クリスマスのルールブック
「はい、もしもし。」
「すまん。」
「なに、いきなり。」
いぶかしむ妻の声がする。心持ちトーンも低いような・・・。
「帰りが遅くなりそうなんだ。」
「ふーん、そう。」
あ、さらに下がった。
「ごめんよ。」
「いいよ、別に。」
「楽しみにしてたのにね。」
「誰かさんがね。」
「うん、まあね。君達だけで楽しんで。」
「そう、わかった。」
「ほんと――」
ごめんと、もう一度、謝りかけたその時。
「我が家のイブは、明日来ることにしよう。」
「えっ?」
受話器が口元からおろされたのがわかった。
『おーい、おちびさん、こっちおいでー。』
電話の向こうから、子供に呼びかける声がする。次いで、何事かを言い聞かせている気配だけが伝わってきて、そして。
「もしもし、おとーさん、あのね。」
「サンタさん、クリスマスは、おしごとなんだって。」
お母さんと子供さえ納得すれば、神様の誕生日すら変えられちゃうのです。
働くみんなに幸多からんことを。
がんばれ!
連載中の『みどりの竜』や他の短編も見てくださると嬉しいです。いずれも、ほのぼのコメディです。