第4話 それから変わったこと
お待たせ致しましたー
楽しく過ごした……火坑の誕生日から、約五年。
新人から少しベテランとなった、湖沼|美兎は二十八歳に。仕事も順調でデザイナーでもチームリーダーを任されるくらいとなったのだ。
「はい……はい! かしこまりました。では、また来週に」
今日も今日とて、いい成果が得られたのか。サブリーダーになった田城真衣が電話を切った後に……美兎へと親指を立てた。
「どうだった!?」
「やったよ、美兎っち!! 先方がうちと年期契約したいって!! この間、皐月ちゃん達に任せたデザインが好評だったんだってさ!!」
「やったやった!!」
「マジっすか、リーダー!!」
先輩達からの指導が離れても、きちんと自分の仕事が出来てきて部下の育成も同じように順調。
ひとりで突っ走るだけでなく、同じように共有し合えるのもひとつの仕事の形だと……美兎は様々な人と関わり合うことで学んだ。
人間だけでなく、あやかし達からも。
ここにいる美兎と真衣は、それぞれあやかしの恋人がいるからだが。
「美兎っちは、今日も楽庵行くの?」
「うん。真衣ちゃんは??」
「んふふ〜、侑さんとカリパーするのさ!! 今日はオール出来るしね!!」
「金曜日だもんね?」
お互い、付き合いはそこそこ長いのに大人としての交際については……美兎も火坑とは未だにキス止まりだ。
身近で、最近その垣根を越えたのは……一年前に寿退社した沓木だけ。姓は隆輝の人間名通りに相楽を名乗っている。
今ちょうど、妊娠期間中だ。
「近いうちに、先輩んとこにも遊びに行きたいね?」
「そうだね? LIMEで連絡しようか?」
「そーしよー」
仕事の方は、急ぎがなければだいたい定時を少し過ぎるくらいには終わるのが普通になってきた。美兎も努力したが、その土台作りには沓木が頑張ってくれたのだ。サービス残業などもっての外、搬入立ち合いも出来るだけ女性が担当しないようにと。
繁華街が多いこの中区では、特に女性はつけ狙われやすい。あやかし事情も知っていたため、余計に力を入れてくれたのだ。
その基盤のお陰もあって、西創は過ごしやすい企業としてよく雑誌などにも取り上げられている。ここを見習って、より良いものにしようと言う企業も少しずつ増えてきた。
なので、美兎も入社当初感じていたがむしゃらに働く気分を……新人にも味合わせたくなかったので、研修では助けて上げたのだ。
その甲斐もあり、今の位置へ昇進したわけである。
(……今日は、何が食べれるかなあ?)
けれど、変わらないことはあった。
恋人であるあの猫人が振る舞う料理を、いつも楽しみにしていること。心の欠片である魂の断片も……惜しみなく、彼に提供出来ているのだ。
彼の方では、ほんの少し変わったことは出来たが。
次回はまた明日〜




