誤爆チャット
「そうか? 買い物に付き合ってくれ」
「あっ。ちと、シャワー浴びていいか? 汗だくで」
「土鍋もあるし、用意できたら私のマンションに来てくれ」
「うん、わかった」
汗だくというより、本当に異世界帰りだったこと、異世界のシステムが使えることに驚いて、訳も理解らず矢口を誘ってしまうぐらい驚いている。
一度、冷静になりたかったのだ。
矢口が早を出ていくと、俺は洗濯機に着ていたものを放り込みユニットバスでシャワーを浴びた。安アパートと言えども、共同トイレとかではないのだ。
さっぱりとした直後なのに、部屋の暑さで汗が滲み出る。
冷静さを取り戻したところで、再び「メニュー」と呟く。
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◇アイテム ◇スキル ◇ステータス
◇マップ ◇クエスト ◇システム
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順番に『アイテム』を選択する。
空っぽだった。試しにボールペンを入れてみると…。
「入った!? こっちの世界でアイテムボックスが使えるのか…。あまり意味がないけど…。まぁ、このボロアパートの防犯レベルを考えれば、通帳とか入れておけるだけありがたいか…」
次に『スキル』だが、これも何もない。いやいや、待て待て。矢口には、料理とか水泳とかあったのに、俺は何もなし!?
自分の無能さにショックを受けつつも『マップ』を表示する。まぁ、スマホがアレば、あまり使わないよな。スマホと比較して利点を無理やり探せば、矢口の位置が理解るくらいだ。
『クエスト』には、『矢口とおでかけ』がリストアップされていた。メモ帳代わりに使えるな。
最後の『システム』は、ロックされていて開けなかった。
実質、システムの残滓的なものだと解釈する。
「スキルとか使えれば便利だったんだけどな」
何となく、閉じてあった『チャットウィンドウ』を開く。
□□□─『パーティーチャット』──────────────
矢口:そうか? 買い物に付き合ってくれ
雨宮:あっ。ちと、シャワー浴びていいか? 汗だくで
矢口:土鍋もあるし、用意できたら私のマンションに着てくれ
雨宮:うん、わかった
矢口:またな
雨宮:うん、お粥ありがとう、美味かったよ
矢口:雨宮と…買い物!
矢口:緊張するな…いや、今まで部屋にいたんだ
矢口:でも、雨宮、なんだか大人っぽくかったな
矢口:ただいま
矢口:うん、喜んでくれたぞ
矢口:美味しくないと言われないか、緊張したけどな
矢口:そ、それでな。雨宮と買い物行くことになった
矢口:仕方ないだろ? 突然言われたのだぞ。咄嗟に買い物しか
思いつかなかったんだ。
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これは…。俺との会話と、独り言!?
そして、ルームシェアしてる後輩の伊藤さんと会話しているのか?
パーティーチャットだから、俺との会話は反映されるけど、伊藤さんの会話は、チャットに反映されないのか。
う〜ん…。
この会話から推測するに…矢口って…俺に気があるのか?