第3話 化け猫の告白
お待たせ致しましたー
びっくりして、風吹は目を丸くした。
「田城……さん?」
どうしたのだろうか。気分でも悪くなったのだろうか。振り返ると、田城の顔を見れば彼女は泣いていたのだ。
「……行かないでくだしゃい」
まだいくらか酔っ払い口調ではあるが、田城は泣いていた。号泣なくらい……嗚咽はないが、風吹を見て泣きじゃくっていたのだ。
袖を掴む力は振り払えるくらいだが、風吹は田城の行動と泣き顔にどうしようもない恋心が燃え上がるのを感じて、辛くなってきた。
言いたくても、言えない。
期待してしまうが、応えていいのか。
風吹は人間ではない。今はしていなくても、かつては人間の屍肉を口にして糧としていた猫の化け物。この前もだが、今日田城と会話をして改めて思ったのだ。このように明るくて、他者を和ませてくれる女性に自分は相応しくないと。
だけど何故。この女性は風吹の期待をいとも簡単に飛び越えてきてくれるのか。
「……田城さん、俺隠してることがあるんです」
「……かくしてること??」
「……俺の、秘密です」
完全に人化を解かずに、目を猫目にさせて、猫耳を出してから田城と向き合った。
田城はポカンとしてたが、すぐにまたふにゃふにゃの笑顔になった。
「……猫しゃん?」
「……半分あってますけど。化け猫ですよ、火車って」
「……それが悪いことなんですか?」
「……え?」
もう一度田城に顔を向けると、彼女はふにゃふにゃどころか苦笑いをしているだけだった。おそらく、今ので酔いが覚めて正気に戻ったのかもしれない。
「……私は。不動さんが好きです。何者でも、いいんです」
完全に酔いが覚めてしまったらしく、風吹は背筋が凍るような感覚を得た。
けれど、田城はまだ言葉を続けてくれた。
「人間じゃなくても、なんでもいいです。それだけじゃ、ダメですか?」
「……化け物ですよ?」
「けど、不動さんは不動さんです」
そして、座ったままなのに風吹に抱きついてきたのだ。
間近に感じる、好きな人間の匂いに。血肉とは違う匂いで酔いそうになった。
「田城さん!?」
「なんだっていいんです。私は気にしません」
「……後悔、しないんですか?」
「絶対、と言い切れないのは申し訳ないけど。今は言えます。あなたが好きです」
「……俺も、です。真衣、さん」
風吹も生まれて初めて。生きている人間を抱きしめて、幸せな気持ちになれたのだった。
それから、完全に酔いが覚めた田城……ではなく、真衣の家に泊まることになり。キス以上の事はすぐに出来ない理由を告げてから、二人で狭い真衣のベッドで寝ることにした。
日付が変わる前に、湖沼や美作にうまく行ったことをLIMEで知らせれば。真衣と一緒に見たが二人ともすごく喜んでくれた返事が来た。
「明後日、イベントですね?」
「……俺、頑張るよ」
初デートとは違うが、最初の約束を果たすために風吹は真衣に意思を伝えた。人肉の匂いを直に感じ取っているのに、真衣の匂いはうっとりしても喰らいたいとは思わなかった。
次回はまた明日〜




