第5話 大したことはない
お待たせ致しましたー
だから、せっかく勇気を出してジェイクにチョコレート……告白をしてくれた、天宮花恵と言う人間の少女を少し観察することにした。
と言うのも、告白してくれたのに彼女がいつも通り過ぎたので不思議に思ったからだ。
大須商店街の一角にあるアニメ・漫画などのオタクなどが集うマニメイト。グッズや漫画にDVDなどなどが大抵揃うこの店舗は、全国の主要都市などに多くチェーン店が点在する程の大手。
そこのバイトに起用されたジェイクもだが、天宮もコスプレイヤーの格好でバイトしている。大学生なので若々しく、スタイルもいいのか胸の発育が良い。人間なのに、とも思うが大戦以降食文化も富んできた今の人間自体……余程のことがない限り食に困らないらしい。
それをジェイクも知っているし、あやかしらの界隈でも人肉を食さないようになってきてからは……『心の欠片』以外にも口にするようになったのだ。ジェイクには大好物のタケノコも同じく。だから、人間達の肉体の発育は思っている以上に進歩している。
(……綺麗、なんだよね?)
ある意味、初恋だった湖沼美兎もだが……天宮もそれなりに可愛い顔立ちだ。たしか、最近になって二十歳を迎えたばかりらしい。美兎とそこまで歳が変わらないのに、まだ子供を卒業したばかりなせいもあるのか。
その少し子供らしい愛らしさが、ジェイクには好ましく見えた。レジ打ちをしながら、時々客にレイヤーの服装通りのキャラの台詞をお願いされるのにも、律儀に応えていた。新人なのに、気恥ずかしさがあまりないのか。
元引きこもりだったジェイクとは大違いだった。
気になったのは……まず、そこから。そこからホワイトデーに近づくまで、ジェイクが返事をどうしようか考えあぐねているのに。天宮は催促の要求などはして来なかった。
本当なら聞きたいはずなのに、それだけ待ってくれるのもジェイクには何だか申し訳なく思ってきた。
(あ……そっか)
美兎の時とは違うが、猫人の火坑や赤鬼の隆輝に相談してもらった時の言葉を受け止めた上で。天宮の様子と人となりを観察した結果。
人間どうのこうの問わず、少なからず彼女を好ましいと思えてきたのだ。好意的な意味で。
だから、今も。
「ありがとうございましたー!!」
天宮が男性客に向けた接客用の笑顔ですら、少しもやもやした気持ちになってしまう。
そう言うことだ、とこのひと月かけてようやく理解出来たのだ。
(……そうか。人間もあやかしも……関係ない、か)
火坑もだが、隆輝も。彼らの恋人達の繋がりから、火車のひとりも恋人が出来たらしい。そこに加われるかはわからないが……ジェイクは返事をすることを決めて、隆輝のいる焼き菓子店に行ってとりあえずのお返しのお菓子を買いに行くことに。
買いに行くと、隆輝にはにっこりと笑顔で接客してくれた。
「ジェイくん、お返しのお菓子って今じゃ色々意味があるんだよ?」
「!? そうなの??」
「色々教えるから、それわかった上で買ってよ」
色々意味があり過ぎて、頭の中がこんがらがりかけたが……決めたのは、あまり意味が関係しなかったチョコレートのフィナンシェだった。
次回はまた明日〜




