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本が繋ぐ想いの果ては

作者: 八尋蓮

 小さい時からよく来ている図書館。

楽しい事も嫌な事も辛い事も何かあると必ずここに来て本の世界に入るのが、私の癒やしの時間だった。

そして、高校生になった今もいつものように本の世界に入る。

 次の本を探していると、ふと小学生の時に大好きで家族が呆れるほどに毎日読んでいた本を見つけた。

 懐かしいなと、その当時の事を思い出しながら本を開きページを捲っていると、何かが音を立ってて下へと落ちた。


 音がした方へと視線を向けると、そこには空色の長方形の紙が落ちていた。誰かが、栞代わりに挟んでいたのを忘れて返してしまったのだろう……その栞を拾うとそれは便箋で、中には手紙が入っていた。



 ーー便箋には名前が書かれておらず、誰かの大事な手紙だったらと考えた私は、ごめんなさいと思いつつも中を見てしまった。


 その手紙は、誰かに宛てたものではなく、手紙の主の名前と手紙を読んだ人と文通がしたいと言うイタズラのような内容だったが、面白そうだと思った私は、急いで持っていたノートの紙切れに、本名ではなく偽名と文通しませんかと書いて本を戻してみた。

 


 ……それから少し経ち、そういえばあんな事あったなと思い出した私は、期待せずにもう一度本を開くと、中には私の偽名が書かれた空色便箋があった。

 返事が返ってきたことに驚きつつ読むと、どうやら相手も、まさか返事が来ると思っていなかったらしく驚いたと、でも嬉しかったと書かれていて

不思議と私も嬉しく思い、そこからあの人との文通が始まる。

 



 最初は趣味など他愛のない事を書き文通していく内に、お互いゲームが好きな事が分かり、あの人はある提案をしてきてくれた。


 いつもと同じ本に手紙を挟むんではなく、今度からはこの本には、次の手紙はどの本に挟んだかヒントを挟み、そのヒントをもとに手紙が挟まれてる本を探すというゲームをしないかと……

今までよりもハラハラしスリルも少し増す感じがした私はすぐに楽しそうだから乗る!と返事をした。

 


 ーーその日から私達は他の人が借りそうにないマイナーな本を中心に文通を続ける。文通を、続けていく内に私は綺麗な字でいつも優しく私の書いた想いに、真摯に返事をくれるあの人に惹かれ始めていた。


 恋心とは気づくと不思議なもので、もっとあの人を知りたいと思うようになり、いろんな事を質問するようになっていた。

 

 いつしか小さい時の話になり、小学校時代の話になった時に私は、あの人の辛い過去を知る。

自分は小学生の時、同級生から酷いイジメに遭い、今でも時より思い出すと……あの人の過去を読んだとき、思い出したくない私の過去も顔を出した。あの人も私と同じ忘れられない過去を持ち、今も苦しんでいるという事に胸が締め付けられ、支えたいと思うようになっていた。 

 

 

 それから、あの人への想いはどんどん強くなり

こんな感じの人かな?など、名前しか分からないあの人への私の勝手な想像や想いが増していく……



(今日の分の返事を書くときに会いたいと書いてみようかな……)

 大きな決心を胸に、あの人の想いが挟まれているであろう本を、私は今日も探す。

 



 「あった――」

挟まれていた紙に書かれていたヒントの通りに本を見つけた。


その本は、私が小学生の時に発刊された児童小説だった。

 「懐かしい……」

 この本は懐かしさと消す事の出来ない私の過去を思い出せる。

でも、今は平気。だって、この本にはあの人の想いが挟まっている。

そして、私は物語を読むようにページを捲っていく。

 

 手紙が挟まっているページへとたどり着く。

「――見つけた。良かった……今日もちゃんと挟んでくれてる。

でも、空色じゃない?」

手紙のページにはいつもの空色便箋ではなく、白い便箋で私の名前とあの人の名前が書かれていた。

(もしかしたら、空色便箋は全部使い切ってしまったのかな?)

そう思い、いつもとは少し雰囲気の違う便箋を私は開けた。

 



 「――!?」

 すると便箋からは、何故か私の小学校時代の行事などで撮られた写真が数枚出てきた。

 そして、写真に写っている私と同級生数名の顔は赤いペンでぐちゃぐちゃに消されていた。

 

 「なに……これ……気持ち悪い」

 自分の震えた声に恐怖が増し、震える手で写真から目を逸らすように私は顔を覆った。

 真っ白になっていく頭でなんとか今の状況を理解しようとした時、

 「羊ちゃん」

 とあの人しか知らないはずの私の名前を、少し高めの男性の声が背後からし、振り向くと知らない男性がすぐ目の前にいた。

 

 「――!!」

 驚きと恐怖で声が出せないでいると、男性はニヤリと笑い、そして冷たい目で私を見上げている。

 

 「あっ!間違えた。ごめんごめん……羊ちゃんじゃなくて、東雲美雪が本名だったよね?」

 と私を本名で呼ぶ。

 

 「誰……」

 震える声でようやく出た言葉に男性は少し顔をしかめる。

 

 「酷いなー!成瀬だよ?文通してたのに」

 と口を尖らせ拗ねた様に言う。

 男性は私の想いの人だった。

 

 どういう事なのか本と写真を見つめながら考えるも答えは出ない。

何でこんな事を?貴方は誰?と聞こうとしたとき、写真の中に写っている一人の男の子を見つける。




その瞬間、消す事の出来ない過去が顔を出した。

 



 

 「うわぁー!一ノ瀬くん、1人でまた本読んでる!」

 「しょうがないよ!友達居ないんだから」

 「てか、一ノ瀬弘成と友達になりたいって子なんて居ないよ!!」

 「こんな怖い本ばっか読んでるから無理でしょ」

 「取った!!この本、窓から投げちゃう?」

 「ええーー!ここ4階だし、この下昇降口の屋根だよ?」

 「良いんだって!はい、美雪ちゃん!美雪ちゃんが投げて?」

 「えっ?」

 「一ノ瀬くん?返してほしかったら、頑張って取りに行ってね?ほら、早く美雪ちゃん!」

 「……うん。分かった。一ノ瀬くん、返し欲しかったら――」

 

 

 

 



 

 「ねぇ。美雪ちゃん……次は君の番だね」

拙く未熟な文章、物語を最後まで読んでくださりありがとうございます。

小説と言っていいか分からないほど拙い物ですが、また何処かでお見かけした時がありましたら読んでいただけると嬉しいです。

その時は少しでも皆様の時間のお供になれるようにと精進していきますのでよろしくお願いします

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