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第1話 閻魔大王と第一補佐官

お待たせ致しましたー


新章スタート‼️


 名古屋中区にある(さかえ)駅から程近いところにある(にしき)町。繁華街にある歓楽街として有名な通称錦三(きんさん)とも呼ばれている夜の町。


 東京の歌舞伎町とはまた違った趣があるが、広小路町特有の、碁盤の目のようなきっちりした敷地内には大小様々な店がひしめき合っている。


 そんな、広小路の中に。通り過ぎて目にも止まりにくいビルの端の端。その通路を通り、角を曲がって曲がって辿り着いた場所には。


 あやかし達がひきめしあう、『界隈』と呼ばれている空間に行き着くだろう。そして、その界隈の一角には猫と人間が合わさったようなあやかしが営む。


 小料理屋『楽庵(らくあん)』と呼ばれる小さな店が存在しているのだった。










 赤い月夜。


 大気の影響でなるとも言われているが、妖気が高まるようになると……あの世と定期的に繋がるとされているのだ。


 その繋がりを通じて、現世にやってきたのは……。



「……久しいな?」



 豊かな長い髭に、長い艶やかな黒髪。よく梳かれているせいか、長いのに無造作にならずにゆっくりと左右に流れていく。


 装いは、スーツとかではなく、まるで中国の民族衣装のような派手な赤色の衣装である。だが、ケバく感じさせずに、男にはよく似合っていた。


 そして、その後ろの男も黒い布をベースとした着物を着ている。髭の男と比べると、白い肌が映えて髪も艶やかではあるがこちらは今宵の月とは違って、白銀に輝く月のよう。


 二人が、界隈を歩くとあやかし達は驚き、ひれ伏して道を開けていくのだった。それを見ると、後ろの男が苦笑いした。



「……霊力を抑えているとは言え、目立ち過ぎではないですか? 閻魔大王(えんまだいおう)?」



 男が、前にいる髭の男を呼ぶと閻魔大王は振り返って口元を緩めていた。



「儂が可愛がっていた猫が美味い馳走を振る舞うのじゃぞ? それと、気になる噂もある」

「まあ、それはそうですが」



 これから向かう場所。


 閻魔大王のような大柄な体格ではなんとか入るくらいの、小さな店。


 だが、二人が向かう場所はそこだ。間違ってはいけない。あの世の裁判を一時止めてまで『行く』と言い出したこの大王の望みを、第一補佐官である亜条(あじょう)が止められるわけがない。


 角を二回曲って、たどり着いた先には……小さな『楽庵』と書かれた雑居ビルの一階の店が見えてきた。



「おお、見えてきた! 二十年ぶりか!!」



 あの世なら大した年数ではないが、現世にとっては長い年月に変わりない。


 閻魔大王が店の引き戸を引くと、中からほんわかと出汁のいい香りがしてきた。



「いらっしゃいませ、お待ちしていました」



 のんびりとした、だが温かみのある男の声。


 閻魔大王が中に入ると見えてきたのは、二十年経っても変わらない見た目の、猫人の店主が深々とお辞儀をしていた。



「久しいな、火坑(かきょう)!」

「お久しぶりにございます、閻魔大王。それに先輩」

「本当に、久しぶりですね。火坑」



 かつて、亜条の後輩であり同じ補佐官仲間だった猫人。


 今では、相変わらず立派に小料理屋を切り盛りしているようだった。

次回は日曜日〜

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