表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
背徳の庭で  作者: 楓 海
8/9

ACCIDENT

 読んで戴けたら嬉しいです。

 何故人は誰かを愛すると束縛したくなるのか.............。


 一葉が倖せなら、それでいい......。


 そんなもの、ただの綺麗事だった..........。


 本心はもっと利己的で醜い。


 一葉に愛されたい。


 けれど、一葉はあの()と結婚すると言う、

 別のバンドに移籍すると言う.........。


 オレのもとから、遠くへ遠くへと向かって歩き出す一葉。


 もう、手の届かない場所へと行ってしまう。


 オレのささやかな倖福が叶わなくなる。










 それならばいっそ..........................。





















 それはちょっとした賭けだった........。











 ライヴステージのちょうどギタリストが立ち位置にある天井ライトがグラついているのを見付けた。


 本来なら誰かに...........。


 そう、本来なら誰かに知らせなければならない事だった。


 だがオレは、沈黙した...........。


 ハコの収容人数は千名。


 チケットはソールドアウト。


「飛べ! 」


 そうオレが煽れば、オーディエンスたちは一斉にジャンプし始める。


 千人が飛び跳ねる振動は、勿論天井にも伝わる。


 もしかしたら天井ライトは見た目よりもずっと頑丈に装着されているのかも知れない。


 だが、そうじゃ無いかも知れない。


 それは一葉が持つ運を天に任せた事だ。


 黙っている事でキレイで居られる、ずるいやり方だと思う。


 オレは当事者でありながら、第三者を装う........。


 ここまで来て何に対して誠実でいる必要があるだろうか.......。









 あの時のオレはもう、一葉に何を求めていたのかさえ解らなくなっていた。


 ただ一葉を誰にも渡したく無い。


 そんな幼稚な想いだけに支配されていた気がする。










 

 ライヴは始まった。


 火蓋は切って落とされた。


 ハードな曲が一葉の掻き鳴らすギターと共に始まる。


 オーディエンスたちは一心不乱にヘドバンしている。


 色彩豊かな揺れる髪が不規則に波打つのを、オレは満足気に眺めた。


 オレはただ、ライヴに集中していれば良かった。


 いつも通りに............。


 次々と繰り出されるハードナンバーに観客たちは両手を掲げ飛び跳ねる。


 オレはいつも以上に観客を煽る。


 オーディエンスたちは応えるように飛び跳ねる。


 もっとだ!


 もっと.............!


 もっと.............!


 このまま何も起こる事無く終わるなら、それはそれでいい。


 このままオーディエンスたちの声に消されて埋もれてしまっても良かった。



 けれど.......................。


 本当に、これでいいのか?


 オレは間違っている。


 そんな事は解っている。


 オレは今、とても大切な何かを見失っているのじゃないだろうか........。


 オレはハタと我に返り、一葉を振り返った。


 その時、一葉の頭上には天井ライトがすぐ真上に迫っていて、次の瞬間天井ライトに押し潰されるように一葉が倒れた。


「一葉ーーーーっ...........!! 」


 床にぶつかったギターの爆音が轟き渡り、フロアから多くの悲鳴が響いた。




 一葉の頭からドクドクと流れ、面積を広げる血の海を、オレは呆然と見詰めていた。




 不思議だった。








 あの時、オレの耳からあらゆる音が消えた。













 人が騒がしく右往左往する中、

 オレはただ佇んで静寂の中で耳鳴りを聴いていた.........。























 読んで下さり有り難うございます。

 天井ライトがぐらついて落ちるなんて事故が起きたなんて、話は聞いた事ないです。

 多分、ライヴハウスの関係者様たちは演奏者を守る為にきちんと点検されているので、実際にこんな事は有り得ないと思います。


 一時間後にラスト、投稿します。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 感情と情景の高まり、緊張感、そしてそれが事切れる瞬間のざわめきや、ライブハウスの煌めきがまるで目の前に浮かんでくるようでした。うちの弟も実はバンドマンなのですが、弟もこんな景色を見ているの…
2024/01/01 22:44 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ