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お前もプリンセスかよっ!  作者: テラェフカ
第一章 英雄姫は止まらない
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第十七話 ルー

 

「ほ、ほら、リベも座って」

「う、うむ……座るが、座るが……もしかして妾、邪魔なのカエ?」


 鬼なのにめちゃくちゃ空気が読めるリベ。

 確かにトファリがルーと瞬間的に仲良くなってしまったが故に、リベの何とも言えないトファリとの関係がフワフワとしてしまっている。

 ここは子分(リベ称)である俺が、リベをここに居ても大丈夫な雰囲気にしてやらないとこの先も変な空気になってしまうやもしれない。


「リベ」

「ん……なんじゃ子分……」

「親分の横に子分が居るのは当たり前だし、子分は親分が居ないと子分じゃなくなるだろ? お前がここに居てくれないとさ、子分の俺が困る……な?」

「――ッ。そ、そうじゃ! クックク……うむ! 子分の言葉に一切の間違いが無いでナ! 妾がここに居るから子分が居るのだ……キッヒッヒ」


 元気が出たのか、リベは料理をガッシリ握ったスプーンで(すく)って食べ始めた。それを見て、俺とトファリも和菓子をちょこちょこ摘まみ始めた。


「アンタ、そんな調子の良いコトばっかり言ってると変なのしか寄り付かないわよ? 鬼とか鬼とか……鬼とかね!」

「何を言うか人間メ! 人間の方が子分に寄り付いているではないカ!」

「ふふーん、シューゴは私の世話役なのよ」

「妾の子分ダッ!」

「ま、自分の言葉に責任くらいは持つケドさ……トファリもリベもちゃんと友達作り頑張った方が良いぞ?」

「ねぇねぇ、何の話ぃ? わっ、鬼さんが食べてるのも美味しそう……ジュルリ」


 そこに、場を丸くしてくれるルーが戻ってくる。席に着くなり、リベの食べている料理や俺が摘まんでいるお菓子に意識を向けて話題が移っていく。

 そのお陰で、少しだけ荒れそうな場が種火の内に鎮火していく……。


「ねぇねぇ、コブンとかセワヤクってなぁに?」


 はずだったのに、よりにもよってルーが話題を戻してしまった。ルーが悪い訳ではないが、放課後からずっと板挟みで心に良くない気持ちになるから出来れば流れて欲しい話題だった。


「――つまりだな、(けもの)よ。子分は妾の子分なのだゾ。分かったカエ?」

「うん!」

「ルー、シューゴは私の世話役なの。決して誰かの子分じゃないわ。分かるわよね?」

「うん!」

「ほら、ルー……こっちのお菓子も食べて良いよ」

「わーいっ! シューゴ好きぃ~」


 好きという言葉に思わず反応してしまった。思春期だから。

 でも、冷静になると、今のは食べ物をくれるから好き……という恋愛上の好きでは無いというのが丸分かりである。ポンちゃんから似たような流れで良く言われるし。

 でも……なんか、ちょっとだけ心に活力が溢れてきた。女の子からの好きにドキッとして、違うと分かっていても嬉しい気持ちが心を満たしていく。


「……アンタ、顔に嬉しいって出てるわよ?」

「トファリ。冗談でもさ、嬉しいコトってあるだろ? お前は褒められ慣れてるだろうけど……男は単純なんだ」

「ふーん……きょ、興味は無いけど一応聞いといてあげる。女の子に何て言われたらドキッとするの?」

「うーん……シンプルに『あなたが好き』とかか?」

「――――ッッ」

「……いや、お前が照れんなよっ! お前が照れるとなんかこっちまで恥ずかしくなるだろうがっ!」

「あ……あ、そうね! そうだわ……そうね、うん……」


 うん……じゃない。普段から天真爛漫で戦いに身を置いて来たトファリ、だからこそおとぎ話に憧れてしまう程、乙女チックな展開に弱いというのがある。

 今まで、貴族の誰もが挑んも勝てなかったから、トファリの近くまで歩み寄れた者がいないのだが……実はとんでもなくストレートな言葉にキュンとするチョロさを併せ持っている。

 迂闊(うかつ)にも俺が、その地雷を踏んでしまった訳だ……。


(後でドラゴンやら暴れん坊とか言ってトントンにしておかないとな……可愛いトファリとか、可愛いけど逆に接しづらいし……可愛いなんて言うとまたダメになるから言わないけど)


 俺のこの微妙な苦労を分かってくれる者は家族にも居ないだろう……。


「シューゴ、シューゴ、このお菓子はどこで貰えるの?」

「あ、えーっとだな……うん。これはここだけの話、俺の魔法で作り出している物なんだ。俺が唯一まともに使える魔法で……ゴメン、変な物食べさせちゃって」

「…………凄い!! 魔法なの!? 凄い凄いすごーいっ! ごはん食べ放題!?」

「食べ放題ってか、まぁ……魔力があればな?」

「うわぁ~うわぁ~! シューゴ凄い!」

「そ、そうかな? デヘヘヘヘ」


 真正面からのただ純粋に褒められて、これまたなんだか嬉しくなってしまう。ルーの眼差しや雰囲気からは尊敬の意まで感じる。


「ルーね、食べ物求めて家を出たの。シューゴ、いろいろ料理出せてすごい……あのねあのね! ルー、シューゴと結婚するっ!」

「は……はぁぁぁぁぁぁッ!?」

「おいトファリ、何で俺より驚いんだよ」

「ダメよルー! そういうのはもっといろいろ考えて、お互いの事を知ってからじゃないと!」

「むぅー? でもでも、凄い雄は早くしないと取り合いになるよ? シューゴ凄い、ルーもお嫁さんにして貰う!」

「……も?」

「うん! 二人ともシューゴのお嫁さんでしょ? いいな、いいなーって思ったの!」

「「「違う(ぞ)(わよ)(ゾエ)!?」」」


 とんでもないルーの勘違いから、周囲に迷惑が掛かるくらいバタバタとうるさくしてしまった。ルーが冗談ではなく、本当に食べ物に人生を掛けているのには驚かされた……。結婚云々(うんぬん)は、保留というか、少しトファリに共感じゃないけど相手を知らなすぎて流石に踏み込めない。


(獣人さんは距離を詰めるのがは早いからな……)


 そこから楽しい放課後の食事会も晩御飯時の混み合う前に解散となった。いろんな収穫もあったし、結果として放課後にいろいろと彷徨(うろつ)いてみるのは、青春を謳歌するのにも以外とアリなのかもしれない。


『シューゴシューゴ、早く帰ろ~!』

「あ、あぁ……ポンちゃんか! 一瞬ルーかと思ったぞ……。今日も、なんかこう……いろいろあったから帰ったら話してあげるよ。ポンちゃんの方も何か聞かせてくれ」

『うん!』


 寮の前に着いたタイミングで合流したポンちゃんと、管理人質で鍵を受け取って部屋へと戻っていく。

 優雅に毛繕いをするパピーも含めて、学園生活初日のコトを話して夜まで過ごした。



 ◇◇◇



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