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第14話 ヨルムンガンド

 二人が住むこのもの森は、本来は危険な魔物の少ない森で、豊富な木の実や野生動物の宝庫であった。

 美しい小川が優しくせせらぎ、川魚やさわ蟹も生息している。

 リリアスは、タオとともに一日の多くを釣りをして過ごした、

 それは食用の為だけではなく、精神統一の修練としても用いられ、教育の一環とした。

 木の実を数えて演算を学ばせ、罠で捕らえた鹿のさばき方や調理法など生活や遊びのなかでタオに教育を施した。

 同年代の子どもは学校に通い、友達を作るだろう。

 しかし、この子には私しかいない。

 いつか森の外を見させてあげたい。

 そう思わない日はなかった。


 タオが無意識的に召喚したオーガは、タオに敵意を向ける相手のみに攻撃をするようになっていたが、タオが制御することはできなかった。

 対して例の『大蛇』であるが、オーガよりも上級な魔物であるためか、タオの制御は当然のごとく届くことはなく、その上、主人であっても見境なく攻撃してくるありさまであった。


『ヨルムンガンド』

 大蛇の名は『大いなる精霊』を意味するヨルムンガンドと呼ばれた。

 白く巨大なうえ動きは非常に俊敏で、魔力を霧状に飛ばし戦う。

 その霧には毒性があり、四肢の末端から徐々に腐らせ、獲物を死に至らしめる呪いだった。

 未だ、サガン達が出会うことのなかった強大な敵であった。


 リリアスはこう語る。

「サガン殿のパーティは、戦士、僧侶、レンジャーのバランスのとれた編成でございます。主力はやはりサガン殿の矛。そこに集中させるためにお二人の補助が必要不可欠。長期戦に持ち込めば勝機はあるでしょう。その場合、ホノカ殿の魔力量が重要なカギとなります。しかし今のホノカ殿では少々不安があります。ホノカ殿、私の元で修業してみるつもりはございませんか?魔力量を倍にするまでが目標です。」

 リリアスの目は真剣だった。


 俺たちはそれぞれ、修練を積むことにした。


 リールと俺はとにかく魔物を狩りまくった。

 プリースト不在の俺たちは何度も死にかけた。

 そのたびに力がついていくのを感じる。

『ヨルムンガンド』を倒す。

 その明確で単純な目標だけが俺たちを突き動かした。


 リールは考えていた。

 あのアルガイアでの事件の時、わいにかけられてたんはブーストや。

 そんなんも気づかんと戦闘を続けてもうた。

 売られた喧嘩やったとしてもや、殺してもうたんはわいが未熟やったんやからや。

 あの猫耳女は何でわいらに因縁吹っ掛けてきよったんかいな、

 裏で糸引いてるやつがおんねん。

 とにかくわいは強くならんといかん。

 あのブーストの感覚を思い出すんや。

 逃げてばっかじゃあかんねん!



 一方ホノカは、リリアスが保有する魔法書のすべてを読破し、攻撃魔法の習得にも励んだ。

 一日2時間の瞑想は小川の岩の上で行われた。雑念を断ち、『何も考えない』ことを行った。『何も考えない』ことを考えてしまうとき、微細な魔力の動きをリリアスは見逃さなかった。

 ホノカの神経は研ぎ澄まされ、自然と一体になる。


 元来、森の精霊とともにあった耳長族(エルフ)は自然と一つになることで己を高めることができる。


 ある日ホノカは精霊の声を聴いた。

「フフフ、何しているの?フフフ」

「フフフ、遊ぼうよ。」

「風が歌うよ。」

 暖かい風が頬を撫でる。

「水が鳴くよ。」

 どこかで魚が跳ねた。



 瞑想の時間は前日より長く設定されたが、彼女はその過酷な瞑想をこなした。


 日に日にホノカの魔力は大きくなる。

 その成長の早さに驚きを禁じ得ないリリアスであった。

「・・・・・・彼女は、精霊と友達になれたのかもしれません。」



 ぼろぼろになった俺とリールを迎えてくれるのは、ホノカの温かい手料理と笑顔・・・・・・ではなく、疲れ果て、今にも倒れそうな彼女だった。

 その酷い顔に俺たちはお互いを笑いあった。


 そして俺たちは、少しだけ強くなった。

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                 作者 手塚ブラボー より

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