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第1話 界隈の年の瀬

お待たせ致しましたー


 名古屋中区にある(さかえ)駅から程近いところにある(にしき)町。繁華街にある歓楽街として有名な通称錦三(きんさん)とも呼ばれている夜の町。


 東京の歌舞伎町とはまた違った趣があるが、広小路町特有の、碁盤の目のようなきっちりした敷地内には大小様々な店がひしめき合っている。


 そんな、広小路の中に。通り過ぎて目にも止まりにくいビルの端の端。その通路を通り、角を曲がって曲がって辿り着いた場所には。


 あやかし達がひきめしあう、『界隈』と呼ばれている空間に行き着くだろう。そして、その界隈の一角には猫と人間が合わさったようなあやかしが営む。


 小料理屋『楽庵(らくあん)』と呼ばれる小さな店が存在しているのだった。








 大晦日。


 新人デザイナー見習いの、湖沼(こぬま)美兎(みう)は馴染みとなった界隈の通りを歩いていた。


 今年の四月から慣れたもので、界隈にいるあやかし達ともだいぶ顔見知りが増えた。初めて目にした時に、驚くしか出来ないでいた狐耳や猫耳。あとたぬき耳などのキャバクラ関連の勧誘の女性達とも。



「あら、湖沼ちゃん。こんばんは〜」

火坑(かきょう)の大将んとこ?」

「年の瀬やし、ええなあ。美味しいもん食べれて」

「ふふ。いってきます」

『いってらっしゃい〜』



 と言う具合に、挨拶なども出来る仲になっている。守護に憑いてくれている座敷童子の真穂(まほ)も一緒だと別だが、美兎が楽庵の常連だとあやかし達は知っているから必要以上の情報は聞いて来ない。


 と言うよりも、人間などを襲ったり食べなくなって来た時世だそうで、感情を持つ彼らも種族が違うだけで生きてる存在に変わりないのだ。


 美兎は、これから会いに行く猫人の火坑と交際するようになってから余計にそう思えてきた。


 不老長寿、珍妙な本性を除けば……人間とは大きく違う部分はないのだから。それにあやかし達も、一部では吸血鬼のジェイクや赤鬼の隆輝(りゅうき)のように、人間達に混じって生活している者もいる。



「……今日は何が食べれるかなあ?」



 まだまだ新人なので、クリスマスとは違い年の暮れには会社詰めになることはなく……今日一日は自宅の掃除をしていた。昨日はそれまでの仕事詰めで忙しく、楽庵にも……火坑にも一度しか会えていない。一度、終電を逃したので、泊まって行くようにと提案された時だ。


 それ以来は、自分の事が手いっぱいで火坑ともLIMEでしかやり取りが出来ていない。


 だから、今日彼が『良かったら』と提案してくれた年越しのお泊まりには当然賛成したのだ。



(それに、真穂ちゃんはお兄ちゃんと過ごすし……)



 美兎と火坑が結ばれた、すぐ後に。


 経緯については真穂からきちんと聞いたが、二人が交際するとそれぞれのLIMEからメッセージが届いたのだ。火坑のマンションから自宅に戻った後に知ったので、自宅で美兎は思わずひっくり返り……頭を廊下のドアでしたたかに打ったのが少し懐かしい。


 まだ一週間前程度なのに、時期の移り変わりが激しいからか、そう思えた。なので、今日真穂は海峰斗(みほと)と二人で真穂の自宅で過ごすそうだ。


 本来なら、守護に憑くと宣言した真穂がいないと万が一危ないと言われた時もあったが。元獄卒で補佐官だった火坑の恋人だと言うのは、この辺りの界隈に知れ渡ったらしく。


 並大抵のあやかしが、もし美兎に襲いかかったとしても……真穂だけでなく火坑の加護も受けている人間に手を出すと、下手したら消滅するそうだ。それくらい、真穂もだが火坑も相当強いあやかしらしい。


 火坑があやかしとして強いイメージは、美兎にはあまり実感がないが。


 とりあえず、実家から送られてきたお節の一部をタッパーに入れて袋に詰めたのを片手に。まずは、楽庵に来て欲しいと言われたので……到着してから引き戸を開けた。



「こんばんは〜」

「……こんばんは、美兎さん」



 今日も、素敵に美味しそうなお出汁の香りが店内に広がっていた。

次回は金曜日〜

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