表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/271

第167話 遺跡の地下で預言石を発見

 地下へと続く階段は何段あるのか。かなり深い場所へとつながっているようだ。


「グ、グラートさま。だいじょうぶ……ですかね」


 ビビアナは地下の暗闇に臆しているようだ。


「案ずるな。俺がついている」

「は、はいっ」


 ひんやりとした空気が頬をなでる。


 暗澹たる気配が地下の全体を支配しているように感じる。


 ここの調査は、一筋縄ではいかないだろう。


 だが、俺が不安を口にすれば、ビビアナや兵たちを動揺させてしまう。


 長い階段の終端にたどり着いた。


 ここは巨大なシェルターなのか?


 それとも地下に建設した大きな街か。


「グラートさま。あの、だいぶ……」

「そうだな。かなり広いようだ」


 地下のフロアは予想をはるかに超えて広大だ。


 このフロアだけでちいさな農村くらいの広さがあるし、天井もかなり高い。


 だが、暗闇の向こうから殺気めいたものを強く感じる。


「ここには強大な魔物がいる。気をつけろ――」


 暗闇の一点が赤くひかった!


 双眸のような、ふたつの赤い点が不自然に灯っている。


「あ、あれは――」

「危ないっ。下がるのだ!」


 ビビアナたちを下がらせたのと、強烈な気配が発せられたのは同時だった。


 赤い光線がまっすぐに伸びて、俺の身体を焼き焦がそうとした。


「ぐっ!」

「グラートさま!」


 ヴァールアクスをとっさにかまえたため、ぎりぎりのタイミングで難を逃れた。


 熱線のような光がヴァールアクスの刃を焦がした。


「な……なんなの、ですかっ」


 赤い点が別の場所でもひかる。


 金属を戛然かつぜんと鳴らしながら、魔物たちが暗闇から姿をあらわした。


 いや……これは魔物とは違う。


 パライアの遺跡を守るガーディアンと同じなのか?


「な……」


 白銀に身を包んだ人型の者たち。


 重い甲冑を着込んでいるような容姿だが、生気はまったく感じられない。


 彼らの後ろでたたずんでいるのは、象のような形をした巨獣のガーディアンなのか?


 彼の目がまた妖しくひかった。


「くるぞ!」


 目の輝きとともに強烈な光がまた発せられた。


 光は暗闇をまっすぐに貫通して、俺たちの正面をとらえた。


 高速な攻撃をかわすのは至難だ。


 とっさに身をかがめるのが精いっぱいだ。


 人型のガーディアンたちも、足音をわざとらしく鳴らしながら迫ってきた。


 太い腕をふりまわして、背後の壁ごと俺たちを粉砕しようとする。


「きゃぁ!」

「お前たちは預言士たちにつくられた古代の戦士なのか!?」


 身体を低くかまえてヴァールアクスをふり払う。


 重たい刃が轟音を発して、ガーディアンの腰を粉砕した。


 人型のガーディアンたちが猛獣のように迫ってくる。


 心をもたない彼らは恐怖を一切感じないのかっ。同胞がやられても果敢な攻撃に変化が見られない。


「屈強なる者たちが、この遺跡でも道を阻むか!」


 ヴァールアクスをたたきつけてガーディアンを頭から粉砕する。


 固い身体だが、ヴァールアクスの攻撃力が勝っているか。彼らの動きを止めることができた。


「あとは、後ろでたたずむあの巨獣だけかっ」


 巨獣の形をしたガーディアンが遠くから光線を放ってくる。


 目にも止まらぬ速さだが、直線的な攻撃は軌道が読みやすい。


 左によけながらヴァールアクスを低くかまえて、俺は彼に向かって突撃した。


「預言士によって守護を命じられた者たちよ、さらば!」


 ヴァールアクスをふり上げて、巨獣のガーディアンを右下から斬り上げた。


 彼は胸から左肩にかけて破壊され、重い身体を地面に落とした。


「グラートさま。この方たちは、なんなのでしょうか……」


 ビビアナと兵たちは無事だったか。


「この者たちは、おそらく預言士たちによってつくられた兵器なのだろう。どういう原理で動いているのかわからないが、預言士たちにここの守護を命じられたのだろう」

「あの、預言士さまって、何千年もむかしに滅んだ人たちですよね。そんな人たちにつくられた方たちが、今でも動けるんですかっ」


 ビビアナは地面に倒れたガーディアンたちを見下ろして、「ひっ」と声を出した。


「おそらく、そういうことになるだろう。パライアのガーディアンたちもそうであったが、おそろしい兵器と製造技術だ」

「こんな方たちが遺跡を守ってたら、わたしたちじゃとても敵わないです……」


 預言士は人間たちよりも数が少なかったのだと、シモン殿が言っていた。


 戦争に多くの兵が必要になるから、預言士たちはこのようなガーディアンたちをつくり出したのだろうか?


 それとも、自分たちが築いた施設を未来永劫に守護させるため……?


「この場所に留まってはいけない。すばやくこの遺跡を調査するのだ」

「は、はいっ」


 暗闇を松明で照らしながら、慎重に進んでいく。


 ガーディアンたちはいたるところにいて、俺たちの前を阻んでくる。


 胸にある核を破壊すれば機能を停止するようだが、頑強で意思をもたない彼らを撃破するのは骨が折れる作業だった。


「わたしたちだけで、ここの調査ができるのでしょうか……」


 ビビアナがアダルジーザから習った魔法で、兵たちのけがを治療してくれる。


「調査を完遂するのはむずかしいかもしれない。進められるところまで進めてみよう」

「はいっ」


 細い回廊を抜けると、民家ほどの広さの小部屋につながっていた。


 ここにはガーディアンがいないようだが、預言士の手がかりになるものはないか?


「グラートさま! これ……」


 松明をもつビビアナが壁を照らしていた。


「どうした。何かあったか?」

「はいっ。あの、これ、壁画でしょうか?」


 ビビアナが照らしている壁を見上げる。


 俺の背よりも高い石壁に大きな絵が描かれている。


 祭祀さいしで祈る人々が描かれているのか?


 絵の中央に祭壇があって、その上に悪魔のようなものが描かれている。


「これは、なんなのでしょうか」

「わからないな。悪魔でも召喚していたのだろうか」


 よく見ると、祭壇の上に横たわっている人と、さらにコップのようなものが確認できる。


 仰向けになっている人の腹にコップが置かれていて、悪魔はそこから出現しているのか?


「不吉な絵画だな。預言士たちは凶悪な魔物でも召喚しようとしていたのだろうか」


 この壁画は、預言士たちが滅んだ一因をしめすものなのか。


「ドラスレさま!」


 小部屋の隅をさがしていた兵から呼び止められた。


「どうしたっ」

「はっ。このようなものが、そこに落ちていました」


 兵が右手に差し出したのは、紫色にひかる――預言石!


「これだ!」


 思わず声を上げてしまった。


「グラートさま?」

「これが、俺たちが探し求めていたものだ」

「で、では、これが……」

「そうだ。預言石だ」


 ついに発見した。


 預言士たちが発明した、人や物の能力を引き出す遺物。


 ヒルデブランドをたぶらかして、ヴァレダ・アレシアの東の騒乱を生み出した元凶だ。


「やっと、見つかったんですね……」

「ああ。この石をもって帰れば、預言士たちの力の根源を調べることができる」


 預言士たちの謎を明かせば、新たな戦いを生み出すのではないか?


 強大な力は人々の欲望を駆り立てる。


 紫色の光を放つ預言石が、言葉にならない意思を放っているように思えた。


「この石をつかうと、ラヴァルーサのときみたいにレイスやゾンビが出てきてしまうのでしょうか」

「どうだろう。見たところ、レイスたちがあらわれる気配はないが、預言石の力を解放する手順があるのだろうか?」


 ヒルデブランドはレイスたちを生み出すとき、預言石をどのように使っていたのか?


「その辺りも、ヴァレンツァに持ち帰って調べる必要があるようだな」

「はい――」


 小部屋の奥から敵の気配!


「左右に散れ!」


 叫びながらヴァールアクスをかまえて、気配がする方向へ突撃した。


 殺気をはなっていたのは、鳥のような形をしたガーディアンだった。


 彼は二枚の翼をひろげて、電撃を雨のように放ってきた。


「グラートさま!」

「ぐぅっ」


 無数の電撃が肩と腕を焼く。


 ひりひりとした痛みを感じさせるが、この程度で倒れる俺ではない!


「大事な調査を邪魔させるわけにはいかない!」


 ヴァールアクスをふり払って、鳥型のガーディアンの首を切断した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ