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第4話 あやかしの親子

お待たせ致しましたー

 母が来てくれた。


 絶対怒られるだろうと思って、子供椅子から下りてじっと待った。すると、ピンク色のぞうさんみたいなあやかしにぺこぺこと謝っていた母の灯里(あかり)は……灯矢(とうや)の前に立つと強く抱きついてきたのだ。



「おかあ……さん?」

「…………大将さんに聞いた時は驚いたわ。あなたが単身でこの辺にまで来るだなんて。今までそんな事しなかったじゃない」

「……ごめん、なさい」

「怒りたいけど……ちゃんと謝れたのなら良いわ。伯父さんはどうしたの?」

「……お昼寝してた」

「…………兄さん」



 正直に話すと母は怒ってはいなかったが、ひどく心配してくれていたようだ。灯矢も逆を考えれば同じだ。いかに、今回自分がいけないことをしたのかよくわかり。もう一度謝ってから、母には強く抱きしめられた。



「お母さんが来てくれてよかったね?」

「うん! お姉さん、ありがとう!」



 ここに来れたのは美兎(みう)達のお陰なので、灯矢は強く頷いた。


 灯里が灯矢の首元から顔を離すと、すぐに美兎の方に振り返り隣に座っていた真穂(まほ)を見ると……床の上で土下座したのだった。



「ま……真穂様まで! ありがとうございました!!」

「そんな土下座なんていいわよ? こいつを見つけたのは美兎なんだから」

「みう……さんが?」

「そ。真穂が守護に憑いている人間」

「……噂では、そのようにお聴きしましたが」

「そう。それがこの子」

湖沼(こぬま)美兎です。改めて、はじめまして」

「はじめ……まして、灯矢の母である灯里……と申します」



 真穂と言うあやかしは、あやかしの中でも凄い存在なのだろうか。十八歳であれ、心も体も幼い灯矢にはそれがよくわからない。


 かつて、母を筆頭に殺してしまった灯矢の元両親達には何も教わらなかった。礼儀も作法も、食事の仕方も服の着方も……名前すら与えられなかったのだから。


 けれど、灯里と出会って、親子というか家族になってくれたことで得られたものはあった。だから、息子としてその母よりも偉い人らしい真穂にも御礼を言う事にした。



「真穂さま、ありがとうございました」

「別にいいわよ? 無理に敬語も良いし」

「ほんと?」

「こら、灯矢!?」

「まーまー子供だし、いいわよ? とりあえず、宝来(ほうらい)も一緒に座ったら」

「……はい」

「へー、真穂様」



 とりあえず、灯里もだが宝来と言うぞうさんに似たあやかしも一緒に座ることになった。そのせいで、席は満杯である。



「灯矢、何を食べていたの?」



 重箱の中身は既に空になっていたので、灯里が不思議そうに聞いてきたのも仕方がない。


 灯矢は素直に答えることにした。



「あなごてんじゅーだって!」

「あら、穴子を……天ぷらに?」

「はい。灯矢君から心の欠片をいただきましたので、そちらで天丼のようなものを」

「……そうですか。ありがとうございました」

「いえいえ。良い心の欠片だったので、うちには大助かりです」

「あら」



 真穂が、灯矢が元人間だったので役に立てたらしいが。灯矢はまだ割り切れていない部分があった。


 灯矢を四六時中虐待し続けて、挙げ句の果てに灯里に見つかって殺されたのだから。彼らが死んだのは、今となってはどうでも良いが。まだ、彼らと少しでも繋がりがあるのが悔しく思ったのだ。


 もう人間ではないはずなのに、あやかしとしての種族もだが完全に灯里の息子でない事が。けれど、今回はその事で灯里の役に立てた。複雑ではあるが、今は良しとしておこう。



「あ、火坑さん。私も心の欠片を」

「はい、いつもありがとうございます」



 美兎も差し出すようで、火坑の目の前に両手を差し出した。ぽんぽんと猫のようで違う手が彼女の手のひらの上で叩き、一瞬だけ光ると何もなかった美兎の手のひらの中には緑の葉っぱに包まれた何かが出てきた。



「しめ鯖にしましたので、こちらを炙って握りにしましょうか?」

「わあ!」

「賛成!!」

「美味そー!!」

「しめさば?」

「伯父さんがたまにお酒と一緒に食べているお魚よ?」

「へー!」



 大人ではないが、少し大人の気分を味わえるかもしれない。


 灯矢の期待は高まり、料理が出来上がるまで火坑がオレンジジュースを出してくれたので、のんびりと飲みながら待つ事にした。

次回は金曜日〜

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