第4話『蚕豆とタケノコのピラフ』
お待たせ致しましたー
そして、馳走の方はすぐに出てきた。
「……ほう??」
緑に薄白の組み合わせ。
それらは米の中に混在していて、それぞれの色を引き立てていた。大ぶりの緑は豆だが、道真が知る豆の中ではほとんど口にしたことがない。
薄白の方は、形が様々であるがすべて薄切り。ギザギザのものもあれば、単純に細長いものもあったりと。他にも具材はいくつかあるが、そのふたつが異様に目立っていた。
「旬のタケノコと、蚕豆のピラフです」
火坑が説明してくれたが、タケノコはともかく、蚕豆とやらはやはり聞き覚えがない。平安の世にもあったかどうか。もしあったかとしても、平民らが口にしていたくらいか。
「おー? 蚕豆をピラフにか? 粋なはからいじゃねぇか」
元狗神の蘭霊は、今は料理人であるため口にしたことがあって当然か。レンゲですくうとすぐに口にした。弟弟子でも、師から暖簾分けした猫人の腕前を認めているのだろう。
咀嚼した後、すぐに口端を緩めた。
「お粗末様です」
「味付けはチキンブイヨンか? 道真には新しい味付けだな?」
「コンソメよりは、蚕豆などには合うかと」
「だな?」
久しい、元飼い猫だったあやかしの料理。その美味さを蘭霊がそれだけ評価しているのだから、きっと美味に違いない。道真もレンゲですくい、すぐに口に入れる。
「……うん。美味しい」
現世の日本が他国の料理を取り入れる風潮が強くなったため、道真が奉られている社などでは菓子や奉納品なども多種多様になってきた。
普段、食事などは必要ないとは言えたまには食べたくなるものだ。千年以上の年を経て、元飼い猫だったあやかしの料理でそれらを口にする機会もそうそうない。
しかしながら、米を炒める味付けは悪くなかった。食べたことがあるようでない味付け。だが、塩気が程よく豆のほくほく感とタケノコ独特のシャキシャキした食感が……実に楽しい。
米の柔らかさと握り飯などでは食べない味付けは……初めてなのに、不思議と受け入れることが出来た。ひと口……またひと口と口に入れて行くのが楽しいのだ。やはり、この猫人の料理は美味揃いだ。
生前だったら考えられないくらい……不思議な縁が現世に続いたが。この世も面白いと思える。
これに、梅酒も意外と合うのも面白い。
「お次は、鯛の煮付けです」
洋物の次に和とは。
組み合わせが実に面白いが、これは熱燗が欲しい逸品。
火坑に頼んでから、道真は蘭霊と箸を伸ばすことにした。
(……この甘辛さに、身の締まり具合)
神に献上する逸品として、市場などで奮発してくれたのか。程よい甘辛い味付けに、ほろほろとほぐれていく魚の身は酒が進んでしまうだろう。
蘭霊は二合目。道真も一合を空にするのはあっという間だった。
次回は水曜日〜




