表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/204

第4話 マンボウで料理

お待たせ致しましたー

『魚類でも、サメの肉よりマンボウの料理が食べやすいんですよ?』


 美兎(みう)はデート途中……彼氏であるあやかしの火坑(かきょう)の口から……マンボウが食べられる食材にもなると聞いて、気になってしまった。


 一緒に水族館を回っている、本性は烏天狗の翠雨(すいう)も……どうやら食べたことがあるらしいし。その彼女である、栗栖(くるす)紗凪(さな)は食べたことがないらしいが。


 まだ美兎も食べたことがない、海のパイナップルとも言われている『ホヤ』も珍味だとは聞くが。


 今向かっているレストランには、あるのだろうか。


 あったら頼んでみようと思い、席に着いてから火坑に渡されたメニューを広げたのだが。ごく普通のファミリーレストランにあるようなメニューしかなかった。



「美兎さん、どうされましたか?」



 火坑が心配そうに声をかけて来てくれたので、美兎は正直に話すことにした。



「……響也(きょうや)さんが言っていた、マンボウがあるかなって思って」

「! ふふ。マンボウは扱いが難しいですからね? 通常の飲食店ではあまり出回っていないんですよ」

「……そうですか」

「じゃあさ? かきょーさんのお店に行けば食べられるの?」

「どうでしょう? 柳橋で卸しているのが有れば、仕入れますが。一度業者さんに聞いてみますね?」

楽庵(らくあん)でですか!」

「都合がつけば……ですが。仕入れが出来たらご連絡します」



 嬉しい。美兎のわがままでしかないのに、わざわざ仕入れてくれるなんて。


 どんな料理になるか今から楽しみであるが、とりあえず小腹が空いてきたのでメニューを改めて見た。



「……(それがし)、近いうちに紀伊(きい)に行く機会があるでござる。ならば、某が持って来ようか?」

「え、すーくん。三重に行くの?」

「少々所用があるだけだが」

「……いいんですか?」

「構わない。が、ひとつ頼みがある」

「なんでしょう?」



 マンボウが食べられるかもしれない。


 その事実に胸が躍ってきたが、翠雨の言う条件とはなんなのか。美兎も気になったので、じっと待つことにした。



「……マンボウを使ったカレーを所望したい」

「カレー、ですか?」

「あっはは! すーくん、カレー大好きだもん!」

「! なるほど。僕の店ではわざわざ仕込みませんしね?」

「マンボウでカレーって出来るんですが?」



 まず、どんな味なのかがわからない者には想像がつかない。火坑からマンボウの話題が出た時に、翠雨の口から鶏肉のような味だと聞かされていても、実際に食べてみないとわからないから。


 なので、美兎が質問すると彼は小さく頷いた。



「左様。あちらの地元では店などでよくあったりもするが、海沿いでしか提供はないでござるな? レトルトでも販売はあるが、某は店で食べる方が好きだ。カツカレーは絶品でござるよ!」

「カツ?」

「ステーキ、串焼き。フライに竜田揚げもあります。地元ですと、腸の刺身もあったりするんです」

「竜田揚げ!? 唐揚げの部類も出来るのでござるか?」

「あのー」



 話が盛り上がってきたところで、お店のウェイトレスから声をかけられたのだ。



「はい?」

「お話中のところ申し訳ございません。ご注文は大丈夫でしょうか?」

「あ!」

「すみません! すぐに選びます!」

「私、海鮮丼のセットで!」

「そ……俺はカツカレー、大盛りで」



 翠雨の貴重な一人称も聞けたが、美兎は和風おろしハンバーグ。火坑は鶏肉のトマト煮を選んだのだった。



「先に頼んでたらよかったよねー?」

「ごめん。……私がマンボウの話題出したから」

「いいっていいって! すーくんの好みがまたひとつ知ることが出来たんだもん! 美兎ちゃんやかきょーさんには感謝だよ!」

「…………その時同行するでござるか?」

「いいの!?」



 やったー、と紗凪は翠雨の懐に飛びついて行った。彼女の勢いも凄かったが、慣れている翠雨もしっかり受け止めていたので凄いと思った。


 美兎は、まだ火坑に対して気軽に好き好きとアピール出来ない。初心と言う年頃ではないのだが、気軽に触れ合うような大胆さを持ち合わせていないのだ。


 だから、ひょっとしたら、その臆病さで過去の彼氏にも暴力を振るわれたかもしれない。


 火坑は絶対違うと信じていても、その不安は簡単に拭えなかった。去年、一度切りだが……拓哉(たくや)とすれ違っただけで、あのようにトラウマが出てしまうのだから。



「お待たせ致しました。お先にカツカレー大盛りと和風おろしハンバーグです」

「……ああ」

「あ、ありがとうございます」



 先に美兎と翠雨の注文が届いてきたので、火坑と紗凪には食べなよと言われたから食べることにした。味はやはり火坑とは比べ物にならないが、ファミレスレベルならまずまずだろう。


 だがしかし。


 翠雨のカレーに対する情熱が凄いのか、彼は物凄い勢いで食べ進めていた。



「……お待たせ致しました。海鮮丼のセットと鶏肉のトマト煮です」

「はいはーい! 私が海鮮丼」

「ありがとうございます」



 紗凪は慣れているのが全く動じていなかった。火坑もそうなのか、いつもどおりでいたのだ。


 美兎も、ちょっとのことで動じないようにしようとは思うが。無理かな、と諦めるのだった。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ブラックサンタクロース 『トラウマに再会』回で元彼の名前を「たくみ」と呟いていますが「拓哉」が正しいのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ