第4話『山菜の天ぷら』
お待たせ致しましたー
ほうじ茶で胃を温めていると……霊夢は何かの天ぷらを出してくれた。
「山菜……ですか??」
同じ種類ではなく、美兎も見たことがあるものからそうでないものまで。先端が丸いものは、たしか『わらび』だったような。
「おお。四月から旬の山菜が柳橋でも取り扱っているからなあ? ちょいちょい仕入れているんだ。ま、足が速いからおひたし以外じゃ……天ぷらにすることがうちでは多い」
「いただきます」
山菜だなんて、火坑の店でも時々は出ているが……美兎はそれまで、蕎麦屋などで少量しか添えられていないものしか食べていなかった。
大きさも段違い。この天ぷらもだが、小料理屋で食べれる山菜は大きい。栽培のよりも自然に生えているのを、専門家が採取しに行くと……前に火坑には聞いていたが。
味付けは、添えられていたピンク色の岩塩だったので、軽くつけてから口に運べば。
(あっつ!!?)
やけどしそうなくらいに熱かった。
やはり、目の前で調理する分……出来立てを食べられるからだろう。霊夢に水はいるかと聞かれたが大丈夫だと答えてから、今度は息を吹きかけて口に入れてみる。
くにゅっとした食感しか、火坑の店で食べる前では知らなかったのだが……サク、トロッと茎の部分からわかる食感が楽しい。味付けも塩だけだが、それでも十分。
逆に天つゆで食べると、これは邪道に思えてくるくらい。
それだけ、楽庵に通い慣れて来たお陰か、舌も随分と肥えてきたものだ。
「美味いか?」
霊夢はほとんど顔に出ている美兎の反応を見て、ニヤリと口端を上げていた。
「美味しいです! 山菜がこんなにも美味しいだなんて!!」
「昔はおひたしとかが多かったが……天ぷらはまだ最近。洋モンにしたいなら、サンドイッチやパスタにも出来るぜ?」
「サンドイッチ……に、パスタですか??」
「おう。今日のは違うが、東北地方だと時々あるそうだぜ?? 採れたて、香りが段違いにすげぇのだと大量に使うためにそう言う食べ方があるらしい」
「へー?」
霊夢はわからないが、火坑は作ってくれるだろうか。いや、美兎が頼めば作ってくれそうだ。こんにゃくとキノコ以外……彼はなんだって、美兎の好物を作ってくれるのだから。
「とりあえず……その月虹の欠片。大事にとっとけ? 何か重要な時に使う方がいいかもしれねぇ」
美兎が天ぷらを食べ終える頃に、霊夢がカウンターに置きっぱなしにしていた例の玉のことを指した。
「重要なこと……?」
「自分でも他人でも、使うのはお嬢ちゃんの自由だ。だが、間違った使い方は良くない。雨女はあやかしだが、天候を操ることで神のような扱いを人間達にされている。……そいつが、息子のためとは言え人間にそれを与えた。奇跡みてぇなもんだからな??」
「……はい」
「ま。火坑にも言いたきゃ、そろそろいいだろ。柳橋から戻ってるかもしれねぇ」
「あ、お会計……」
「いいっていいって。山菜もまかない用だったんだ。いつかの娘に親として作ってやったと思ってくれ」
「は、はい……」
先程、火坑の親代わりの話を聞いたばかりなのに、娘と呼ばれると胸の奥がくすぐったい感じになった。
次回はまた明日〜




