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第228話 青の洞窟へ、水晶のガーディアンたちをたおせ!

 光につつまれた世界を浮遊する。


 身体の重さを感じない、まるで夢の中の世界だ。


 この超文明の利器がもたらす力を、俺は知っている。


 プルチアの遺跡で、この力をすでに使っていたではないか。


 翼を得たような時間は、あっという間に終わりをつげた。


 たどり着いたのは暗い世界――ではなかった。


「何が、起きたんだ?」


 放心していたルーベンとウバルドを放す。


 ふたりは冷たい地面に手をついて、あたりを迷子のように見まわしていた。


「さっきとぜんぜん違う場所になったけど……どこなんだ、ここは」


 目に絶えず飛び込んでくるのは、青くひかる壁。


 青い宝石のようにひかる壁だ。無数の水晶がまわりの壁を形成しているのか。


 地面はぶ厚い氷が張っている。


 かかとで強くふんでも、ひびひとつ入らない。


 天井は高い。俺の背丈よりもはるか上に天井が存在する。


 天井も青い水晶でつくられていた。


「ここって、俺たちが目指してた場所……なんじゃね?」

「青の、洞窟……だよな」


 ルーベンとウバルドが互いに見合って、やがて抱きついた。


「やっと着いたんだぁ! 青の洞窟にっ」

「これでやっと帰れるぞぉ!」


 ふたりの元気がもどったようだな。


「先ほど俺が触れた装置は、ここへ瞬間移動させる超文明の利器だったのだ。プルチアの遺跡でも、同じ装置を使って地下から地上にもどった」

「そうだったんかぁ」

「ああ。早く気づくべきであった。プルチアでこの装置を使っているのだから、この遺跡にも同じものがあると推測できたのだ」


 俺の後ろに瞬間移動の装置がたたずんでいる。


 この装置を使えば、地上にまた帰れるであろう。


「こんな装置で移動するなんて、普通じゃ考えられないだろう」


 ウバルドが立ち上がって、瞬間移動の装置を見やった。


「それに触れただけで違う場所に瞬間移動できるなんて、今でも信じられん。預言士というのは、どこまで高度な連中だったんだ」

「預言石に亡者の監獄。そして、地上でさっきまで戦っていたガーディアンたちも、おそらく預言士たちが遺したものだ。彼らは俺たちが知りえない知恵と技術で、あれらを開発していたのだろう」

「なるほど。王国の連中が知りたがる理由が、よくわかったぜ」


 ウバルドが青の洞窟の先へと向き直して、生唾をのみ込んだ。


「俺はよくわかんねぇけど、地上にわんさかいたあの連中も預言士っつう野郎がつくった連中だったのか?」


 ルーベンも立ち上がったが、どこか浮かない顔であった。


「おそらく、そうだ。まだ推測の域を出ていないが」

「はぁ。あんな連中、どうやってつくったんだろうなぁ」


 ルーベンは預言士とその発明には興味がないか。


「それを調べたいから、俺は王宮から使命を受けて各地の遺跡を調べていたのだ」

「ほえぇ。そうだったんだなぁ」

「ここが超文明の遺跡であるということは、青の結晶も預言士が遺した利器である可能性が高いな」


 青の結晶は古代人が強力な武器をつくる際に使用していたものだと、アンサルディ殿は言っていたと思う。


 やはり古代人は預言士のことだったのだ。


 預言士がかつて強力な武器を生み出した方法で俺は最強の斧をつくり、ヴァールに挑む。


 同じく預言士が遺した道具で復活した、あの男と。


 俺は、絶対に負けん!


 最強の斧を引っさげて、今度こそヴァールを倒すっ。


「のんびりしていられない。先へ進もう」


 氷でかたく補強されたフロアを歩く。


 青い水晶が壁や天井で光を放っているせいか、洞窟の中にいるはずなのに明るい。


「ガーディアンどもは、ここにはいないんだなぁ」

「そうだな」

「さっきから気になってるんだけど、この青いのって、青い結晶なんじゃね?」


 ルーベンの素朴な疑問に、ウバルドも首をかしげる。


「たしかに」

「この辺にあるのを適当に切り取って、もって帰ればいいんじゃね?」


 ルーベンの提案は一理あるか。


「そうかもしれんが、先へ進んでみよう。もっと良い結晶が奥にあるのかもしれない」

「オッケー」


 ここにガーディアンたちはいない。


 だが、ここを守護している者たちはいるはずだ。


 ――青く光るその場所は、透明に光る結晶のような者たちによって守護されていた。


「おいっ、グラート! あれっ」


 ウバルドの悲鳴に似た声が洞窟にひびく。


 青く光る洞窟のあちこちに、白い水晶が地面からまっすぐに生えている。


 細長い岩のようだ。透明で艶やかだが、どこか不気味な力が感じられる。


 白い水晶たちが、かすかに振動している……?


「こいつら……」

「動いてねぇか!?」


 地震が起きたのかとわずかに思ったが、そうではない。


 白い水晶たちの横にふるえる動きが大きくなっていく。


 水晶の大きなかたまりが地面から飛び出した。


 地面に落ちると二本の手足を生やして、人のように立ち上がった。


「今度は、こいつらと戦うのかよぉ……!」


 水晶たちが宙に浮く細い水晶を両手にとった。


 そして、細い水晶をまっすぐに投げつけてきた。


「うおっ!」


 細い水晶が地面に落ちてガラスのように破砕する。


 水晶たちは宙に浮く細い水晶を自在にあやつり、俺たちに飛ばしてくる。


「なんだこいつらっ。これじゃ近づけねぇぞ!」

「岩を投げられてるようなもんだからな。あんなかたいのが頭にぶつかったら即死だぞっ」


 一時後退して作戦を練るしかないっ。


「フィルラ族の村長に読んでもらった文献にも書いてあったな。ここを守護する者たちは氷を飛ばしてくると」

「氷というか、でっかい水晶だけどな……」

「ウバルドが言う通り、あの水晶を直撃されたら致命傷だ。あの攻撃を器用にかいくぐり、かつ彼らを撃退しなければならないが、どうしたものか」


 水晶たちは俺たちが離れたせいか、攻撃の手をゆるめている。


「あいつらは氷かなんかでできてるんだろうから、炎で攻撃すればいいのかもしれないが……」

「炎の魔法で反撃するのか。ウバルド、できるか?」

「炎の魔法自体は使えるが、初級の魔法しか使えないぞ。焚き火をつくるときに使う魔法とかな」


 威力の劣る魔法では、足止めくらいにしかならないか。


「もっとこう、でっけぇ魔法は使えねぇのか? ばばばば! てやつらを燃やすような魔法とかよぉ」

「そんな魔法、使えるわけないだろっ。俺は魔道師じゃないんだ。高度な魔法なんて使えないぜ」


 高度な攻撃魔法を駆使していたのはジルダだ。


 彼女とはマドヴァではぐれて以来、消息がつかめていない。


 このような場所で足止めされている場合ではないというのに……っ。


「あいつら、俺たちが離れたら攻撃してこなくなったな。持ち場を離れられないのか?」


 ウバルドとルーベンが壁の裏に隠れて、動く水晶たちの様子をうかがっている。


「ていうか、元の状態に戻ってね?」

「そうだな。あいつら、外敵が近づくたびにわさわさ動いて、いちいち準備しないといけないのか」


 彼らは待機している間、動かない水晶と同然の状態で留まっている。


 そして、外敵が接近したら身体を起こして、戦いの準備をはじめるということか。


「俺たちが急接近して先制攻撃を仕掛ければ、案外簡単に彼らを退けられるかもしれないな」

「そうかもしれんが……グラート。それは危険じゃないか」

「危険かもしれないが、ためしてみる価値はあるだろう」


 ポールアクスをかまえて一歩をふみ出す。


 ふたりに指示し、俺の後に続く手筈をととのえた。


「行くぞ!」


 ポールアクスを引っさげて、動く水晶たちに急接近する。


 彼らは俺たちの気配を察知し、ゆっくりと戦闘の準備をはじめる。


「遅い!」


 無防備な彼らにポールアクスをふり下ろす。


 彼らの身体はかたいが、ポールアクスの強靭さが勝っていた。


 まっぷたつに引き裂かれた彼らはもろくくずれ落ちた。


「ははっ、いけるぞ!」

「こうなればヤケだっ」


 ルーベンとウバルドも動く水晶たちを破壊していく。


 鈍重な彼らはなすすべなく粉砕されていった。


 奥で戦闘準備を終えた者が、俺たちに細い水晶を投げつけてきた!


「あぶない!」


 ルーベンに投げられた水晶を斧で斬り払う。


「グラートっ」

「あれを倒せば、このフロアはミッションコンプリートだっ!」


 氷の地面をふみつけて、次の水晶を投げつけようとする水晶の悪魔に突撃した。


 彼は細い腕をしならせて、俺に殴りつけてきた。


「そのような攻撃は通用しない!」


 ポールアクスをかまえて攻撃を受け止める。


 即座に反撃して、水晶の悪魔の胴を真横に斬り払った。


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