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第3話 遅れて知る事実

お待たせ致しましたー

 何を作ってくれるのだろうか。


 辰也(たつや)は久しぶりに来る楽庵(らくあん)の料理に、気持ちがワクワクしてきた。


 もちろん、のっぺらぼうの芙美(ふみ)のことも知りたいが……今は多少腹が減っていた。お通しと熱燗程度では腹が満たされるどころか、空腹感が増すだけだ。店主の火坑(かきょう)はそんな辰也の心の内を読んだのか、この店では定番のスッポンスープを水緒(みずお)の分も一緒に出してくれた。



「相変わらず、いい味じゃねぇか?」



 水緒はどれくらい来ているかはわからないが、辰也よりは頻繁かもしれない。春先で、社会人としてはそこそこ忙しくなってきた辰也も……久しぶりにそのスープを口にすると、和風出汁だけでない鶏肉とも似たラーメンスープにも近い、ニンニクの効いた味わい。


 今日は金曜日なので、休暇の明日を思えばたくさん口にしても問題はない。肉については、未だに首は食べれないが足の部分は爪が多少気になるものの、こちらも鶏肉に近い食感が美味だ。



「脚肉の刺身などは……先に来たお客様に出してしまいましたが」

「構わねぇって。まだ花冷えする季節に、こう言うのが嬉しいってもんだ」

「ふふ。お花見には、もう終いですが」



 名古屋は夏はとことん暑く、冬と春は寒い。もちろん、過ごしやすい季節もなくはないが……盆地特有の気候の関係で温度差が極端になることが多いのだ。去年の夏に、火坑と出会い介抱してもらった事がなければ……辰也は今も腕の傷で悩んでいただろう。もう、綺麗さっぱりないので安心ではあるが。



「花見かぁ。新人達が、名城公園とかの花見スポットで場所取りしてたな」



 かく言う辰也も、新入社員時代はやったものだが。ただ、腕の傷は長袖で隠せても……あのキリキリとした公園の風はビルの間のとは違う意味でキツかった。今もう一度やれと言われたりしてもお断りだが。



「僕も今年、お花見したんですよ」

「? 誰とです??」

湖沼(こぬま)さん達とです」

「! いいなあ!?」



 彼女とも、風吹(ふぶき)の一件以降なかなか会えていなかったが……火坑達と花見とは羨ましかった。誘いがあれば絶対行きたかったのに。



「ほーん? あの嬢ちゃんと付き合ってたもんな?」

「へ?」

「ふふ。他にも真穂(まほ)さん達もいましたが」

「え、え!!?」



 いったいいつの間に……、と辰也は目を丸くしたくなった。


 たしかに、美兎(みう)は年頃の女性らしく誰かに恋をしているような感じではあったものの……その相手が目の前の猫人だとは知らず。


 風吹もだが、何故可愛い女性は妖怪の相手になってしまうのだろうか。自身も、妖怪相手に恋をしかけている状況ではあっても。



「……羨ましい……」



 思わず、カウンターのテーブルに突っ伏してしまうくらいに。


 水緒にはケラケラ笑われたが、火坑は揚げ物を始めたのか油鍋からパチパチと爆ぜる音が聞こえてきた。

次回は水曜日〜

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