表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/204

第2話 養父との再会

お待たせ致しましたー

 (さかえ)の界隈に、昼間から行くのは久しぶりだったが。


 美兎(みう)は、楽庵(らくあん)に到着すると……貼り紙を見て、少しガッカリしてしまった。



『仕入れのため、少しの間不在です』



 昼間は仕込みをしていると、以前火坑(かきょう)から聞いてはいたのだが……まさか、今仕入れに出かけているとは思わなかった。


 手土産も途中で用意したのに、どうしようとLIMEで連絡しようかどうか悩んでいると……後ろから、肩にぽんぽんと誰かから手を置かれた。



「久しぶりじゃないか、お嬢ちゃん?」



 魅惑的過ぎる低音ボイス。


 まだ数回程度しか聞いたことはないが、間違えようがない。


 腰砕けになりかけたが、気合いを入れて振り返れば……真っ黒な毛並みに覆われた豹のようなあやかしが立っていた。



「こ、こんにちは……霊夢(れむ)さん」



 美兎の恋人である、火坑にとっては料理の師匠でもあるが……同時にあやかしとしての育ての親らしい。らしいと聞いたのは、あまり火坑が自分の過去について話さないからだ。


 嫌がっている風はないが、基本自分については自慢するようなことがないので。


 とにかく、久しぶりに会う霊夢に対して、美兎は軽くお辞儀をした。



「よぉ? 火坑の奴に会いに来たのか??」

「……はい。ちょっと相談に乗っていただきたくて」

「相談??」

「えっと……」



 道端で話せる内容ではない。


 霊夢に雨女からもらった玉のことは打ち明けてもいいだろうが、こんな往来であの貴重な玉を見せびらかしてはいけない。


 あやかし事情に詳しくない美兎ですら、そう思うくらいバックに入れてあるそれを出そうか迷ったのだ。



「……お嬢ちゃん、うちの店に来な?」



 美兎が『あー』とか『うー』などと言っていると、霊夢が今度は頭を軽く撫でてくれて……ちょいちょいと毛に覆われた人間のような手で手招きしてきた。


 少し驚いたが、美兎は反射で頷くと彼の後をついていく。


 然程、離れていない楽養(らくよう)にはすぐに着き……ただ、蘭霊(らんりょう)花菜(はなな)はいなかった。



「花菜ちゃん達は……??」

「今日はうち休みなんだ。俺は、ここの二階に住んでっから……まあ、常時いるんだよ」

「……なるほど」



 テレビ番組とかでも、人間が店の建物の二階などに居住しているのは聞いたことがある。なら、霊夢も同じと言うことか。



「んで? お嬢ちゃんは、火坑に何を相談しようとしてたんだ??」

「……聞いてくれるんですか??」

「つーか。ちぃっと、レアな気配してたんでな?? 心の欠片以上のもんだ。狙おうとしてた連中もいなくねーから、ここに連れてきた」



 とりあえず、カウンターに座れと促されたため、美兎はバックの中に入れていた……布で壊れないようにくるんだ虹の玉を霊夢の前に見せた。



「……去年、雨女さんにいただいたんです」



 布を丁寧に取り払うと……家で見た時よりも神々しく輝いた、虹の玉の光が店中に広がった。



「……雨女の作れる、月虹の(ぎょく)か。どう言う経緯で手に入れたんだ??」

「実は……」



 簡単に去年、灯矢(とうや)を保護した御礼にもらったことや使い道を説明すると……霊夢はかかっと声を上げて笑い出した。



「なるほど。雨女にはお見通しだったが、お嬢ちゃんはその使い道に使わなかった。んじゃ、好きに使うにも……火坑に聞こうか悩んだってとこか??」

「だいたい、そう……です」

「望みが叶っているんなら……そりゃ、悩むか??」



 欲がないなあ、と霊夢が柔らかく微笑むものの。美兎にも、望みは多少あった。


 だが、それは美兎があやかしと人間の垣根を越えてしまうことになる。まだまだ仕事を続けていきたい望みもあるので……男女の一線を越えたい望みは、叶えてはいけないのだ。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ