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第227話 無数のガーディアンに攻め立てられても活路を見出せ

 鋼鉄の身体をもつ者たちに前と後ろから攻撃されたら、ひとたまりもないっ。


「左のわずかな空間に血路を開く! なんとしても持ちこたえるのだっ」

「そんなこと言ったってぇ!」


 前方のガーディアンを足蹴にし、強引に道を拓く。


 ガーディアンたちの攻撃を斧でなんとか受け止めるが、このままではあえなく全滅だっ。


「てめえらっ、どけ!」


 ルーベンも加勢し、ガーディアンたちを退けてくれる。


 左の石壁のそばに立つガーディアンを一撃で吹き飛ばし、開いた隙間をすり抜けるように飛び込む。


「ひえぇ!」


 ウバルドの悲鳴が聞こえるが、ガーディアンたちの攻撃はしっかりとかわしているようだ。


 左の石壁を沿うように広場の端を走り抜けて、敵の囲いをかろうじて突破することができた。


 ガーディアンたちはうろたえているのか、攻撃の手を止めて首を左右にきょろきょろと動かしていた。


 俺たちが自分たちの後ろにまわり込んだと知り、身体を急旋回させて大剣をまたふり上げてきた。


「グラート!」

「まかせろ!」


 ルーベンとウバルドを下がらせる。


 押し寄せるガーディアンたちの前でポールアクスを逆さに持ちかえた。


「これでもくらえ!」


 全身の力を右手に集約させる。


 ポールアクスで地面を突き、爆発的な力で積もる雪ごと地面をくだいた。


「うっ、うわぁ!」


 波動が地中の奥深くへと行きわたり、白い大地をはげしく振動させる。


 広場の高い柱がくずれ落ち、石の破片となって深い雪に埋もれていく。


 ガーディアンたちもくずれる石像のように地面へと転倒していった。


「な、なんだよ。今のっ」


 ルーベンとウバルドも俺の後ろで転倒していた。


「渾身の力を込めた一撃だ。足もとをすくわれたら、重い身体をもつ者たちでは支え切れまい」

「渾身の次元が俺たちとぜんぜん違うぞ!」


 雪に埋もれていたウバルドが起き上がって叫んだ。


 ルーベンは愉快なものを見たように笑っていた。


「グラートはほんとすげぇなぁ! お前やっぱ最強だよっ」

「最強の次元も、俺たちと違うんだよ。こいつは」

「いいじゃねぇの。こまけぇことは気にすんなって!」


 ルーベンもウバルドも、俺の力を信頼してくれる。


 たのもしい者たちだ。


「ガーディアンたちが倒れている今のうちに、この奥を探そう」


 この広場はルヴィエド宮殿の広場のように広大だ。


 フロアの中心に祭壇のような台があり、そのまわりを一定の間隔で柱が建てられている。


 台も柱も長い年月の末に朽ちている。当時のかたちを推しはかることはできない。


「このフロアに地下の階段は見つからないな」

「雪に埋もれてる可能性は否定できないが……」


 ウバルドの言う通りか。


「じゃあ、そこらじゅうの雪をどけてみるか?」

「いや。そんなことしてたら、ガーディアンどもが起き上がってくるぞ」


 後ろで倒れていたガーディアンたちは、半数以上が立ち上がっていた。


「また襲ってくるぞっ。急げ!」


 広場の奥へと駆け抜ける。


 細い回廊にまた差しかかり、左右に伸びる分かれ道を無視してまっすぐにひた走る。


 空高く伸びるエルブス山が目の前でそびえている。この道で間違いないはずだっ。


「あれが例の山だよな。洞窟なんてどこにあるんだ!?」

「わからんっ。見たかぎり、どこにもないぞ!」


 このまわりにあるのは高い外壁と柱、そして黒い甲冑に守られたガーディアンだけだっ。


「うげっ、またいたぞ!」


 外壁の近くで石像のようにたたずんでいたガーディアンが手足を伸ばし、俺たちに肉薄してくる。


「ルーベン、たのむっ」

「おう!」


 ガーディアンがふりおろした鋼鉄の柱をルーベンが受け止める。


 槍を水平に倒し、ガーディアンとしばし膠着状態に陥る。


「お前らはすんげぇ怪力だけどよ、だんだんと慣れてきたぜぇ」


 ルーベンがかけ声とともに槍を押し出し、ガーディアンを突き飛ばす。


「疲れなけりゃ、お前らなんかにやられやしねぇぜ!」


 ルーベンが猛り、槍の石突きでガーディアンの首をくだいた。


「たすかったぞ、ルーベン」

「へへん、俺もまだまだ現役……」


 鼻の下を指でさすっていたルーベンが、急に言葉を止めた。


「どうした?」

「いや、あれ……」


 ルーベンがふるえる腕を上げて、回廊の向こうを指した。


 ふりかえった先にあらわれたのは、またしてもガーディアンたちか!


「うぎゃぁ!」


 ガーディアンたちが騎士に率いられるように、ぞろぞろと回廊の向こうからこちらへと歩いてきていた。


 その数は……何体だっ。すぐに数えられないほどいるではないか。


「逃げるぞ!」


 ウバルドの指示に従い、道を引き返す。


 多勢に無勢だ。鋼鉄の軍団を相手にしていたら、青の結晶にたどり着く前に力尽きてしまうっ。


「こいつら、マジで何体いやがるんだよぉ!」

「こんなとこ捜索していられるかぁ!」


 プルチアの遺跡と同じかっ。


 どこからともなくあらわれるガーディアンたちに苦戦を強いられ、俺は危うく死にかけたのだ。


 青の結晶を見つけることはできないのかっ。


 細い回廊の先からもガーディアンたちが迫ってくる!


「うぎゃぁ! 向こうにもっ」

「うそだろぉ!」


 左右の分かれ道に差しかかった。


 このどちらの道にもガーディアンたちはいないっ。


「こっちだ!」


 左の道を指示し、目前へと迫るガーディアンたちに渾身の一撃をくらわせる。


 地面をくだいて発生させた衝撃波で彼らを足止めし、俺もすばやくルーベンたちと合流した。


「グラートのおかげで、今回もなんとか逃げられたけど……」

「俺ら、確実に追いつめられてるんじゃないか」


 ルーベンもウバルドもヒザに手を乗せて、はあはあと荒い息を背中から吐いていた。


「いや、そんなことはない。どこかに地下へと続く階段があるはずだ」

「ほんとかよぉ」

「今日は、いったん引き返した方が、いいんじゃないか」


 引き返すにしても、ガーディアンたちに帰る道をふさがれてしまった。


「退路は断たれた。地下へと続く階段をなんとしても探し出すしかない」

「そ、そんなぁ」


 ガーディアンとの戦いはかなりの力を消耗する。


 力尽きる前に、階段を早く見つけ出さなければ。


 また住居の跡が建ちならぶ場所に差しかかった。


 倒壊した民家や柱がたたずむあちこちで、黒光りする怪しい柱が天空に向かってそびえている。


「うわっ、こっちにもいるぞっ」


 ここでもガーディアンたちが襲ってくるか!


「こんなところでやられてたまるかっ」


 大喝してポールアクスをふりまわす。


 迫り来るガーディアンたちの胴を割り、両腕をもぎ取って彼らの機能を停止させる。


「グラート、もう、だめだよぉ」

「俺ら、ここで死ぬんだ……」


 ルーベンとウバルドが、力尽きようと――。


「あきらめるな! 動くことをやめた瞬間から死が訪れるのだぞっ」


 こんな最果ての地で、お前たちを死なせやしない!


 ふたりの肩をかかえ、襲いかかるガーディアンたちを退けながら一筋の光を探す。


 ここに、かならずあるはずだ。青の結晶へと続く道が……っ。


 極北の遺跡をさまよい、ガーディアンたちに追われながら流れ歩いているうちに行き止まりへと迷い込んでしまった。


「この先に、道はないのかっ」


 目の前は高い塀に阻まれている。塀の奥にそびえ立つのはエルブス山だ。


 背後から、重たい金属が地面に落ちる音が聞こえてくる。


 このように狭い場所でガーディアンたちに押し込まれたら、今度こそ命を落としてしまうか。


 黒い槍によって胸が突かれたような感覚に陥る。


 槍が漆黒の感情となって身体の隅々へと行きわたり、俺の生きる力を根こそぎ奪おうと悪意を仕掛けてくる。


「ここまで、なのか……」


 背後から聞こえる足音が、大きくなっていく。


 戦う力を……いや、生きる力を失いはじめたこの状況で、鋼鉄の身体をもつ者たちと戦い続けることなどできないであろう。


 ヒザを折ろうとしていたとき、視界に台座のようなものが映し出された。


 なんだ、これは。


 飾り気のない、俺の腰くらいの高さが台座に妙な物体が括り付けられている。


 円のかたちをした像なのだろうか。


 象は中心からうっすらと紫色を帯びた光を発している。


 弱い光だが、明るい時間でもはっきりと視認できるのは不思議だ。


 この妙な台座と光を、俺は違う場所で見たことがある。


 プルチアの遺跡だ!


 遺跡の地下の暗闇をさまよっていたときに、この光を発見したのだっ。


「お前はっ、俺たちに唯一の光明をあたえてくれるか!」


 ガーディアンたちが背後から荒々しく足音を立てて襲いかかってくる。


 俺は迷わずに光へと手をのばした。


 弱い光がかっと強くなり、陽のような光を全体に放つ。


 この広い遺跡をつつみ込むような光があふれ出し、俺の身体は羽根のように軽くなった。


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