KAZUHA
読んで戴けたら倖せでございます。
五年前、ドラムのサキの紹介で初めてスタジオに現れた一葉はまだ高校生だった。
高校生とは思えない出で立ちだった。
髪を銀髪にし、紫のカラコンを入れ、チョーカーにじゃらじゃらと鎖を下げ、派手なピアスが動く度に耳元で揺れた。
スヌーピーがプリントされたタンクトップを着て、FUCK YOUとかBITCHとかいう文字が白くプリントされた黒いカーゴパンツを穿きショッキングピンクのサンダル。
随分と過激なファッションセンスだ。
ライヴハウスでいつもふらついている派手な高校生が居るのは、オレたちの間でも話題になっていた。
時々ローディーのバイトをしていて、リハーサルの時によく見掛けていた。
サキが話し掛けた時、ギターを弾くと聞いて、ちょうどギターが脱けたばかりだったので気軽にスタジオに呼んだ。
「よろしくお願いします! 」
と、気合いの入った挨拶をしながら一葉は深々と頭を下げた。
オレは緊張を解こうと、笑って言った。
「まあ、そう硬くならないで
フランクに行こう」
「そうそう」
サキが相槌を打つ。
「はい.......」
一葉は頬を赤く染めて頷いた。
「早速、音聴かせて貰えるかな」
オレが言うと、一葉はギターケースを持つ手をギュッと握った。
かなり肩に力が入っているのが見て取れて、オレは気付かれないようにクスッと笑った。
一葉はレスポールを取り出すとチューニングを始めた。
今時の高校生がどんな音を出すのかとオレたちは興味津々で見守っていた。
一葉はアンプの設定を終えると何気ない顔で軽くストロークした。
その野太い音に、まずオレたちは揃って仰け反った。
一同「なに~!? 」って感じだ。
流れるように指をネックに滑らせ、慣らしに遊びで速弾きを披露した。
オレたちは身を乗り出して身入った。
「速弾きですか.........」
今度はネックを鍵盤でも弾くようにピッキングし出した。
「来た~ぁ、ライトハンド! 」
ライトハンド奏法まで飛び出して、オレたちは「なに、この高校生! 」って蒼くなった。
多分、高校生と言う事で舐めていたのかもしれない。
スペックの高さに世代の違いをまざまざと見せつけられた気がした。
そのままオレたちの曲を弾き始めたので、オレたちは慌てて合わせて楽器を弾き始めた。
テクは充分だった。
だが、やはり高校生だ。
正確に、スマートに弾きこなすが音に広がりが無くこじんまりと纏まり過ぎている。
しかし高校生でここまで弾きこなして、いったい数年後に成長したら......。
想像がつかなかった。
SIRIUSに加入してから一葉はメキメキ頭角を現して行った。
一葉が創る楽曲はライヴでも観客に受けが良くCD、チケットの売り上げは右上がりになり、SIRIUSはオリコンのインディーズチャートの常連になって行った...........。
何故一葉なのか解らない........。
十代と言う若さが持つ無限大の可能性に満ちた、その屈託の無いあの時の一葉の笑顔は、オレの胸に確実に何かを突き刺した。
それは小さな始まりだった。
突き刺された刃の先から染みだし広がり変化した感情、欲望.......。
オレは男が好きな訳でも、女がダメな訳でも無い。
だが、一葉に対するオレの気持ちは、そこに分類されるとあまりにしっくりとしてしまう。
それが何であるか認めた時、込み上げて来たものは薄汚れた絶望だった。
一葉にとってオレは同じバンドのメンバー。
それ以上でもそれ以下でも無い。
況してや同性........。
あの時から恋は........。
それは、オレにとって絶対的な絶望になった。
一葉が欲しい..........。
誰にも悟られないように...........。
この気持ちを押し殺して...........。
そうすることでオレは...........。
一葉の傍に居る事を許される............。
読んで戴き有り難うございます。
この作品を書くに当たって、ロック雑誌やらYouTube見まくりました。
美味しいお勉強でした。笑
因みにバンド名のSIRIUSですが、DIAURAの曲名から戴きました。
私にとって純文学と言うイメージは、凄く頭がいい人が書く小説。
taka様やさすがり亜美様の作品みてると、凄く思います。
で、めげます。笑
私、自慢できるくらい頭悪くてですね。笑
学生の時の成績はいつも親を絶望の底に突き落とすくらいには酷くて、高校中退してるので、どんな大学だろうと大学行った人は凄いと思います。
そんな私が純文学語るなんて、とんでもない事なのですが、なにせ変わり者なので何にも属せない作品書いてしまうんですよね。
どんなひねくれたもの書いても純文学なら、許されるみたいな勘違いしてるせいだと思います。笑
太宰治の「人間失格」がなんであんなに人気あるのか未だに解らない私です。
あれって、はしにもぼうにもひっかからない男の女遍歴書いただけにしか思えないんですよお。
でも何度も舞台演劇や映画になったりしてるでしょう。
頭悪いって、人生凄く損してるのかもしれませんね。




