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買うの買わないの

「はい、お子様の初めての剣ですね」

客に呼び出されたダラー武器店の店員は、呼び鈴をならした中年の女性の注文を確認していた。


「ええ、そうなの。今度、家族で狩りに出かけるんだけど、子供も剣が持ちたいって言ってね、困ってるのよ。おもちゃじゃ納得しないし、安価で、切れ味悪くて、10才の子供でも持てる、そんなの無い?」

「まぁ…!大変でございますね、丁度あちらの部屋に、狩猟や実戦では使えない類のジャンク品を集めて展示しております、一度ご覧下さいませ」


「あら、そうなの?見てみようかしら」

「はい、ぜひ!」

店員の女はしめたとばかりに奥の捨て値部屋へ連れて行こうと先導する。


「あら、店員さん、待って」

中年の女性は足を止めると店員を後ろから呼んだ。


「はい」

笑顔で振り向く店員の顔は曇っている。

「この剣はどうしてこんなに安いの?」

中年の女が指さす台には、鞘付きの短剣がいくつも綺麗に並べられていた。

「そちらは…。フレディ社の最新セーフティソードでございます。購入者はフレディ社に登録必須、使い道、使用した感想などをアンケートとして提供する必要があり、また柄の部分に埋め込まれた魔法石によって位置情報や、ソードの状態が自動的にフレディ社へ送信される仕組みとなっております。一種の試供品扱いであり、その為、大変お安くなっております」

店員の女は脳裏に刻んだ文言を言いあげる。

「まあ、フレディ社の?私の愛用している剣もフレディ社なのよ。中古屋さんに新品があるなんて不思議だわ。持って見てもいいかしら?」

「もちろんです、お気をつけてお持ち下さい」


「持ち主の肌は切れないのね?」

「はい、その様に作られております」


「どこに魔法石が入っているの?」

「…柄でごさいます」


チリリリンー。


店の入り口が開き、来客を知らせる鈴が鳴る。


「あら、鞘が抜けないわ?」

「お貸しくださいませ、奥様」

店員は中年の女が持つ剣を受け取り、鞘から抜いて見せる。


「まあ!どうやったの?」

「柄のこの部分に触れまして、こちらのワードを唱えて頂ければ」

札に書かれた説明文を指でなぞる。


すると丁度、捨て値部屋の扉が開く音がして、続いて閉じられる音が店内に響いた。


「!」

その音を敏感に感じ取った店員の女は、思わず捨て値部屋の方を見るが、もちろん客の姿は見えない。


「抜けたわ!」

中年の女の声に、店員の女は少し遅れて反応した。

「…まあ、素晴らしいですわ」

店員の女は再び捨て値部屋を見たが、もちろん客の姿は見えない。

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