第4話 心の欠片『かぼちゃと海老の春巻き』
お待たせ致しましたー
かぼちゃで揚げ物……コロッケや天ぷらを作っているのだろうか。
突っ伏していた顔を上げて、少しカウンターの向こうを覗いてみると……油鍋の中には細長い春巻きがあったのだ。
「……大将さん」
「はい?」
「かぼちゃで春巻きですか??」
「揚げなくても出来るんですが、美作さんの好みだとこちらかと」
「好きですけど」
かぼちゃの味付けが甘いのかしょっぱいのか。酒の肴にだから後者だろうが……どちらにしても気になってしまう。この猫人の作る料理はなんだって美味しいのだから。特に、心の欠片で作った料理は。
カラッと揚がった、細長い春巻きを火坑は斜め半分にそれぞれカットして……湯気が立つ出来立ての春巻きを、辰也と水緒の前にそれぞれ置いてくれた。
「こりゃ、極上の逸品だ!」
水緒は熱さなど気にせずに、すぐに口に運んでいた。
その後に熱燗をキュッと飲む感じが、物凄く合うと言わんばかりに。
辰也も、少し息を吹きかけて冷ましてから口に運べば。
「ほふ!?」
出来立てなので当然熱いが……嫌な熱さじゃない。揚げ物と言うのは、人間側の飲食店でもテーブルに運んでくるまで多少は冷めてしまう。
だが、ここではほぼ目の前で調理することでその距離が短縮されている。なので、出来立て熱々過ぎて、辰也は何度もはふはふしてしまう。口の中でいくらか冷めてくると、かぼちゃ以外にも海老が入っているのがわかった。
(……美味!?)
かぼちゃはほんのり甘く、海老の風味と塩気。あと食べたことはあるが独特のコクと旨味を感じる。熱燗にも合うが、すぐには思い出せない。
首をひねっていると、火坑の方は涼しい笑顔でいた。
「かぼちゃと海老以外の味付けとツナギ代わりに……とろけるチーズを入れてあります」
「!? なるほど」
チーズの味なら納得が出来た。少し冷めたがまだ熱い春巻きを口に入れれば……たしかに、チーズの味がした。強過ぎず弱過ぎず、かぼちゃと海老を引き立てる役割をしていた。これがすぐにわからないとは……と辰也は少し恥ずかしかった。
「かぼちゃとチーズの組み合わせは相性がいいですしね? 現世では、特に女性がお好きな場合が多いですが」
「……あの人も好きなのかな」
昼間、ある意味一目惚れしてしまったかもしれない……あやかしだと思う女性。
ほんわかした雰囲気と、カントリー風の服装が相まって……辰也には可愛く目に映った。
だが、彼女がこの店の常連だとわかっても……いつ会えるだろうか。その事がだんだんと気になってきた。
「こーんばんは〜!!」
いくらか悲しい気持ちになっていた時。
可愛らしい女性の声に、辰也は思わず椅子から転げ落ちそうになった。
次回は土曜日〜




