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第6話 ブラックサンタクロースとは

お待たせ致しましたー


ブラックサンタクロース編終了

 日本に来ると、いつになっても新たな馳走と巡り会える。


 ブラックサンタクロースは、楽庵(らくあん)で新たに巡りあった料理……クリームシチューを使った『ドリア』を店主の猫人に出されてから、思わず子供のように器を覗き込んでしまった。



(これが……ドリア?)



 故郷でも現世では聞いたことはあったが、随分とチーズの焦げ目とクリームシチューのクリーミーな香りが絶妙な逸品。あしらいの乾燥パセリの刻んだものが美しく映えていた。


 シチューの時とは違い、金属製のスプーンでチーズの層を割ると……すくい上げた部分からチーズが伸びた。シチューが蕩けていく。米は、日本特有のオムライスの中身と同じ。


 せっかくだから、熱々のうちにいただこうと……ブラックサンタクロースは息を何度か吹きかけてから口に入れた。シチューの時よりもさらに熱く、座敷童子の隣でもくもくと食べている人間の女性も、また口をハフハフとさせていた。


 それくらい熱く、かつケチャップで味付けした米の塩気と酸味に甘み。それらが、チーズとクリームシチューと合わさるとまろやかになっていくのだ。味付けした米など、煮込み料理やパエリア程度の認識が覆されるくらいに。まったく、日本は相変わらず食の宝庫であると認識せざるを得ない。



「あっ……ちゅ、けど……美味しい!!」



 気分はもう完全に落ち着いているようだ。店主の作る料理を一心に食べ進めていくあたり……ブラックサンタクロースの心配もする必要はなそうだ。


 少し冷めさせながらも、ドリアを食べ終えてから……人間の女性、湖沼(こぬま)美兎(みう)は店主の火坑(かきょう)から出された紅茶でひと息吐く事が出来ていた。



「ほんと……いつも美味しいです!」



 そして、ブラックサンタクロースが(さかえ)の街並みで見かけた青白い顔はどこにも見受けられなかった。



「顔色良くなったわね、美兎?」

「うん。火坑さんのお料理でもう大丈夫!!」

「無理はしないでくださいね? 今日のイルミネーションはやめておきましょうか?」

「え……あ」



 火坑が提案した内容に、美兎は過呼吸の時とは違う意味で青白くさせてしまった。たしか、サンタクロースの方から聞いてはいたが、火坑と一緒に栄のイルミネーションを観に行く予定でいたらしい。


 だが、美兎の体調はまだ本調子ではない。無理に行って、また悪化させたらせっかくの休暇の意味がないのだ。たとえ、想う相手とのデートをキャンセルしてでも優先した方がいいだろう。



「みーう? 行きたいのはわからなくもないけど、クリスマスは終わってもまだシーズンはシーズンだし……それか週末にある界隈のイルミネーションにしたら?」

「? ここにもイルミネーションがあるの?」

「ちょっとね? それなら大将もわざわざ人化しなくて良いでしょ?」

「ええ。もし美兎さんがよろしければ」

「! 行きたいです!」



 真穂まほの機転のお陰で、美兎が悲しくなる事は避けられた。であれば、ブラックサンタクロースもサンタクロースが依頼してきた一件を遂行するまで。


 少し温めになったほうじ茶を煽ってから、服のポケットに入れていた財布から適当に日本円のお金を火坑に差し出した。



「僕は違うからね? 君達はまだゆっくりしていきなさい?」

「お、お世話になりました!」

「なーに。爺さんにはまだ仕事があるからね?」

「?」



 店から出る前に、美兎の頭を軽く撫でてから一度火坑の方を見る。こちらの意図が読めたのか、遭遇した時よりかは落ち着いた表情をしていた。


 ブラックサンタクロースは楽庵から去って行ってからは、まだ名古屋の街にいるであろう……美兎が『たくや』と呼んだ人間のところまで術を使ってひとっ飛びした。


 彼はコンビニ前の喫煙スペースで適当にタバコを吹かしているところだったが。他に誰もいないので好都合。美兎のように、見鬼(けんき)の才もないのでブラックサンタクロースの姿は見えていないはず。ブラックサンタクロースはサンタクロースのように担ぐ白い大きな袋の入り口を、『たくや』の方に向けた。



「聖なるものには、聖なるものを。悪には悪を」



 袋から出てきた、黒いモヤが『たくや』の顔を包み込んで行く。途端、彼はタバコを落としてしまい、身体はコンビニの窓部分にもたれた。そして顔色は、美兎が彼を見た時以上に青白く。



「死にはしない。だが……我らが愛しいあの子を苦しめた罪は重い」



 悪には悪を。それがブラックサンタクロースなのだから。

次回はまた明日〜


新章に突入しまふ

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