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第4話 あやかしとの恋愛事情

お待たせ致しましたー

 盧翔(ろしょう)が作ってくれた、マルゲリータのピザはとても美味しそうに見えた。


 実質出来立てのモッツアレラチーズを使っての、フレッシュなピザは赤のトマトソース、白のモッツアレラチーズ、緑のフレッシュバジル。


 三色のコントラストが美しく、美兎(みう)はついつい仕事のデザインについて考えてしまう。職業柄どうしようもないが。


 他にも料理は、真穂(まほ)が美兎の心の欠片を取り出してくれたからと色々出てきた。じゃがいもとベーコンのグラタンに、カルボナーラやミネストローネに……デザートも手作りティラミスを出してくれることになったりと。


 あのモッツアレラチーズを出してくれただけで、至れり尽くせりだ。それだけ価値があるからだそうだが。



「そーいや、隆輝(りゅうき)? あんたと、桂那(けいな)が付き合うきっかけってなんだったの?」

「んー? 俺とケイちゃんが知り合ったのがちょうどこの辺の界隈だったからですね?」



 隆輝はカルボナーラを勢いよく食べてから、ゆっくりと口に出してくれた。その様子に、沓木(くつき)はおしぼりで彼の口元を拭ってやっていた。見た限り、付き合いが長いのだろう。



「そうね? 私が就活で大変だった時……仕組みは今もわかってないけど、(たか)くんが道端で倒れているとこに行ったら……この辺に迷い込んでたの。そこから友達……デートを繰り返していくうちに好きになって、ゴールイン? ってとこかしら?」

「へー!」



 大雑把な説明ではあるが、沓木は美兎の二つ上だ。就活後からの付き合いと言うのならそこそこ長い。


 ならば、あやかしと人間と言う種族の垣根を越えて、互いに想い合っていると言うこと。素直に美兎は羨ましいと感じた。



「けど、桂那と隆輝はまだ(・・)のようね……?」



 真穂は綺麗にマルゲリータを食べながら、意味深な発言をした。恋愛経験の薄い美兎ですら、その発言の意味が理解出来た。



「ま、真穂ちゃん!?」

「大事な事よー? 人間はあやかしと交わるとある意味人間であったことを捨ててしまうの。けど、この二人はまだそうじゃない。桂那は普通の人間だもの」

「え?」

「それは、私からのお願いなの。ある程度、仕事も出来る様になってから……寿退社と言う形で、会社を辞めるまでは……私は人間でいたいって隆くんにお願いしたのよ」

「なーる?」

「俺もだけど、ケイちゃんにはケイちゃんの生活があるから……交われば、ケイちゃんは人間でなくなるし不老長寿になっちゃうんだ。だから、俺達はその一線を越えていない」

「……人間じゃなくなっちゃう」



 もし、火坑(かきょう)と結ばれたとしたら、美兎にもその壁がぶち当たるのだろう。数年付き合っている沓木達ですらその関係なのだ。幸せであれ、種族の壁は大きい。


 けど、でも。


 美兎にはその壁があっても、火坑を諦めるのは無理だった。



「そーよ? けど、あんたはあの大将が好きなら……告白した時に話してくれるかもしれないわ。そこがわかっても、あいつは美兎を尊重してくれると思う」

「……けど、火坑さんに好きな人が居たら」

「奪われたいの?」

「嫌!?…………あ」

「ほら、答え出てるじゃない?」

「私は応援するわよ、湖沼(こぬま)ちゃん!」

「俺も」

「ありがとうございます……」



 とは言えど、当たって砕ける勇気は持ち合わせていない。


 それだけ、あの涼しげで優しい猫の微笑みを失いたくないから……怖いから、言えないのだ。もし、拒絶されたらと思うと。



「なら、ちょいと。皆で出かけるのに誘ってみるのはどうだい?」



 盧翔が、皿を片付けに来た時にそのような提案を口にしてくれた。



「お出かけ……ですか?」

「おう。界隈でもいいが、人間界では紅葉も見所だ。名城公園とかで、紅葉狩りも兼ねてピクニックなんてどーだい?」

「この寒空で??」

「いやいや、真穂様。名古屋城周辺もいいですけど、あそこの景観もなかなか捨て難い。隆輝と彼女さんとかと一緒にダブルデートっぽくしちゃえば」

「ナイスよ、盧翔!」

「いいわね!」

「賛成ー!」

「え、え?」



 あれよあれよと、話が進んでいき。隆輝が火坑にLIMEで連絡を取ったらすぐに了承の返事がもらえたらしく。


 日取りは今週末。


 つまりは、あと三日後に、名城公園でダブルデートをすることになったわけである。


 あまりの急展開に、美兎はデザートに出されたコーヒーがよくビスケットに染み込んだティラミスをあまり味わえなかった。

次回は土曜日〜

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