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第三回~序章~「突飛な訪問」

―――ジリリリリリリリリリリリリリリ!!


というアナログ式の目覚まし時計の音と共に目を覚ます。


正直なるたびにドキッとするので心臓に悪い感じがするが、


色々試した末この目覚まし時計が一番目が覚めるという結果に至った。


また眠い目を擦りながら台所に行き、朝食とお弁当の支度をする。



 朝食を終え、歯を磨き、制服に着替え、あとは髪を整えれば準備完了。といった時だった。


『ピンポーン』


不意に玄関のチャイムがなる。こんな朝早くに誰だ…。


ま、出ないけどね、髪整えてないし。


居留守を使おうとチャイムを無視していたが、2分ほど経っても


その音は止まなかった。そんなに大事な用がうちにあるのか?


まぁいずれにしろさすがに出た方がいいか…。さすがにまだ待たせるのは罪悪感が大きくなる。


整えかけの髪で玄関に向かう。


「すいません、手が離せなくて…。どちら様ですか?」


そう言いながら木製のドアをゆっくりと開けた。



―――するとそこには、長身で大柄の、タキシード姿の男性がピンと背筋を伸ばして立っていた。


「こんな朝早くに大変申し訳ございません。私、アムール王国の王宮統治責任者の

 フィルマン・ビニスティと申します。このたびはエルミール・バルザック様に重要な

 お願いがあって参り―――。」


そこまで言ったところで『バタン!』と音を立てて玄関を閉めた。


え、どうしよう。やばい人。確実にやばい人来ちゃったよこれ…。


まず"アムール王国"なんて国の名前聞いたことがないし、こんな片田舎にあんなタキシード着て


くるなんて完全に場違いだし…。


っていうか、なんで私の名前知ってるんだ…!?


するとフィルマンと名乗る男が焦った口調で玄関の向こうで話しだした。


「驚かれるのもわかります!ですが宗教勧誘とか押し売りとか、そういう類のものでは

 ございませんから!どうかお話だけでも聞いてください!」


宗教勧誘でも押し売りでもない…。という事は…なんだ?


勇気を振り絞り、再び玄関を開ける。


「何なんですか…。」


「どこかで落ち着いて話をしたいところですが、何せ時間がありませんのでここで

 

 失礼します。信じられないような話かと思いますが、こことは別の世界に


 "アムール王国"という国があり、私はそこの王宮の統治をし、政治を国王の代わりに


 行っております。というのも、現在アムール王国には国王が存在せず、空席の状態に


 なっているのです。」


うん、正直意味が全く分からない。が、言葉の内容は理解できた。


もしこれが小説の世界なのだとしたら、私が国王になるというのがオチだろう。


しかし私は主人公的な属性じゃないし、第一興味もない。


「すみません他当たってください。」


私はあきれた表情で玄関を閉めようとするが、こんどはこの男がそれを


阻止してきた。


「ちょ、最後まで話を聞いてください!"次期国王はエルミール様を女王として即位させよ"

 という前国王からの指示が来ているんです!」


「なら、その"異世界"にある"アムール王国"ってのがあるっていう証拠を見せてください。」


私もたまには面と向かってこういうこと言えるんだな。と少し思った。


男は「…わかりました。」と言って、静かに手をこちらに差し出した。



―――すると次の瞬間、彼の肘から下が一瞬にして「犬の足」に変化した。


「うわぁっ!?」


思わず声を上げる私をよそに、彼は冷静に言った。


「これはアムール王国の一部の人間が使える魔法です。国に戻れば、私は

 完全に狼に姿を変えてみせることができます。」


あ、あれ狼だったのか。


…この瞬間、私は今まで彼の言っていたことが"真実"であると確信した。


私はそこまで単純な人間ではない。でもそこに見たのは間違いなく"魔法"というやつだった。


小さい頃に夢見た"それ"が、目の前にある。


「もしかしてこれ夢なのか?」という疑問も、脳内ですぐに消去された。


夢か現実かの区別はだいたい感覚でわかる。




「…話はこれまでで一通り済んだと思います。今夜、またお邪魔します。その時にあなたの

 答えを聞かせてください。では、失礼します。」


彼は静かに玄関を閉め、足音もないまま去って行った。


私はしばらく玄関前で立ち尽くしていた。


気づくと彼の言っていたことをもう一度頭の中で整理するために頭をフル回転させていた。


ふと時計に目をやると、午前8時30分を指している。


「やばい、遅刻だ!」


咄嗟に鞄をとり、玄関を飛び出す。…周囲にもう彼の姿は無い。



―――異世界転移して女王になるか、この世界でこのままつまらない日常を繰り返すか。


究極の選択ってやつだ。しかし私には友達もおろか、家族だっていない。


なら…私の答えはもう決まっているようなものだ。




「クラスの陰キャが異世界の女王になったら。」なんて話も悪くない。


やってやんよ。女王。

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