17話
「……フーッ……」
風にあたり頭を冷やす。
タバコを深く吸い込み夜空に吐き出した
「どいつもこいつも…」
『愛桜を愛して大切にしてくれる人は沢山居る』
『結婚するから』
胸の中で宿るイライラにタバコを強く灰皿に押さえつける
「…………」
この胸のイライラも、理由は解ってる
愛桜を求める気持ちとどこかで後ろめたい気持ち
ずっと妹を見るような気持ちだった俺には
この感情をできれば押し殺したい
「拓人?」
グルグル回る思考回路が止まる
「紀乃…どうした?」
「今ちょっといい?」
「……何?」
紀乃とはあれから会っていなかった。
紀乃をそうさせたのは俺だと思うから、咎めることも責めることもできなかった
「この間は…ごめんなさい」
「謝る相手が違うだろ」
「紺野さんにはちゃんと謝ったよ?今もこうやって先生で居させてくれてる。
けどちゃんと拓人と話したかった」
「……話って?」
タバコに火をつけ壁にもたれ掛かる拓人はそう言いながら視線を向ける
「大学の時も言ったし、こないだも言ったけど、ずっと拓人が大好きだった。冷静で大人で…意外と優しい拓人が大好きだったの。
けどいつも拓人を独占してたのは紺野さんだった
サークルで旅行に行った時も紺野さんが高熱だしたって聞いた瞬間、こっち放って帰ったよね?」
「愛桜の家は母子家庭だから心配するだろ?おばさん遅くまで掛け持ちしてた時期だったし」
「まだあるよ。紺野さんが中学卒業した時、次の日なんて、1日機嫌悪くてみんな心配してた。
昨日近所の子の卒業だからお祝いするって嬉しそうに言ってたのに、理由聞いたら紺野さんが告白されて返事してこなかったことに怒ってた
意味のわからねぇ男の返事を考える意味が解んねぇって」
「いや、あれは。
近所でも有名な悪ガキだったから」
「それに、こないだも私を庇うふりして紺野さんが男の子達と居たことが気にくわなかったんだよね?」
「……」
「私の入る隙なんて本当になかった。それが悔しくて…
好きになってくれない拓人にも腹がたった
だから先生になるって伝えに家に行った時私が大切にしてた拓人との写真を部屋に置いてきたの…」
「俺の部屋に?あの写真か?」
「あの時ちょうど紺野さんのお母さんとおばさんが話してるの聞いて…明日紺野さんが来るんだって思ったら。
最低だよね。今になって本当に何考えてたんだろうって…」
「いや、俺こそごめん。俺もちゃんとしなかったから…」
「拓人が謝ることじゃないよ。本当はこないだ泊まってくれた時、紺野さんのこと言うつもりだったの。けど一緒に居れる時間が惜しくて、このまま一緒に居たいって。
拓人が紺野さんのとこに行けば、もう終わりなんだって思ったから」
そううつむき泣く紀乃には、大学の頃から無理をさせてた所がある。
「ごめんなさい」
ポンっと優しく頭を撫でられ顔をあげた
「もう解ったから」
「拓人ありがとう…」
抱きつく紀乃を離そうとした時だった
「愛桜!!!」
急に聞こえた声の方へ顔を向けた
走って消える愛桜の背中と追いかけるダチの姿が見えた
「拓人、追いかけて!
私が大君に頼んだの…紺野さんを連れて来てって」
「……ッ」
そう言えば拓人は何かを覚悟したように二人が消えた方へ足を進めた。
走って消える拓人の姿に涙が止まらなかった。
大学に入ってから今日まで、ずっとずっと大好きだった人
大好きだから傍に居たくて拓人の知らない所で卑怯な事もしたし、こうやって近い所に入れるように就職も決めた
だけどずっと拓人の事を傷つけてたんだと思う
私が好きでいることが、拓人にとってはしんどくて、どうしていいのか分からない、そんな風に思ってたと思う
「本当に、いい歳して何してるのよ…」
好きな人の好きな人
どんなに頑張っても、私にはなれなかった場所
やっと…歩き出せる気がした




