第5話 火坑の覚悟
お待たせ致しましたー
サイズは測ってもらっていないのに大丈夫かとも思ったが……このプレゼントは普通じゃない。だから、大丈夫だとリングからチェーンを外した。
火坑は美兎の左手を。美兎も火坑の左手をそれぞれゆっくりとリングを薬指に嵌めれば……ぴったりと入ったのだった。
「わぁ!」
「さすがは、御大のプレゼントですね?」
嬉しくてはしゃいでいると、火坑からまた額にキスを贈られてきた。彼は意外とキスが好きかもしれない。くすぐったいが、嬉しくて目を閉じていると……火坑からまた抱きしめてくれた。
「嬉しいです」
「僕もですよ?」
二日遅れのクリスマスプレゼントではあるが、中身は最高としか言いようがない。人間でなくとも、想いを寄せた相手と結ばれたから……嬉しくないわけがないのだ。だから、美兎も火坑に手を伸ばして背中に手を回した。
とても温かい体温に、ここに火坑がいるんだなと嬉しくなってしまう。美兎は火坑の胸に、火坑は美兎の頭に頬擦りしていると……だんだんと安心してきて眠くなってきてしまった。
それに気づかない火坑ではないので、美兎の頭を撫でてから提案してくれた。
「泊まっていかれますか??」
その言葉には、いくら美兎でも目が覚めてしまい、勢いよく顔を上げてしまった。のが災いして……火坑の顎に直撃してしまい、お互いに痛みに悶える羽目になってしまう。しばらく、床に転がり痛みを紛らわせていたが……落ち着いてからは何故か正座することになった。
「あの……美兎さんが考えていらっしゃることは出来ない……です」
「え?」
「誤解のないように説明します!! その……キスだけならともかく、身体を繋げてしまうと……人間は二度と元の身体には戻れません。あやかしのように不老長寿になってしまいます。美兎さんの成長がその状態にずっとなってしまうのですよ」
「……あ」
美兎は思い出せた。会社の先輩である沓木が赤鬼と長く付き合っているのに一線を越えていない関係のままでいることを。だとしたら、火坑もそう考えてくれているのだ。美兎のこれまでのために、これからのためにも……まだまだ人間社会で生きていくことを決めている美兎らにとっては、それは決して間違えてはいけないから。
「だから……僕は。美兎さんと、その時が来るまで……その、我慢します」
「…………えっと……あ、ありがとうございます……?」
「疑問形ですか? 美兎さんは辛抱出来ない感じです?」
「だって……火坑さんとですし」
「そう思っていただけて光栄です。ですが、僕も男ですよ? それはお忘れなきよう」
「……はい」
今は響也の姿でいるが、猫人の時も魅力的な男性だ。言い寄られたりするだろうに、美兎ひと筋なところを見るといじらしく思えてきた。
だから、今日はその覚悟を受け入れた上で、火坑の家に泊まろうと彼に告げたのだ。
お風呂にそれぞれ入り、火坑の大き過ぎるフリースのパジャマを借りてからベッドに寝ることになった。酔い潰れた時以来だが、大きめのベッドで抱き合うように寝ることで……なんとか二人で寝れそうだ。『おやすみ』と言ってから、体も心もほかほかだった美兎はすぐに眠れる事が出来た。
次回は金曜日〜




