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背徳の庭で  作者: 楓 海
7/9

RIP

 読んで戴けたら嬉しいです。

「へ~ブシッ! 」


 鼻に柔らかい物が触れてオレはくしゃみで目を覚ました。


 一葉のコロンの匂いを感じた気がしたから、絶対一葉が何かして来たと思って起き上がり一葉を見た。


「ズッち、今何かしなかったか........

 ....って寝てるし」


 一葉は長椅子に横たわるオレの足元で背凭れに頭を預けて眠っていた。


 あれから三人で一葉の決心を揺るがそうと代わる代わる説得したが、一葉の決意は硬く、結局最後には認めてメジャーへ行く一葉を激励する始末だった。


 一葉の才能が上昇するのを、誰にも止める権利なんて無い。


 そんなのは解っていた事だった。


 あの後オレはペースが上がって、正体が無くなるまで飲みまくった。


 いつの間にかソファーの上で眠りこけてしまい、サキとジュンが帰ったのさえ気付かなかった。


 オレは縮めた足をそっと床に下ろしてしみじみ一葉の寝顔を見詰めた。


 長い睫毛が蛍光灯の明かりに照らされ、下(まぶた)に深い影を落としている。


 いつもそうだ。


 一葉と飲むと安心だった。


 一葉は飲む時、オレの保護者のように最後までオレの傍に居てくれた。


 今はこんなにも傍に居るのに.........。


 一葉............。


 手繰り寄せても、手繰り寄せてもすり抜けて行く。


 どうすればこの気持ちは伝わるのだろう?


 どう伝えれば拒絶されないのか..........。


 異常なオレの愛.........。


 オレはそっと一葉の髪に触れた。


 長い銀髪をなぞった。


 薄紅色の口唇............。


 触れたい...........。


 触れたら総てが終わるのを知っている。


 それでもオレはそっと口唇で一葉の口唇に触れた。


 自分でもどうかしていたと思う。


 けれどそれは............。


 それは薄汚れた背徳の欲望を満たす事は無かった。


 目を開くと一葉の視線とぶつかった。


 一葉は後退りして手で口を覆い、驚きと戸惑いの入り交じった目をオレに向けた。


 オレを見詰めたまま立ち上がると、玄関口まで後ろ向きに歩いた。


 問うような目でオレを見て、哀しげな表情を浮かべると一葉はオレに背を向け部屋を飛び出して行った。


 すり抜けて行く..........。


 もう二度と一葉に触れる事はできない。


 もう二度と.............。










 次の日は名古屋でライヴがあった。


 朝早く移動の車が迎えに来る。


 オレはあの後、後悔を繰り返し朝まで眠れなかった。


 どんな顔をして一葉に逢えばいい?


 できる事なら逃げ出したかったがライヴを私情ですっぽかす訳には行かない。


 私情を優先した無責任な奴だと一葉に軽蔑されるのが怖かった。


 車のドアを開くと運転席にマネージャーの小杉さんが座り、二列目の向こう側に一葉が座っていた。


 一葉はバックレるような幼稚な行動はしない。


 一葉は何事も無かったようにオレを見て挨拶してきた。


 オレは挨拶を返すと、ごく自然に一葉から視線を反らして助手席に座った。


 移動の間、ずっと一葉の視線を感じていた。


 実際の処、自分で招いておいてオレ自身どう一葉に接していいか戸惑っている。


 一葉がバックレなかったのは、プロ意識に他ならない。


 一葉がオレに言いたい事があるとすればこうだろう。


 ライヴに私情を挟むな。


 解ってるさ。


 今夜も最高のライヴにする。


 見に来てくれた子達に最高の思い出を残したい。


 多分、一葉が居るSIRIUSはこれから数えられるほどしか露出しないだろうから..........。


 目的地に着いて車から降りるとオレはいつもの様に会場に向かった。


 ステージでは、セットを組み立てている処だった。


 千人入るフロアを横切ってオレはステージに上がって暫く天井を見上げた。


 ジュンが上がって来て早速アンプを弄り始める。


 オレはステージを降りた。


 向こうから一葉が近付いて来る。


 一葉は戸惑った目をオレに固定していた。


 多分、何故かと問いたいんだろう。


紫雨(しぐれ)、夕べの事だけど.........」


 オレは制するように強く一葉の肩を掴んで言った。


「今はライヴに集中したい」


 オレは一葉を見ずに通り過ぎた。






 この時オレに................。








 悪魔は微笑んだ.............。
















 読んで戴き有り難うございます。

 いよいよ後二話で終わります。


 BUCK-TICKのベストを今、聴いてます。

 いやあ、デビューの演奏の下手さと音のショボさに泣きました。笑

 このベスト盤には全曲のプロモーションヴィデオ付いていまして、茶の間で観てたら活字中毒の娘が「これ、好きなの?」と訊いて来まして、「酷い音だね」と答えたら「安心した」と言われました。

 どうやら、あまりに酷い音のを真剣に観ているので、頭おかしくなったかと心配したみたいです。笑


 初期は確かにこれはちょっとと思いますが、あの当時はセンセイショナルだったんだけどなあ。

 若気の至りなんて言葉もありますし。


 映像はあの頃の流行りとか反映していて懐かしかったです。

 やっぱり私はBUCK-TICK好きです。

 ヴォーカルの櫻井敦さんの世界観は本当にステキだし、曲だっていい曲多いですし。

 

 櫻井さんの顔面は、ホント取り込まれます。笑

 声もステキですしねー。

 ギターの繰り出すリフは素晴らしいですよ、本当に。



 

 

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