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第1話 ホワイトデープレゼントへ

お待たせ致しましたー


 名古屋中区にある(さかえ)駅から程近いところにある(にしき)町。繁華街にある歓楽街として有名な通称錦三(きんさん)とも呼ばれている夜の町。


 東京の歌舞伎町とはまた違った趣があるが、広小路町特有の、碁盤の目のようなきっちりした敷地内には大小様々な店がひしめき合っている。


 そんな、広小路の中に。通り過ぎて目にも止まりにくいビルの端の端。その通路を通り、角を曲がって曲がって辿り着いた場所には。


 あやかし達がひきめしあう、『界隈』と呼ばれている空間に行き着くだろう。そして、その界隈の一角には猫と人間が合わさったようなあやかしが営む。


 小料理屋『楽庵(らくあん)』と呼ばれる小さな店が存在しているのだった。










 美兎(みう)は、ただいま守護でもあり将来の義姉になる予定でもある座敷童子の真穂(まほ)の自宅にいる。


 別に美兎の自宅でも良かったのだが、今回については界隈でなくてはならなかった。



「……うぅ……」



 今美兎は、あることに挑戦している。料理とかではなく、手芸。常日頃、パソコンでデザインなどをしていく業務などとは違い、細い棒の道具だけでプレゼントを作っていく。


 編み物に、美兎は挑戦しているのだ。何故かと言うと、少し前までさかのぼる。


 バレンタインでは美兎は恋人である猫人の火坑(かきょう)に手作りのチョコレートを渡した。不恰好だが、トリュフチョコレート。それを火坑は喜んで受け取ってくれた。猫のあやかしでも、猫ではないのでチョコレートは大丈夫だと事前に聞いて作ったのだ。


 だが、まさか。


 火坑からもバレンタインプレゼントをもらえるとは思わず。彼からは、抹茶のフォンダンショコラ。真穂の縁戚であるあの季伯(きはく)から教わって作ったようで、火坑の自宅で食べたがとても美味しかった。美味し過ぎて、自分のトリュフなど霞んでしまうくらい。


 だが、既にトリュフは火坑が美味しいと全部腹に入れてしまった。


 なので、ホワイトデーに向けて……何か名誉挽回出来ないかうなっていたら、雪女で友達になった花菜(はなな)から提案があったのだ。


 食べ物の次に、形が残るのものならどうか。初心者なら自分が教えると。


 と言うわけで、真穂も海峰斗(みほと)に作ってあげたいからと参加。


 会場も花菜が来やすいようにと真穂の家となったわけである。さすがは有名妖怪なせいか、はたまた人間界での有名作家のせいか。


 稼ぎが美兎と比べものにならないくらいある証拠に、真穂の自宅はデザイナーズマンションだった。火坑のところとは全然違う。



「よ……よろしくお願いします」



 花菜もこういうマンションに上がるのは初めてなのか、緊張していた。



「いいわよ? 今日からしばらく、真穂達の先生になってくれるんだから」

「きょ、恐縮です」

「ほんと、ありがとう! 花菜ちゃん、毛糸ってどんなの持って来てくれたの??」



 今回、花菜以外は初心者なので材料の調達は彼女にお願いしたのだ。費用はもちろん、今から美兎達はそれぞれ支払う。予想の範疇程度の材料費を支払ってから、美兎には二本の棒。真穂には一本の棒を渡された。



「えっと……兄さん用には赤くて大きなマフラー。真穂様の恋人さん、美兎ちゃんのお兄さんへはスヌード……マフラーの一種がいいかと」

「スヌード?」

「輪っかタイプの……マフラーです。ヘアスタイリストさんなら、合わせやすいかと」

「なるほど!」



 普段は料理人といえど、センスが良い。


 美兎には赤い毛糸で大判に近い幅のマフラーを棒針と言う道具で編むことに。真穂の方も、レシピを渡されていたが首をひねっていた。



「丸と棒のグラフ??」

「細編みと言うのが丸。棒は中長編みと言うのです。……仕上がりはこうなります」



 花菜のスマホを見させてもらうと、シンプルなのに綺麗な方眼模様のマフラーとなっていた。これを見て、真穂もやる気が起こり……ある程度糸で練習したらすぐに編み始めたのだった。



「真穂ちゃん凄い……」

「慣れると単調作業だけど……良いわね?」

「じゃ、美兎ちゃんも編んでみよう?」

「うん!」



 美兎のは二目ゴム編みと言うこちらもシンプルのようで細かい編み方だったが……何度かはキツキツに編んだが慣れていくと、ふわふわに編めることが出来た。

次回はまた明日〜

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