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フリーマーケット

トッピビ広場。

かつてトッピピ広場という名称だったが、この街の町長がトッピピでは情けないと言って無理矢理トッピビにしたという、街一番の広場。


この広場で定期的に行われるフリーマーケット。

商業区にある店が、一箇所に集まって出品をする。

あまり馴染みのない店の品揃えも、広場を歩くだけで、建物に入る必要もなく見ることができるこの催しは、街人にもかなり人気がある。


主に雑貨や服飾関係の店が6割を占め、その恩恵を受けようと食べ物屋が広場を囲うようにいくつも出店している。


『ダラー武器店』は、人気エリアから程遠い一番人目につかない場所で出店していた。

何も好んで端を選んだのでは無く、街人の需要を考えた主催者側からの指定だった。


そう、フリーマーケットでのダラー武器店の立ち位置は、「ほとんど需要は無いけど品揃え的な意味合いで出店してもらっている」店扱いだった。

チラシの出店情報欄やマップの中で、探せば中古武器店もある、その程度。

商店街区のギリギリ端でメイン通りの裏通りで営業しているダラー武器店としても、端とは言え、人通りのある場所で出店できる事はプラスでしか無かった。


「ダラー武器店、お安くしてまーす!武器庫の入れ替えに如何ですかー、買取も致しまーす」


手書きで書かれた『ダラー武器店』の垂れ幕を、主催者側で用意した二本の鉄柱に掲げ、胸に『ダラー武器店』『マール』と書かれた二つのプレートをつけた背の高い女性店員が呼びこみをしている。

しばらく同じ言葉を繰り返しては、「…来る訳ないじゃない…」と小声で泣き言を言っては繰り返して時間は過ぎて行く。


そこに、広場内をうろつく街人のカップルが、わざわざダラー武器店の前で立ち止まり、批判し始めた。

「武器店って掲げてる割に品揃え悪くない?」

「中古なら中古武器屋で良くね?紛らわし」


「絶対儲かってないでしょこの店笑」

「売ろうって気ないよな、手書きとか笑」


その声は、騒がしい広場内であってもはっきり聞き取れる程の声量であった。


中々去ろうとしないカップルに向け、店員の女は笑顔を貼り付けたまま話しかけた。


「そこのおふたり、気になります?どうぞ手に取って見てください、どうぞどうぞ」


カップルは知らぬ振りをしてニヤついている。


「ええ、紫のローブと黒パンツの、体の大きなそこの貴女、貴女です!どうぞこちらに!」


二人以外にアピールするように更に呼び込む。すると無視をする二人を、周りの客がジロジロ見始めるのだった。


カップルはその視線に耐えられなかったのか、店員の呼びこみに応える事なく立ち去って行った。


「(勝ったわ…!)」

店員は笑顔を貼り付けたまま、しかし先程より少し満足げに呼びこみを続けるのだった。




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