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第1話 名古屋の大雪①

新章スタート‼️




 名古屋中区にある(さかえ)駅から程近いところにある(にしき)町。繁華街にある歓楽街として有名な通称錦三(きんさん)とも呼ばれている夜の町。


 東京の歌舞伎町とはまた違った趣があるが、広小路町特有の、碁盤の目のようなきっちりした敷地内には大小様々な店がひしめき合っている。


 そんな、広小路の中に。通り過ぎて目にも止まりにくいビルの端の端。その通路を通り、角を曲がって曲がって辿り着いた場所には。


 あやかし達がひきめしあう、『界隈』と呼ばれている空間に行き着くだろう。そして、その界隈の一角には猫と人間が合わさったようなあやかしが営む。


 小料理屋『楽庵(らくあん)』と呼ばれる小さな店が存在しているのだった。










 世間的にはクリスマスイブ。


 広告代理店としては、冬一大イベントまっしぐら。高級デパートの飾り付け雑用等々。新人デザイナーの美兎(みう)も現場に出撃して大忙し……のはずが。



「一面銀世界……」



 IN (さかえ)を含む中区周辺。


 滅多に降らない名古屋一帯が、先日の初雪からどか雪に変わり……豪雪地帯並みに、道路やビルに雪が降り積もってしまったのだ。


 慣れない雪景色に、最初こそは美兎も喜んだが……モニュメント設営現場はてんやわんやだそうだ。何十年ぶりの豪雪に予定していた搬入作業が出来なくなってしまったなどと。


 なので、一部運休はしているが地下鉄出勤組は無事に現場へと向かえるので。美兎や同期の田城(たしろ)真衣(まい)のように、新人は出来るだけ防寒着を着てから出動。


 会社に行かずに、直接現場のデパートに。美兎達が行った時からか少し前には、男性達が黙々と雪をスコップなどで除雪していた。



「うーわぁ?」

「大変そうだね……?」



 今から自分達もあれをやるのかと思うと、流石に気力が萎えてしまいそうだ。スキー場などの地帯であれば除雪車もあるだろうが、都会並みなこの周辺ではそんな大型車両などあるわけもなく。


 工事現場にいるような警備員は出動していても、ほとんどが手作業。美兎達も手伝うしかない。



(まあ……この大雪の理由は)



 実は、美兎も含めて一部はこの大雪の原因を知っているのだ。


 スコップを借りて田城らとトラックに積む手前まで作業をしながら、数日前の事を思い出す。


 雪女の花菜(はなな)がろくろ首の盧翔(ろしょう)と結ばれたあの日。界隈から帰る手前に、花菜と友達になったのだが……彼女からひとつだけ申し訳ないと言われたのだ。



『しょ、消滅は……避けられた、んだけど』

『うん?』



 歳の差はあれど、座敷童子の真穂(まほ)と同じように接して欲しいと言われたため、美兎は彼女に敬語で話すのをやめたのだ。



『代わりに……蓄積した冷気を外に出さなきゃいけないの』

『どうなるの……?』

『…………界隈もだけど。人間界にも、大雪が降ると思う』

『雪好きだよ?』

『けど! 大変だと……思う』



 あれだけ渋い表情になっていた意味が、よくわかった。たしかに、これは大変だけで済まない。スキー場と同じかそれ以上に、積もりに積もった雪の山。


 えっちらおっちらスコップで頑張って雪をすくっては、トラックの方に持っていくが女では大した労力にはならない。


 しかし、なにもやらないよりはいいので、田城も文句を言いながら雪を運んでいく。一時間二時間頑張ってはいたが、普段のデスクワークがメインの人間はすぐ腰にダメージを負いそうになってしまう。



「あ〜〜〜〜ん、もう疲れたぁあああああ!!」



 そして、田城はすぐに根を上げた様子だ。



「真衣ちゃん、頑張ろ?」

「美兎っち〜、なんでそんな元気ぃ?」

「私も疲れてるけど、仕事のためだし……」



 明日には、火坑(かきょう)と一緒にこの近くでのイルミネーションを観に来ようとしているのだ。


 決して、仕事優先だけで頑張っているわけではない。


 美兎とて、善意だけで動いているわけではないのである。

次回はまた明日〜

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