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第9話 冷たい雨と

 俺とホノカは防具の修理でマーケットに来ていた。

 そこそこの小金が貯まったところで、パーティは装備の充実を図ることにしていた。

 この前のように背中から一撃、だなんて事のないようにとホノカは言って聞かなかった。

「私のヒーリングに頼ってばっかじゃいけないわ!あなたたち二人は無茶が過ぎるんだから。特にサガン! あなた死にたいの?」

 俺は姿勢を正した。

 ホノカには逆らえない。

「さっきのあれは何? なんで一人で突っ込むの? 少しは強くなったからってサーベルファング2匹同時は無理があるでしょ!? 私の魔力だって無限じゃないのよ? 回復できなくなったらどうするの? 死ぬわよ?」

 ホノカの説教を黙って聞いていると、通りすがりの冒険者から噂話が聞こえてきた。


「酒場のトマさんが?」

「ああ、今朝、店の裏で見つかったらしいんだ・・・・・・」

「なんでまたトマさんが・・・・・・」

「さあ、わからねえ。誰かから恨みを買うような奴じゃなかったぜ?」

「信じらんねえ・・・・・・店はどうなるんだ。」

 俺は駆け寄って話を聞いた。

「トマさんがどうかしたのか!?」




「ねえ、何かの間違いだよね?」

「当たり前だ、あの人が簡単にやられるわけがない! あの人は、酒場の店主である以前に、ランクBの元冒険者だぞ!」

 二人は急いで『しっぽ亭』へ向かった。

 冷たい雨が降り始めた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺達三人は、既に『しっぽ亭』の常連になっていた。

 旨い料理と酒、それよりもトマさんの人柄に惹かれていた。

 彼は、よく三人を気にかけてくれた。

「お前ら、新米冒険者か?」

 初めて『しっぽ亭』に訪れた時、不愛想な接客に面食らったが、店が暇なときやトマの気分がいいときは同席して酒を酌み交わした。


 トマは酔っぱらうと、息子の話をよくした。


 トマの息子サムは戦士職の冒険者だった。

 サムは強かった。

「息子は、人の世話を焼くのが好きでよ、困ってる人がいるとすぐに首を突っ込んじまう。たとえ金にならなくても関係ねえ。喜んでるやつの顔を見るのが何より好きなんだとよ。お人好しってやつだ。まったく誰に似たんだか。損をする性格だ。だけどよ、それでいいんじゃねえかと思ってたんだ。毎日ボロボロになるまで働いて、ただいまって帰ってきたら直ぐに麦酒飲んで大声で笑ってよ。仲間たちと大騒ぎしてた。幸せそうな息子を見てるとこっちまで嬉しくてよ。だけどよ、幸せってのは続かねえもんだ。ある日から急に息子たちは帰って来なくなっちまった。

 パーティの奴らも一人残らず帰って来ねえ。生きてるかもしれねえし、死んでるかもしれねえ。

 冒険者ってのはそういうもんなんだ。どっかで人助けでもしてるんだと俺は信じてるがな。」

 そう話すと、トマは寂しそうな顔をするのだった。


 俺を待ってる家族はいない、だがリールやホノカの家族も同じ気持ちなのかもしれない。

 もし帰って来なかったら、もし我が子の死を突き付けられたら・・・・・・。

 トマさんの悲しそうな顔を見るのが俺は嫌いだった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『しっぽ亭』にトマさんの姿はなかった。

 入り口には臨時休業と書かれた真新しい張り紙がある。

 俺たちは泣きじゃくる猫耳娘達を落ち着かせ、話を聞いた。


 珍しく店主がいなかったこと。

 裏で血まみれの「何か」を見つけたこと。

 怖かったこと。

 その「何か」がトマさんだったこと。

 首に大きな()()()があったこと。


 トマさんが()()()()()()こと。


 冷たい雨は止むことはなく、3日間降り続いた。

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                 作者 手塚ブラボー より

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