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焼き芋

活動報告に書いていた物を手直ししたものと、ジョナサン視点の一本を書き加えました。

三月から短編や今回のものを改稿した連載を始める予定です。

 撫でられた髪のやさしさを思い出す。 


 お父さんとお母さんがまだ生きていた小さいころ、お手伝いをして褒めてくれたときとか、保育所のお遊戯が上手に踊れたときなんかは、いつも大きくて優しい手で頭を撫でて貰った。

 結婚に反対されて駆け落ち同然だった両親は、生活基盤を持たないまま二人で暮らし始めて苦労したんだと思う。幼心にも生活は裕福ではないと分かっていたけど、私は両親入室愛されて幸せだった。


 思い出すのは保育所のイモ掘りイベントで、サツマイモをお土産に持って帰った日。

 お父さんもお母さんも私が掘ったサツマイモをとても喜んでくれて、茹でようか蒸そうか、いや、せっかく有海あみが頑張ったんだから、一番おいしくしなきゃダメだよねと、お父さんはわざわざ一斗缶で炭を焼いて、そこで焼き芋を作って家族三人で食べたっけ。

 炭代や一斗缶の代金を思えば、私たちにすれば結構な贅沢だったんじゃないかな。

 一斗缶で焼いたサツマイモはホクホクして、ちょっと焦げたところも美味しかった。


 幸せだった日の、思い出。



 そしてジョナサンに会いに行った、とある日のこと。

 ドラム缶で石焼き芋を焼きました。


 ――なんでこうなった。



 事の起こりはアパートの小さな庭で落ち葉を掃いていたら、ジョナサンが妙に興奮して「知っているよ! これでイモを焼くんだね! アニメで見たからね!」と、国民的長寿アニメの焼き芋シーンを熱く語ったのが原因。

 ……うん、ジョナサン。夢を壊して悪いけど、これくらいの落ち葉じゃ焼き芋は出来ないよ? 焼き芋は炎の中に入れるんじゃなく、熾火の中に入れてじっくりじっくり焼くんだよ? これだけの葉っぱじゃ全然足りないし。あとサツマイモをそのまま放り込んじゃうと真っ黒になるだけだから。

 箒を持って厳かに真実を告げたら、ジョナサンは驚愕の顔を浮かべてから妙に悲しそうな顔になり、「子供が観るアニメに嘘はいけないね。これは訴訟案件だよ」と、真剣な面持ちで呟いて驚いちゃった。

 ジョナサンはなんでも知っていて、余裕のある大人だと思ったら、意外にも妙なところで子供っぽいところがある。そんなところが好きなんだけど。

 私がちょっと笑ったら、わざとらしく咳をしてから恥ずかしそうに苦笑していた。

 子供っぽいジョナサンも好きだけど、あのね? ここは日本だから。訴訟大国じゃないからね?


 焼き芋ができなくて落ち込むジョナサンに、子供のころの一斗缶焼き芋の思いで話をしたら、萎びた花が生き返ったように皺を深めた顔でにっこりと笑った。

 可愛いなあ、もう。


「アミの素敵な思い出の味だね。ボクも味わいたいな!」


 ……そして河原で焼き芋大会です。

 しかもドラム缶。

 さらにちゃんと石焼き芋用に改造してある。

 ドラム缶を三つに輪切りにしてから、幅の広いフリンジみたいな切り口を作って広げたあと、上下に重ねて嵌め込む様に組み合わせた感じ。組み合わせたせいでもとのドラム缶よりずっと寸足らず。

 鍋のように底がある上の段に石を敷き詰めて下から焚き火をして焼いたあと、サツマイモを濡らしたキッチンペーパーとアルミホイルで包んで石焼ドラム缶の蓋をする。

 あとは焼き上がりを待つだけ!


 なんでもアパートに住む自宅警備員ニートのジンは手先が器用らしく、ドラム缶焼き太郎(命名・テディ)彼のお手製なんだって。

 ジンに言わせると、金属切断用の工具を使えば簡単にドラム缶は切断できるんだそうだ。DIY系男子って知らなかった。

 目つき悪いし、不良っぽい格好だし、頭に猫を乗せているけど。(なんでも小動物になめられる体質らしい。好かれるの下位互換なんだって)

 なぜこのスキルを大工とかペットショップとか就職に活かさないのか謎。働こうよ、ジン。

 でも彼の改造ドラム缶石焼イモはホクホクで美味しかった。製作者の特権か、写真を撮り捲ってから、ジンは焼き芋を8つくらい食べていたけど。あのぺったんこのお腹のどこに入っていくのか謎である。

 そして焼き芋をツマミにビールを飲めるエミリーも謎だったし、アニメプリントじゃないと思ったら、「今日のイメージは赤い彗星だよ」と真っ赤なコートと着こなすテディも謎だった。

 河原で焼き芋なんだけど……。

 エレガントに河原で焼き芋を食べる、真っ赤なロングコートの金髪美男子とか想像して欲しい。ある意味、視覚の暴力じゃないかな?

 石焼きだから焼けるまで時間がかかったけど、車の中で待っていたジョナサンが、「美味しいものを食べるまで待つ幸せ、待つ間アミと話す幸せ、食べて笑い合えるなんて幸せだらけだね」って笑ってくれて、石焼イモパーティは大成功だった。


 ずっと後になってジンが撮った写真を、テディが仕事中のベンや海外のトニーに送って羨ましがらせ、二人はかなり恨まれたらしいけど。

 


 ――今年の冬はジョナサンが居ないけど、でも、きっと私たちは河原にドラム缶とサツマイモを持って行くんだろうな。トニーが正面からねだって、ベンが背後から推奨してくるし。

 でも、きっと楽しい。

 楽しくてもジョナサンを思い出すと少ししょっぱい味になるかもしれないから、甘い安納芋を用意するよ、天国のジョナサン。

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