「がはは」と笑って、


「あたぼうよっ。俺らの神技的な連携攻撃にかかれば、どんなにでかいやつだって瞬殺だぜ!」


 雪の巨人に背を向けて胸を張った。


「そうだといいがな」

「なんだぁ、ウバル。まだこいつにびびってやがんのか? あんだけ攻撃したんだ。もう起きやしねぇって」

「いや、こんなでかい魔物が、何度か攻撃しただけでくたばると思えないんでな」


 ウバルドの言う通りだ。俺も戦いはまだ終わっていないと思っている。


「おいおい。ウバルは心配性だなぁ。俺ら、こういうやつらを何体も倒してきただろう?」

「だがなぁ。少し様子を見た方がいいと思うんだが」


 敵は動かなくなったが、この広いフロアを張りつめさせている気配は消えていない。


 この敵は腕や足を斬られ、頭まで焼かれてしまったが、俺たち人間と同じだと――どこかで鈍い音が発せられている?


「な、なんだ?」


 どこだ。音を発しているのは。


 雪の巨人か? それとも、フロアの外から――。


「グラートっ。お前の奥で転がってる足だ!」


 なんだとっ。


 ふり返ると、俺が斬り落とした敵の右足が宙に浮いていた。


「なんだこりゃ!」


 雪の巨人の大きな右足が襲いかかってくる……!


 高い場所から一気にふり落とされて、氷の地面に穴を開ける。


 斬り落とされた足に意思が通っているとでもいうのか!?


「ルーベンが斬り落とした腕も……っ」


 雪の巨人の左腕も不自然に動き出している。


「うおっ!」


 高い場所から落とされるその様子は、まるでバリスタから放たれた巨大な矢だっ。


「くそっ、どうなってやがるっ」

「斬り落とされた腕と足がっ、なんで勝手に動けるんだ!」


 信じられない。ありえない光景だっ。


 だが、これに似た光景を俺は前に見たことがあるかもしれない。


「驚いている場合ではないっ。迎撃態勢にうつれ!」


 斬り落とされた腕と足が、雪の巨人の本体と結合する。


 元の状態へと回復し、また俺たちを攻撃してきただとっ。


「こんなのありかよぉ!」

「やっと、倒したと思ったのにぃ」


 このガーディアンの生命力は底なしか!


 雪の巨人は右足を大きくふり上げて、俺たちをふみつぶそうと攻撃をしかけてきた。


「くっ、やられるか!」


 ルーベンとウバルドに後退を指示する。


 雪の巨人のすべての体重が床の一点に集中し、天地をゆるがすような音とともに大きな穴が開いた。


「俺はお前を倒し、あの青い力をもらい受けるぞ!」


 疲れた身体を叱咤して雪の巨人へと突撃する。


 ポールアクスを斬り払って、雪の巨人の右足を斬り落とした。


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