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第1話 尽くされるにしても

お待たせ致しましたー


 名古屋中区にある(さかえ)駅から程近いところにある(にしき)町。繁華街にある歓楽街として有名な通称錦三(きんさん)とも呼ばれている夜の町。


 東京の歌舞伎町とはまた違った趣があるが、広小路町特有の、碁盤の目のようなきっちりした敷地内には大小様々な店がひしめき合っている。


 そんな、広小路の中に。通り過ぎて目にも止まりにくいビルの端の端。その通路を通り、角を曲がって曲がって辿り着いた場所には。


 あやかし達がひきめしあう、『界隈』と呼ばれている空間に行き着くだろう。そして、その界隈の一角には猫と人間が合わさったようなあやかしが営む。


 小料理屋『楽庵(らくあん)』と呼ばれる小さな店が存在しているのだった。








 翠雨(すいう)達と名古屋港で別れた後。


 美兎(みう)火坑(かきょう)はUターンして、栄に戻ってきた。せっかくだから……と美兎の服選びをしたいと火坑が言ってきたからだ。



「いいんですか?」

「僕が見たいと言う本音もあります」

「そうかもしれないですけど……」



 いくら、美兎が定期的に売り上げに繋がる『心の欠片』を提供しているとは言え、美兎も社会人二年目になったから給料はほんの少し上がった。


 仕事でのフォーマルスタイルな服装も、定期的に購入出来ている。なのに、火坑は自分のわがままだからと美兎の服を買ってあげたいと言うのだ。



「考えてもみてください。僕の選んだ服を美兎さんが着る……と言うことは、これまで以上に美兎さんが僕の恋人だと特に界隈ではアピール出来るんです」

「? する必要があるんですか?」

「……あなたは、もう少しご自分の魅力を理解してください」

「そうですか?」



 たしかに、今は恋人がいる吸血鬼のジェイクには、酔っても言い寄られたりはしたが。別段、それ以降はあやかしの男性から声をかけられることはなかった。


 座敷童子の真穂(まほ)がいてくれるお陰もあっただろうが、美兎自身はそこまで異性からモテる対象だとは思っていないのだ。


 少し首を傾げると、響也(きょうや)の姿でいる火坑は苦笑いになった。



「まあ、とりあえず。金額は気にしないで選びましょう? これから秋ですが、涼しい恰好のものはまだあまり出回っていないようですね?」



 デパートのひとつに入り、ブティックなどのフロアに行けば火坑はそのようなことを言い出した。事実、八月に入ったばかりだからか、あまり秋物は出揃ってろっていなかった。



「……ひ!」



 けど、可愛いなとか、似合うかなとか思いながら……ブラウスをひとつ手に取ったら、値札の表記が普段美兎が着ている物の、三着分の値段になっていた。



「どうされましたか?」

「き、ききき、響也さん?! こ、こんな高い物……流石に!!」

「え? 大丈夫ですよ? お金はご心配せずともちゃんと用意していますから」

「そうじゃなくてぇ!?」



 今日は、一応は火坑の誕生日も兼ねてのデートだ。


 プレゼントはささやかながらも、美兎は用意してきたものの……ここいらの服を数着買ったところで適う値段ではない。


 誕生日は自分にではなく、両親や親しい相手に尽くすとも言われているが……祝う相手に尽くされるのは。非常に申し訳なく感じた。


 とは言え、この服選びは美兎の防護策にためでもあるらしいが。


 ちょっと、美兎が悶々としていると……火坑はこれとこれはどうだろうか、と美兎に勧めてきた。どちらも大変に可愛らしく……美兎の心の欲しいメーターを震わさせたのだった。

次回はまた明日〜

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