第3話 ブラックサンタクロース
お待たせ致しましたー
聞いたことのない名前だ。
サンタクロースには似ているが、昨夜栄の上空をソリで駆けていたあの老人とはだいぶ違う。老人と言うよりは中年より少し上くらい。背筋もピンとしているし、顔つきもかっこいい男性でしかない。
何より服装が違っていた。名前の通りに、黒い色の服を着ているサンタクロースだなんているだろうか。
ブラックサンタクロースと呼んだ、座敷童子の真穂は子供サイズから美女に変身してから、美兎を彼から奪い取るように抱きついた。
「何よ、何? わざわざ日本に来てまで仕事しに来たわけ??」
「そう邪見にしないでくれないか? あいつとは別に、こちらのお嬢さんの手助けをしようとしてただけだ」
「手助け……ですか?」
「ああ、そうとも。改めて、僕はブラックサンタクロースと言う」
「サンタ……さん、ですか?」
「君ら人間が認識している彼とは違うね? 僕は……悪を懲らしめる存在だ」
「サンタさんなのに?」
「美兎、ナマハゲ知ってる?」
サンタの話をしていたのに、真穂がいきなり物騒な話題を振ってきた。知っているつもりではあるが、にわかな知識でしか知らない。頷くと、真穂はケラケラと笑い出した。
「?」
「ナマハゲとも違うけど。こいつは、御大との対なのよ? 良い子にプレゼントを贈るのが通常のサンタクロースなら……こっちのサンタは悪い子供なんかを懲らしめる存在。世界各国に、似た伝承が多いとされてるわ」
「はは。そんな大した奴ではないがね? とりあえず、診療所に行こうか?」
「あんたが抱えるの?」
「それくらい、お安い御用さ?」
と言って、美兎をひょいと抱えた途端。
前方で、ドサっと何かを落としたような音が聞こえてきた。
なんだろうと、全員で振り返れば……口をぽかんと開けた猫人の火坑が大きな買い物袋を落としていたのだ。
「美兎……さん」
久しぶりに会う火坑の表情は、人間の顔ではないのにどこか青ざめているようにも見えた。どうしたのだろうと思っていると、ブラックサンタクロースが何故か美兎を地面にゆっくりと降ろした。
「おやおや、騎士は既に居たようだね?」
ブラックサンタクロースの言っている意味がわからず、首を傾げていると……火坑から息を呑む音が聞こえてきた気がして、また美兎は振り返った。火坑は咳払いをしてから、落とした買い物袋を拾っていた。
「どうも……こんにちは」
彼が軽く会釈をしてから、こちらにやって来る。その表情は少し怒っているようにも見えた。何故か、は美兎にはよくわからない。
「こ、こんにちは……火坑さん」
けど、挨拶しないわけにはいかないので、美兎は挨拶した。すると、火坑は水色の瞳をゆるく細めてくれた。
「こんにちは。……何故、ブラックさんと界隈に?」
「意味深な聞き方をするんじゃないよ? このお嬢さんは街中で倒れかけたんだ。僕の仕事前に、診療所に行こうと連れていくとこだったんだよ?」
「!? どこかお加減が!?」
「だ、大丈夫です!! ブラックサンタクロースさんのお陰で、今は平気ですし」
嘘じゃない。
あの元彼とすれ違った直後の時のような。過呼吸みたいな症状はもうない。皆にもそれを伝えたが、火坑は一度首を左右に振った。
「ですが、人間の身体は我々あやかしとは違って脆いです。すぐに、水藻さんのところへ行きましょう」
と言って、火坑が美兎の手を掴んで来たので……思わず叫びそうになったのを堪えたが。後ろにいた真穂やブラックサンタクロースには声を押し殺すように笑われてしまったのだ。
次回はまた明日〜




