第3話『姫竹の天ぷら』①
お待たせ致しましたー
美兎への想いを忘れたわけではない。
しかし、彼女はカウンターの向こう側にいる猫人と今は交際しているのだ。それを今更邪魔しようとは思わない。
だから、今目の前にある問題。あの新人の女性から渡された好意を無駄にしたくないとは思っているのだ。人間の女性としては好ましいが、ジェイク自身が受け入れられるかどうかはわからない……わからないのだ。
(天宮さんは……いい子だけど)
自分は人間でないあやかし。
しかも、人間で言うところのニートではなくなったがフリーターでもある中途半端な存在。
彼女はまだ学生で、これからたくさんの出会いがあるはずだ。いい人間との出会いだって、それこそ星の数くらいある。
「……ジェイくん、今。その女の子に対して失礼なこと考えたでしょ??」
「……え??」
むしろ、彼女の幸せについて考えていただけだが。それを正直に言うと、隆輝におでこへデコピンされてしまった。
「あのね? たしかに、俺達あやかしにしたら人間はか弱くて儚い存在だ。寿命も不老も抱えている俺達にとったら、瞬きに消えてしまう。けど……だからこそ、魅力があるんだよ」
と、ジェイクに釘を刺すように言うとビールを一気にあおったのだ。
「……大変失礼ですが。ジェイクさんは美兎さんに一目惚れなされた時はどう思われました?」
「……あ」
猫人の火坑の言う通りだ。酔っ払っていたとは言え、あの時のジェイクの想いは本心だった。
今回はジェイクが想いを寄せたわけではないが、このまま単純に振ってしまったら……ジェイクが傷ついた時と同じ気持ちにさせてしまう。
それは……流石に行けないことだと、ジェイクはわかり、頷いた。
「でしょう? その女の子のことは俺とかきょーくんはよく知らなくても……その子の勇気を蔑ろにするのは良くないくらいはわかる。単純に、お互いの種族の違いだけで振るのは良くないよ?」
「……はい」
それに、このふたりはそれぞれ人間の女性と交際している。隆輝の方はまだ会ったことはないが、付き合いはそこそこ長いそうだが。それでも未だに付き合いが続いているのだから……良好な関係を気付けていると言うことだ。
「さ。今揚がった姫竹の天ぷらでも」
火坑がカウンターから出してくれたのは……細長い天ぷら。
姫竹と言っていたから、タケノコなのだろうか。しかし、ジェイクの好物であるタケノコは春先でも、四月以降が旬だったような。
箸で持ち上げてみると、意外にずっしりと重い感触が伝わってくる。
「……いただきます」
出来立てなので、少し息を吹きかけてから……添えてある抹茶塩を少々つけて口に入れる。ザクっとしたタケノコの食感と熱々の湯気。
加えて、わずかなえぐみも感じるが嫌ではない。抹茶塩と一緒に食べると、これだけでもたくさん食べられる。初めて食べるタケノコなのに、これもまたジェイクの好物に加わったのだ。
次回はまた明日〜




