表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/204

第2話 猫人の家②

お待たせ致しましたー

 いつも通り過ぎて、火坑(かきょう)がここに連れて来た意味がわからなくなってきた。ぬらりひょんの間半(まなか)の言葉で、美兎(みう)の気持ちもバレたはずなのに、何も聞いてこないのだ。


 美兎に紅茶を淹れてから、温まったこたつでじんわりと足や体を温めていく。だが、美兎は冷や汗をかくように、背筋が寒く感じた。



「……都合の良い解釈と、思っていいんでしょうか」



 火坑がやっと話を切り出したので、美兎はハッとして顔を上げた。猫人の顔は、相変わらず困ったような表情だったが。



「え……っと」

「いえ、すみません。不躾過ぎましたね? その……正直言って、嬉しくて」

「……え?」

「嬉しいんですよ、美兎さん。僕は…………あなたに惹かれているんです」



 そんなことはない、嘘だ。


 と、何回も何回も頭の中でぐるぐると巡っていた思考が……だんだんと落ち着いて行く。火坑の表情もだんだんと困った感じから笑顔に変わっていくのに……良いのか、と美兎も嬉しいと感じていく。



「……いいん、ですか?」



 やっと紡ぎ出せた言葉は、酷く震えていた だが、伝えたいと言う欲が出て、美兎は火坑の顔を見続けた。



「私も……つ、ごうのいい……解釈をしていいんですか?」

「もちろん」



 火坑はそう言うと、体が光っていく。なんだ、と思っていたら人間の姿……紅葉狩り以来の『香取(かとり)響也(きょうや)』の姿になったのだ。わずか10センチもない美兎との距離を、彼は一気に縮めて……美兎の肩に手を回してから胸に抱き込んだのだ。



「か、火坑、さん!?」

「正直に言います。僕は……湖沼(こぬま)美兎さん。あなたのことが好きです」

「!?」



 熱いため息。


 熱い想い。


 それらを口にしてくれた火坑の手は、人間の手になっていたから震えていたのがよく分かった。いつもなら、料理でもアドバイスでも自信が強いあやかしでいるのに……ただの人間でしかない美兎には、自信がないように思えたのだ。美兎もほとんど口にしたようなものなのに、それでも確かな証が欲しいと体の震えで伝えてくれる。


 美兎は自分にちっぽけなプライドだなんてどうでもよかった、と思えてきた。



「……私、も」



 だから、彼のためにも伝えようと思えた。



「……私も、火坑さんが好きです! あやかしでも猫でも関係ないくらいに!!」



 抱きしめられた胸から顔を上げて、火坑の顔を見てから答えた。紅葉狩りの時もだが、素晴らし過ぎるイケメンとの距離が近いのに、鼓動が高鳴ってしまうが我慢した。美兎は自分の正直な想いを伝えて、火坑の想いにも応えたかったから。


 そして、美兎がきちんと告げた直後。火坑は泣きそうな笑顔になって……美兎の頬に手を添えてきた。その意味がわからないわけがない美兎は、受け入れるためにそっと目を閉じる。


 すぐに、唇に触れた感触に……ああ、これが出来るのは人間の姿の方が良いのか、と少しくすぐったい気持ちになりながら……火坑からの口付けを受け入れたのだ。

次回は水曜日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ