4話
「あのね…多分だけど、拓人さんとキスした」
学校について一息ついた時
愛桜は私たちにそう告げた
「えっ?」
「多分って何?」
友希ちゃんと羽音ちゃんの目が点になって私を見つめる
「間違って焼酎飲んじゃって…酔ったからあんまり覚えてないんだけど…」
「嘘でしょ?焼酎??っ向こうの反応は?」
友希ちゃんが食い気味に聞いてくる
「朝普通だったから、記憶違いかもしれないけど」
「記憶違いって…、
愛桜ちゃん!こうなったら確かめるのよ!」
羽音ちゃんが机に手をつき勢いよく立ち上がった
「羽音落ち着いて、確かめるって言っても大人相手に無理じゃない?流されるのがオチよ」
友希ちゃんの言葉に、そっかっと納得して羽音ちゃんが座った
「でも、ベッドの横に写真があったの」
そう言いながら愛桜は鞄から何かを取り出した
「待って、愛桜ちゃん持ってきたの?」
「大胆なのか臆病なのかわかんないわね」
「私も無意識だったの!…綺麗な人でしょ
こんな笑顔見たことないよ、私…」
悲しそうに目を伏せる愛桜ちゃんの背中を優しく撫でる
「お母さんが言ってたんだ、ほら私の家商店街の役員してるでしょ?拓人さんにお見合い話絶えないって…」
羽音ちゃんのお家は商店街で老舗の和菓子屋を経営しているのでこの街の情報には詳しい
「まあ、あのルックスで1人のほうが問題よ…この街では有名だからね、華園三兄弟」
「そうだよね…」
写真の中の拓人さんは、とても幸せそうな笑顔をしていた
私の知らない時間が歯がゆくて苦しくて…
この胸のモヤモヤが好きって言葉で表しても納得いかないくらいだった
ガラガラ
「おーい席つけ、今日から産休に入った鳥山先生の代わりに新しい先生が担任をもつことになりました。
先生どうぞ…」
副担任の先生の声の後に扉をくぐり教室に入ってきた人に目が行く
『うわ…可愛い』
『綺麗』
クラスがざわつく声がフリーズしていく気がした
「えっ…」
「愛桜、あの人」
「写真の人だよね?」
時間が止まるような感覚に言葉も失っていく
それは運命のいたずらのように私に襲いかかる
「今日から担任をさせてもらいます。
如月 紀乃です。よろしくお願いします」
「如月先生はここの卒業生で今年28歳になります
みんな仲良くしような」
「母校で教師ができるなんて夢みたいです。解らない事も多いですが、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」
凄く笑顔が可愛くて、拓人さんが好きそうな柔らかい印象は写真と何一つ変わらない
「友希ちゃん私今まで考えたことなかった、拓人さんに特別な人が居るとか」
「そうだよね…結構愛桜にお世話焼いてからその気なんだって思ってた」
「でも…まだ解らないじゃん、本人から聞かなきゃ」
羽音ちゃんの言葉を否定するように
「写真飾ってるんだよ?前に聞いた拓人さんの好みの人、そのままだよ」
「…なんか嫌だね…拓人さんはここら辺じゃ有名なくらいだし、モテるし、カッコイイし、でも相手は絶対愛桜だって思ってるから」
「うん!絶対愛桜がいい」
友希ちゃんと羽音ちゃんの言葉に少し気持ちが楽になった
「ありがとう。なんか元気でてきた」
片思いと言うよりはだんだん気づかされていく
私は拓人さんしか無理で、拓人さんと一緒に居たい…
他の誰かとなんて、考えたことなかった…考えたくなかった
不意に襲われる拓人さんを無くすかもと過ぎる不安に頭を振った




