第一回~序章~「罰」
深夜三時。街に佇む美しく大きな教会の地下で、"儀式"は行われていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああ!やめろ!やめぉおおおおおおお!」
薄暗い大きな部屋に、男の悲鳴が響き渡る。
「その青く澄んだ眼。綺麗な白髪…。間違いない。」
磔にされた白髪の男は何とか腕や足にまかれたロープを引きちぎろうと抵抗する。
目の前には数人の黒装束が取り囲んでいる。
「クソッ!こんなところで死んで堪るかぁ!」
パニック状態の男をよそに、黒装束の中の一人が淡々とした口調で語り掛ける。
「お前は大罪を犯した悪魔"アムール・ぺスカロロ"の子孫。神聖なるジャブイユ様の御前にて、
お前の罪に神の子である我々が審判を下す。」
言い終えた途端、薄暗かった部屋の灯りが点き、その「処刑場」の全貌が明らかになる。
磔にされている男の目の前に現れたのは、黒装束の男女数人と、その奥にある大きな壁画。
灯りが点いたものの、黒装束の数人は男女の区別がつくのがやっとで、どんな顔をしているのか
は分からない。
そして壁画には悲しげな表情の男性の全身像が描かれており、それが黒装束の言う「ジャブイユ」
なのだろうか。
「お前ら…いつから俺がぺスカロロ一族だという事を…!どこで知った!」
黒装束の男は静かに懐から大きなナイフを取り出し、こちらに突き立てた。
「や、やめろ!だいたい俺には何の罪もないだろう!?お前らの目的は何なんだ?」
「…お前が知る必要はない。」
―――そして男はナイフを握った腕を大きく振りかぶった。
え、俺、死ぬのか?今、ここで?俺の三十九年の人生はここで終わるのか?
ふと視界に入る自分の足元。今まで気づかなかったが…赤い血のシミで床が染まっている。
自分の前に殺された人間達のものだろうと瞬時に悟る。
待て、嫌だ。死にたくない!死にたくない!!!
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
悲鳴は途切れた。
「すべては神聖なるジャブイユの為に…。」
微かにそんな声が聞こえた。
「ロ・・・ラ・・・ごめ・・・」