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第4話『再び釜揚げしらすの雑炊』

お待たせ致しましたー

 少し、困った表情で火坑(かきょう)は顔を覗かせてきたのだ。



「あら、響也(きょうや)君。どうしたの?」



 母も、父同様に彼が気に入ったので下の名前で呼ぶようになっていたのだ。



「いえ。お父さんと海峰斗(みほと)さんがかなり堪えてしまっているようなので。今の話題になっていたのに近い雑炊でも作らせてもらえたら……と」



 対する火坑も、父や海峰斗に言われてそう呼ぶようになった。



「あらあら。酔いが酷いの?」

「あのままですと。軽くて胃に優しいものを食べた方がいいですから。……良ければ、と思いまして。どうでしょう?」

「是非お願いしたいわ。私も作り方見ていい?」

「はい。家庭でも作りやすい材料でお作りしますね?」

「私も手伝います!」

「ありがとうございます」

「んー。ご飯は冷凍のしかないから……。美兎(みう)はまずご飯解凍しちゃって? だいたい1.5合分」

「はーい」



 話題もいい感じに逸れたので、今回は美兎にも最初教えてくれた釜揚げしらすの卵雑炊を作ることに。出汁は顆粒出汁じゃなくて、鰹節で贅沢に取る方法で。


 味見を母がすると、ほう、と顔が綻んだ。



「すっごく、美味しいわあ」

「お粗末様です」

「これなら、お父さん達も酔いがマシになると思うわ」



 さ、持っていきましょうとお盆に載せた雑炊を母が持って行き。


 火坑と美兎は笑いながら顔を合わせた。


 それから父は起きたが、兄の海峰斗がなかなか起きない。けれど、無理はなかった。海峰斗はある意味父親以上に酒を飲んでしまっていたのだから。



「芋、麦の焼酎ロック三杯にサワー。ウィスキーもロック三杯って……飲み過ぎでしょ!?」

「美兎さん、すみません。僕も止めるのが遅くて」

「響也さんはいいんです! まったく……お父さん達無茶しないでよ」

「いやー、すまん。俺より断然に若いのに、響也君の肝臓は強いね? わざわざ酔い覚ましの料理まで作れる余裕があるくらいだなんて」

「ふふ。全てではないですが、お客様達にも鍛えられたので」

「なるほど」



 実際は人間ではなくて、猫由来の妖怪の類とは言えないが。


 もし言うとしたら、それはおそらく火坑(かきょう)と結婚式を挙げる日辺り。随分と先のことなので、まだまだ美兎にとっても予定でしかないが。



「とりあえず、お味はどうですか? 濃すぎることは」

「いや! ちっともない!! 尾張の人間は総じて味噌味に慣れっこと思われがちだからね? こう言う優しい味わいは嬉しいよ。本当に、君はいつでも美兎の婿に来てくれ」

「お父さん、ちょっと!?」

「美兎もそう思っているんじゃないのか? 彼なら、って」

「そう言うけど……私、まだ二十三歳だし」

「大学の同級生で、在学中から婚約してすぐ結婚した友達がいただろう?」

「あの子は特殊!!」



 高校生の時点で婚約してでも大学に合格して、卒業とともに結婚だなんてイレギュラー過ぎる。彼女をこの家にも連れてきたことがあるので、父親は印象深く思っただけだろうが。



「僕もいい歳ですが。まずは美兎さんを優先しますよ。新卒で仕事の楽しさやつらさを感じている今です。まだまだ結婚は早いと思っているんですよ?」

「君の店で働くことも出来るだろうに?」

「お父さん!?」

「美兎さんの夢はデザイナーさんですよ? 僕の店での仕事は悪く言えばバイトでも出来ます。が、場所が場所ですし、睡眠時間をかなり削りますからね? 美兎さんに体調を崩してほしくないんです」

「ふぅむ。なるほど……」



 さすがは、普段はあやかし相手を接客しているプロの料理人。人間よりもはるかに生きているので、人間相手でもすぐに応対できる。その口回しのうまさに、美兎はますます彼に惚れてしまいそうだった。


 なぜなら、己の欲望もあるが美兎を優先としてくれるのだから。



「ふぁ……? あ、れ……俺潰れてた??」



 とここで、ようやく海峰斗が起きたのだった。



「おはよ、お兄ちゃん? 響也さんが雑炊(おじや)作ってくれたよ? 食べる??」

「お? 食べる食べる!」



 美兎と火坑中心の話題はここまでとなり、それからは夕飯前まで語り尽くし。


 火坑は、明日からの仕込みがあるので早めに帰ることになり、美兎は今日は実家に泊まることになったのだ。


次回は木曜日〜

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