表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/204

第2話 共通の知人

お待たせ致しましたー

 そして、数日後。


 ジェイクは赤鬼の隆輝(りゅうき)と界隈で待ち合わせていた。


 場所は(さかえ)(にしき)


 夏に熱中症で倒れて以来、ちょくちょく通うようになった猫人が大将の小料理屋。あそこなら、話せるとジェイクは思って隆輝を誘ったのだ。大将である火坑(かきょう)がかつての想い人だった湖沼(こぬま)美兎(みう)と交際を始めたのは知っている。


 むしろ、今ではおめでとうと賛辞を贈ったくらいだ。玉砕したのに、それ以降も友達として接してくれた美兎の人柄のお陰か。



「俺も久しぶりだなあ〜?」



 隆輝と会うのも久しぶりだが、相変わらず背が高い。ジェイクもそれなりに人化での背丈はあるが、隆輝の方が断然高いのだ。さすがは鬼だからと言うのもあるが……ひとまず、楽庵(らくあん)に到着すると火坑が出迎えてくれた。



「いらっしゃいませ」



 相変わらずの、涼しさを体現したような微笑み。猫頭なのにちっともいやらしさを感じさせない。さすがは、美兎が見初めた相手だ。



「や! きょーくん久しぶり!!」

「? きょーくん??」

「俺ときょーくんはマブダチなんだよ?」

「……地獄からの縁なので」

「……なるほど」



 今でこそ、それぞれ料理の道を歩んでいるが繋がりがあったという事。ジェイクがここに来る日は、大抵美兎だったり他のあやかしの客が居たりと……。隆輝がいる機会はたまたまなかった。


 今日は他に客がいなかったので、ジェイクと隆輝はカウンター席の真ん中を陣取る形で座ることにした。



「ジェイクさんと隆輝さんはお知り合いだったのですね?」



 火坑はお通しにと、大根の酢の物を用意してくれた。日本に居住を構えて長いが、昔は苦手だった酢の物もここのなら食べられる。



「ジェイくんが俺んとこの店に来てくれたのがきっかけだったなー?」

「お互いあやかしだと気づいて……」



 もう三年近く前か。人間界のテレビ特集で rougeが紹介されていたのだ。甘いものが大好きなジェイクが……引きこもりから、勇気を出して人間界に行くくらい。その時に、会計を担当してくれたのが隆輝だったのだ。


 以来、人化の年齢があまり離れていない事から……時々連絡する仲になったのである。



「そうですか。今日はうちをご利用いただきありがとうございます」

「今日は飲もう! で、ジェイくんは俺になんの相談??」

「実は……」



 バイト先での出来事を大雑把に話すと、隆輝は何故かニコニコと笑っていた。



「何? ジェイくんにも春??」

「は、春??」



 暦の上では春ではあるが……と返答すると、火坑も一緒に違うと首を横に振られた。



「日本の言い回しではあるのですが。恋をした瞬間などを、そう呼称するんですよ? ジェイクさん……本当に嫌でしたら、断るのもすぐに出来たはず。なのに、こうして隆輝さんに相談されるくらい悩まれていらっしゃる」

「ぼ……僕が??」

「その人間の女の子、可愛いんじゃない?」

「か……可愛い……けど」



 たしかに、気遣いも出来て明るくて、いくらか根暗気質のあるジェイクにもきちんと挨拶をしてくれている。好印象がないわけではないが、普段言い寄ってくる人間やあやかしの女性とも違った。


 美兎への初恋が砕けたとは言え……あの子を気にかけていたのか。


 知人であるふたりに言われても、ジェイクはすぐに納得出来なかった。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ