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背徳の庭で  作者: 楓 海
6/9

CONVARSATION

 読んで戴けたら倖せでございます。

 玄関のチャイムがけたたましくオレを呼ぶ。


「誰だよお、こんな夜中に........」


 オレはぶつぶつ文句を言いながら覗き穴を覗いた。


 サキを筆頭にジュン、一葉が、どうやら出来上がった状態で、勢いに乗って押し掛けて来たようだ。


 オレはため息をつくと鍵を開けてドアを開いた。


 途端、三人は流れ込んで来た。


「イエーーーィ!

 3/4SIRIUS様、ご到着うーー! 」


「シグ、酒盛りしよう! 」


 ジュンが酒の入ったコンビニ袋を掲げて指差した。


 一葉が後ろで苦笑いしている。


 かなり盛り上がっている様でおめでたい事だ。


 こいつらの酒はとにかく陽気だ。


 カリフォルニアの陽差しがいつでも降り注いでいる。


 嫌いじゃないが、迷惑だ。


 どかどかと上がり込んで来ると、ゴトッとテーブルにコンビニ袋を置きジュンは勝手知ったる他人の我が家よろしく食器棚からグラスを四つ出して来て、グラスを二個ずつ持った手を掲げて叫んだ。


「飲もーーーぉ! 」


「随分、めでたそうだな」


 オレは一葉が座った長椅子に座った。


 サキが氷を運んで来て床に胡座をかき、ジュンが置いたグラスに氷を入れ始めた。


 全く、ここは誰の家なんだ?


「乾杯しよう、乾杯! 」


 ジュンが騒ぐ。


「何に? 」


「うーん........」


 ジュンは一瞬、考え込んだが直ぐに顔を上げて言った。


「一葉の彼女に! 」


 当然、一葉は「はーあ、なんで? 」と声を上げるだろうと思った。


 だが、振り返り見た一葉は眉間に皺を寄せ、オレと視線がぶつかってしまった。


 何故か一瞬、気まずい空気が一葉とオレの間に流れた。


 サキとジュンがお構い無しにオレと一葉の手にレモンサワーの入ったグラスを握らせ、なし崩し的に乾杯させられた。


 こいつら本当に飲めれば、なんでもいいんだな。

 

 と、何だかんださっきから言っているが、オレはこう云うこいつ等がいい加減気に入っている。


 今のロック情勢の在り方とか、人間の在り方とか、そんな事を熱く語りながら飲むのは楽しい。


 お互いを認め合って、理解し合っているから腹を割って話し合えるこの関係と時間がオレには心地いい。


 会話が進んで行ってまったりタイムに陥る頃、ジュンがもそっと立ち上がって一葉の後ろに立った。


 何気に目が合うとジュンはひとかけらの氷を人差し指と親指でつまんだのを見せ、にんまり笑った。


 だいたい何をやらかそうとしているのか、察しはつく。


 ジュンは零コンマ一秒の素早さで氷を一葉の背中に入れた。


 一葉は「うわあ!」と声を上げて飛び上がるように立ち上がった。


 氷は一葉の背中を通過してソファーに転がった。


 オレたちは一斉に笑いだした。


 当然、一葉はジュンに仕返しするだろうと思っていたが、一葉は氷を拾い上げると灰皿に投げ入れ、二、三度氷が転がっていた場所を手で撫でると何事も無かったようにソファーに座った。


 そう言えばさっきから一葉はあまり話に加わって来ていない。


「どうした、ズッち

 さっきから元気無いじゃないか」


 オレが言うと一葉はオレを見てから視線を目の前のテーブルに落とした。


 サキが心配そうな顔で言う。


「何か悩み事か? 」


 ジュンが定位置に戻りながら言った。


「彼女と喧嘩でもしたのか? 」


 一葉は無表情でオレたちの顔を順に見回してまた視線をテーブルに落として言った。


「実は、みんなに話さなきゃなんない事があるんだ」


「なになに、お兄さんたちに話してごらん」


 サキが少しおどけて言った。


「俺.........」


 一葉は暫く目を伏せていたが、急に思い切ったように言った。


「俺、このツアーを終えたらSIRIUSを脱けようと思ってるんだ」


 一気に場の温度が下がって行った。


 オレ達はみな目を見開いたまま、時が止まったみたいに一葉を見詰めた。


 オレはあまりの事に呼吸するのさえ忘れていた。


 一葉は(おもむろ)に話し始めた。


「この間仙台で小太郎さんに、うちに来ないかって誘われたんだ

 勿論、その時は即答で断った

 だけど、小太郎さんは考える時間はあるからゆっくり考えてみてくれって....」


 オレは一気に空気を吸い込んで吐き出した。


 ジュンが泣きそうな顔で言った。


「俺か?

 俺がいたずらばっかしてたからか? 」


 一葉は慌ててそれを否定した。


「違う!

 ここに居る誰も原因じゃ無い!

 俺が........

 俺が欲張りなんだ.........」


 一葉はグラスに入っていたレモンサワーを一気に飲み干して続けた。


「小太郎さんに誘われた時、本音言うと才能認められたみたいで嬉しかった

 後で色々考えたら、メジャーで何処まで通用するのか試してみたくなって、経済的にも今より安定するよなあって........


 俺、今の彼女と結婚しようと思ってるから..........」


 オレは頭を鈍器で殴られた気がして、思わず手を額にあててソファーの背凭れに頭を載せた。


 ショックを受けると本当に目の前が真っ暗になるものなんだと、呑気に思ったりした。


 オレは起き上がると大きく深呼吸をして一葉に向き直って言った。


「本気なのか? 」


 一葉は真剣な顔で言った。


「ガチで」











 読んで戴き有り難うございます。


 昨日と一昨日と、私の作品読み漁って下さった方がいらしてですね。

 嬉しい限りでした。

 どの作品も一通り悩んだり活字中毒の娘に叩かれ(笑)苦労して書いたので、読んで戴けると苦労が報われたような気がします。


 そう言えばですね。

 どの作品も結構入り込んで書いているので、次の作品書き始める時に上手く切り替えができない時があってですね。

 「Possessed by love」を書き上げた後に書き始めたのが「死神の精子」でコメディの感覚が抜け切らなくて、一話目のサブタイトルを今日から元気にホモと書いて、娘に突っ込まれ捲りました。笑

 あれ、延々三十分くらい叩かれ捲ったんですよね。笑

 今は花のような不思議な匂いとかカッコ付けたサブタイトルになってますが、実は今日から元気にホモでした。笑


 こんな風にボケた事、ヘラーってやってしまうので、活字中毒の娘は苦労が絶えないようです。笑



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― 新着の感想 ―
[一言] バンドの引き抜きもまた修羅場になる原因ですよね…バンドを捨てることになってしまうわけですから…みんな若いだけに、かなり全員が苦しんでしまいそうで…とくにしぐれは苦しくなりますよね…距離ができ…
2024/01/01 22:35 退会済み
管理
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