第3話 楽庵で再会
お待たせ致しましたー
まだ気にはなっていたが、真穂の言う通り心配し過ぎも良くないだろう。
珠洲を助けたことで仕事は遅れたが、まだ許容範囲だった。むしろ、上司には緊急事態でも良く対処出来たとも褒められた。
美兎は大したことをしていないのに、と思ったが。沓木には素直に受け取っておけと言われた。とりあえず、定時を少し過ぎたくらいに仕事は終われたので。
当初の予定通りに、楽庵に行くことにした。
手土産はいつものrouge。季節のフィナンシェがあったので、隆輝に頼んで包んでもらい。
界隈に通じる小道を歩いたら、歩いて歩いて火坑がいる楽庵にと到着した。
真穂は今日海峰斗と会うのでここにはいない。だが、美兎には様々な加護があるので、あやかし達は不用意に近づいて来ないのだ。けれど、顔見知りになった一部は美兎を見ると気さくに挨拶してくれる。
「こんばんは〜」
美兎が中に入ると、先客がいたのが見えた。
途端、のっぺらぼうの芙美もだが。あの百目鬼と言うあやかしの珠洲も。カウンターの席に座っていたのだ。
もう顔色は良かったが、まだ回復したてだからか酒ではなく、湯呑みでお茶を飲んでいた。
「いらっしゃいませ」
「美兎ちゃん! 昼間はありがとう〜〜!! 珠洲ちゃんもう完全回復だよ!!」
「ふ、芙美さん……!」
「……良かったです」
危うく力が抜けそうになってしまったが、珠洲が席を立ったのでシャキッとした。
「……あの。お礼にと思って……」
差し出されたのは、美兎が今手にしているのと同じrougeの紙袋。おそらく、情報屋でもある芙美が教えたのだろう。美兎がここの店のお菓子を良く買うのだと。
少し嬉しくなり、火坑に先に手土産の方を渡してから受け取った。中身を聞くと、マカロンシリーズらしい。
「昼は……本当にありがとうございました。まだ名古屋に来たばかりで……あんなにも暑いだなんて知らなくて」
さっきも思ったが、珠洲は背も高いし綺麗なストレートヘアだが、声は芙美よりも可愛らしかった。腕の目には驚いたが、今は長袖で隠れているので少し安心した。まだ全部ではないが、妖に慣れたわけではないのだから。
「いえ。無事で良かったです。改めて、湖沼美兎です」
「!……百目鬼の、珠洲……です。四国から来ました」
「わあ! 四国ってまだ行ったことないです!」
「温暖ですけど……ここみたいに凄い日差しじゃないので、過ごしやすいです」
「けど、名古屋に?」
「……こんなのですけど。一応人間達に混じって生活してるので。……仕事は、ドラッグストアの店員です」
「そうなんですか?」
とりあえず座ろうと、珠洲と美兎は隣同士で座ることになり。
年齢差はともかく、意外に話しやすかったのでだんだんと敬語も外れていき、真穂や花菜のように友達になれたのだった。
「じゃ! 親交も深まったし、今日は食べて飲もう!」
「芙美さん、珠洲ちゃんはまだ無理じゃ?」
「あ、そっかぁ? じゃ、食べまくろう!!」
「ふふ。僕の料理でよろしければ」
「あ、心の欠片出します?」
「お願いしますね?」
今日出た心の欠片は。
自然薯、と言う山芋の一種だった。美兎には馴染みがなかったので、見分けがつかないが。
「自然薯! 天ぷらも美味しいんですよね!!」
珠洲は大好物なのか、はしゃぎ出したので。せっかくだから、と火坑はその天ぷらを作ることになったのだった。
次回はまた明日〜




