表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/204

第4話『蚕豆とタケノコのピラフ』

お待たせ致しましたー

 そして、馳走の方はすぐに出てきた。



「……ほう??」



 緑に薄白の組み合わせ。


 それらは米の中に混在していて、それぞれの色を引き立てていた。大ぶりの緑は豆だが、道真(みちざね)が知る豆の中ではほとんど口にしたことがない。


 薄白の方は、形が様々であるがすべて薄切り。ギザギザのものもあれば、単純に細長いものもあったりと。他にも具材はいくつかあるが、そのふたつが異様に目立っていた。



「旬のタケノコと、蚕豆(そらまめ)のピラフです」



 火坑(かきょう)が説明してくれたが、タケノコはともかく、蚕豆とやらはやはり聞き覚えがない。平安の世にもあったかどうか。もしあったかとしても、平民らが口にしていたくらいか。



「おー? 蚕豆をピラフにか? 粋なはからいじゃねぇか」



 元狗神の蘭霊(らんりょう)は、今は料理人であるため口にしたことがあって当然か。レンゲですくうとすぐに口にした。弟弟子でも、師から暖簾分けした猫人の腕前を認めているのだろう。


 咀嚼した後、すぐに口端を緩めた。



「お粗末様です」

「味付けはチキンブイヨンか? 道真には新しい味付けだな?」

「コンソメよりは、蚕豆などには合うかと」

「だな?」



 久しい、元飼い猫だったあやかしの料理。その美味さを蘭霊がそれだけ評価しているのだから、きっと美味に違いない。道真もレンゲですくい、すぐに口に入れる。



「……うん。美味しい」



 現世の日本が他国の料理を取り入れる風潮が強くなったため、道真が奉られている社などでは菓子や奉納品なども多種多様になってきた。


 普段、食事などは必要ないとは言えたまには食べたくなるものだ。千年以上の年を経て、元飼い猫だったあやかしの料理でそれらを口にする機会もそうそうない。


 しかしながら、米を炒める味付けは悪くなかった。食べたことがあるようでない味付け。だが、塩気が程よく豆のほくほく感とタケノコ独特のシャキシャキした食感が……実に楽しい。


 米の柔らかさと握り飯などでは食べない味付けは……初めてなのに、不思議と受け入れることが出来た。ひと口……またひと口と口に入れて行くのが楽しいのだ。やはり、この猫人の料理は美味揃いだ。


 生前だったら考えられないくらい……不思議な(えにし)が現世に続いたが。この世も面白いと思える。


 これに、梅酒も意外と合うのも面白い。



「お次は、鯛の煮付けです」



 洋物の次に和とは。


 組み合わせが実に面白いが、これは熱燗が欲しい逸品。


 火坑に頼んでから、道真は蘭霊と箸を伸ばすことにした。



(……この甘辛さに、身の締まり具合)



 神に献上する逸品として、市場などで奮発してくれたのか。程よい甘辛い味付けに、ほろほろとほぐれていく魚の身は酒が進んでしまうだろう。


 蘭霊は二合目。道真も一合を空にするのはあっという間だった。

次回は水曜日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ